2011年新シリーズ「突破力――社会と女性たち」第2回

第2回 訪問看護の第一線で人生の終末に“やすらぎと安心”を

医療法人社団三喜会 ケアタウン「あじさいの丘」 居宅サービス部統括部長 和田洋子さん

人材確保と教育に全力

医療法人社団三喜会は、2008年3月に医療・看護・介護サービスを複合した鶴巻高齢者複合施設ケアタウン「あじさいの丘」を新たな拠点として立ち上げた。現在はこの施設を中核に、訪問看護ステーションが6カ所、居宅介護支援センターが5カ所、グループホーム5カ所、認知症デイサービスセンター2カ所、小規模多機能デイサービスセンター2カ所、ヘルパーステーション1カ所を運営する。

「あじさいの丘」に併設された デイケアセンター

ここを拠点に、要介護度平均3.8~4レベルの患者など250名の訪問看護の利用者を看護師、保健師、理学療法士、作業療法士らのスタッフ20名で対応している。

「私たちの仕事は、看護職と介護職の協働関係で成り立っています」
訪問看護ステーションは現在全国で5,600カ所あまり。どこも人材確保が大きな課題となっている。

「介護保険による訪問看護は1時間8,300円(+地域加算)の報酬です。しかし、この報酬にふさわしいサービスができているのか、と自分自身に問いかけることが必要です」と和田さん。

三喜会では増え続ける訪問看護のニーズに応えるため、臨床経験のある看護師を採用してきた。だが、訪問看護の質を確保するには、さらに1からの教育が大切 だという。今年は新卒の看護師を採用し、専門の訪問看護師として育てる計画だ。三喜会の居宅サービス部は、和田さんの熱意もあり、いまも在宅ケアに必要な 知識・技術の勉強会をスタッフ間で定期的に開いている。

地域に深く根ざす

三喜会の訪問看護ステーションでは、春の桜祭り、夏の盆踊り、秋の地蔵祭りなど、地域と一体となるイベントを頻繁に開催してきた。
「地域に根ざす看護を実現しようと思えば、常日頃から地域の方々との信頼関係が大切ですから」と和田さん。特に、あじさい祭りには、自治会、老人会などの協力で毎回300名を超える参加者が集う。

地域の方々との交流。みんなで元気に盛り上がる

「この地域には先祖を大切にする風習が残っています。家族の絆も都会ほど希薄ではありません」地域の祭りには看護師やケアマネジャーたちが率先して参加し、地域の方々の健康相談にも答える。

介護保険制度はできたが複雑で分かりにくい。介護予防が加わったことで利用はますます煩雑となった。「理解しにくい制度を本物にするには、私たち自身がき ちんと説明できなければいけません」と和田さん。患者の家族の中には、訪問看護の制度を知って泣き出す人もいるという。訪問看護ステーションには、いまな お敷居の高い医療機関の役割を地域に根づかせる役割がある。


和田洋子さん

和田洋子(わだ・ひろこ)さん
がん研究会高等看護学院卒業、がんけん病院、新松戸中央病院、田中病院、取手医師会病院等地域の病院で看護の責任者などを務める。1996年8月1日から訪問看護の夢を実現するため医療法人社団三喜会で訪問看護ステーションを立ち上げ、現在は医療法人三喜会居宅サービス部統括部長として6つの訪問看護ステーションなどの在宅ケアサービスを統括する。

医療法人社団三喜会
地域に6カ所の訪問看護ステーションを展開し、医療依存度の高い要介護者の在宅ケアを支える。2008年に秦野市鶴巻に開設した医療・看護・介護サービスからなる「あじさいの丘」では、24時間体制の訪問看護ステーションを中心に、施設入居者と地域の在宅療養者の区別のない安心の在宅支援体制を敷いている。

「あじさいの丘」のホームページはコチラ↓
http://www.sankikai.or.jp/ajisai/

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