CSRマガジン特別編

3.11から今日まで、そして2012年へ心を繋ぐ「東北グランマのクリスマスオーナメント」

未来に向かって

「なぜ、クリスマスオーナメントだったんでしょうね?」と発起人の一人、渡邊社長に改めて尋ねたことがある。「一つにはクリスマスという誰もが幸せを感じる季節のものを、東北グランマが創り届けて欲しいと思ったから。もう一つは、クリスマスという期限を設けることがとても重要だと思ったから。被災地での仕事づくりは、来年再来年では意味がない、今年やらなければならないと思った。走りながら作ったプロジェクトだから未熟な所もあったかもしれない、けれども、何が何でも今年のうちに具体的な仕事を創りたかった。そして実際にクリスマスに向かって本当にたくさんの人の大きな力が結集したと思う」と。

震災が起きた短い期間にこそ「仕事」が必要だった。それは大指グランマが改めてプロジェクトを振り返った時の言葉でも実感した。「何もかも失って、いっそ…と思った時もあった。でも、ここに皆で集まるうちに元気をもらい、本当に震災からの時間が短く感じることが出来た。」と。NHKの取材を受けた武山洋子さんは、「オーナメントのおかげでもう一度、海に生かさせてもらおうと思えるようになった。」と語った。地震と津波で失ったものを乗り越えるためには、長い長い時間がかかる、その前に、最初の一歩を立ち上がること、心を未来に向かわせる事がどれだけ大変なことか。今回のクリスマスオーナメントが、少しでもそのキッカケになったのなら。

東北グランマのクリスマスオーナメントは1セット1,000円、そのうち200~400円が工賃として直接に支払われる。金額が多い少ないという意見ももちろんあると思う。けれど、(株)久慈ソーイングの中田利雄社長はプロジェクトを振り返ってこう答えた。「今、自分たちは必死に工場を立て直そうとしているけれど、まだまだ途中段階で、元通りに外注の皆さんに仕事をお願いするには至らない。今回のオーナメントでは12名のお母さんたちに内職をお願いすることが出来た。誰かに寄付してもらったわけじゃない、自分で働いて稼いだ賃金をもらう。それが大事なことだよ。」と。

「東北グランマのクリスマスオーナメント」を最初に発表したリリースには以下のような文言がある。「不安と孤独を抱える人々が日常を取り戻すために「日々の仕事」を創りだす、手を使い、会話を楽しみ、一生懸命ものを作る、それが生活の糧となり、明日に生きる喜びの源となる。そうした思いからグランマオーナメントプロジェクトが生まれました。」と。

人が自立し、そして誇りを持って生きるために「仕事」が必要。そのことを、多くの人が無意識に感じているからこそ、今回のプロジェクトに多くの人が賛同し、不思議なまでの広がりと力の結集が生まれたのではないか。そして、今回のプロジェクトを種として、2012年にもさまざまなところで新たな出会いと試み、希望が生まれ、必ず東日本が震災前よりも元気になる日が来ると信じて、当サイトもまた活動を続けていきたいと思う。 (2011年12月)

◆「東北グランマのクリスマスオーナメント」ホームページ
http://grandmaproject.jp/

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