東日本大震災から1年

「あれから1年」を語る欲望をもっとコンパクトに。自然と共生する。[前半]

坂本龍一(音楽家)+後藤正文(音楽家)+岩井俊二(映画監督)

 食もエネルギーも自給率を高める

後藤 持続可能な社会を求めるのだったら、それを求める人たちの行動も持続可能なものにしないといけないはずです。日本は食もエネルギーも自給率が低く、海外に頼っています。戦争や災害で供給がストップして、国民が食べられなくなったり、生活や産業も止まるのではと心配です。エネルギーのほとんどは外国から買っていますが、年間に11兆円とか12兆円という金額だったと記憶しています。一生懸命に働いたお金が海外に出ていってしまうわけです。そのお金があったら、日本国内でエネルギーや食を確保するのに使ったらと思うのですが。やりかた次第で、食もエネルギーも自給率を上げることができると思います。ツアーで全国を回ると田んぼがどんどん荒れ果てています。ここでいろいろな作物もつくったらと思います。

坂本 そういうことをやるには法整備が必要じゃないですか。それには政治を変えないといけないわけですが、僕らが思っている声を託せるような政治家がどこにいるのだろうという非常にさみしい思いをしています。中沢新一さんなんかが緑の党を立ち上げようとしています。僕らが考えていることを託せる人を政治の場に送り込む必要があるのだと思います。どろどろした政治とかは大嫌いだけど、嫌いだからって軽蔑しているわけにはいきません。

もう少しコンパクトな生き方を

岩井 この問題は飛び込めば飛び込むほど難しい問題ですね。去年、イレーナ・サリーナさんという監督がつくった『フロー』(国内未公開)という映画を見たのですが、この映画は水がテーマですが、どこにでもある水をつかって搾取する側と搾取される側の姿を赤裸々に描いたものです。水なんてだれのものでもないはずじゃないですか。ところがそこに利権が生まれるわけです。

世の中がグローバルになって、人間の欲望の合わせ鏡のようになるわけです。昔は農家の収穫を庄屋が搾取するというようなことはありましたが、それがグローバルなレベルで起きています。そのシンボル的なものが原発だと思います。あんな危険なものをなぜ利用しようとしたのか、見当がつきません。なにか麻痺した人たちが良かれと思って推進してしまったのだと思います。人類も70億人を超えました。いろいろ深刻な問題が発生する可能性があります。僕らの生き方そのものをもう少しコンパクトにする必要があると思います。個人個人の工夫によって欲望を小さくしていくのです。

◆欲望をもっとコンパクトに。自然と共生する。[後半]

このトークは、「311東日本大震災 市民のつどい Peace On Earth」(主催:311東日本大震災 市民のつどい)会場で3人の方が語ったものを当編集部でまとめました。原発問題のほか、森林育成なども語られましたが、時間の関係で「震災と原発」を中心に構成しました。文責は当編集部にあります。

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◆福島自主避難ネットワーク「てとて」メンバーが語ること[前半]

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