識者に聞く

電気を選べる時代がやってくる<前半>

個人向けグリーン電力証書の普及を進める エナジーグリーンの竹村英明副社長に聞く

環境価値って、何だろう?

 

前田 グリーン電力証書は、私たち一般市民が日本で選べる数少ないエネルギーシフトの1つです。たしかに自宅の屋根に太陽光発電のソーラパネルを取り付けるとか、小型の風車をつけるとか、マンション等でPPS(特定規模電気事業者)から買う方法もありますが、それ以外で個人がグリーン電力を選択できるのは現時点ではグリーン電力証書がもっとも身近に思えるのですが、そのあたりについてお話しいただけますか。

 

竹村 私たち日本人は、これまで電気は電力会社が送ってくるものだと思ってきました。電力会社以外から電気を買う、あるいは自分たちで電気をつくるとのはとんでもないことだと思い込んできました。

実は前田さんに使っていただいているグリーン電力証書は、“環境価値”という言葉に置き換えることができます。電気は送電線で送られてくるわけですが、いろいろな方法でつくられています。太陽光や風力は日本の場合その比率はまだまだ少ないわけです。石油、石炭、天然ガス、そしていまはストップしていますが、原子力もありました。

自然エネルギーにお金を払うということ

竹村 電気の価値は自然エネルギーも火力も原子力も同じでしょうか。実は前田さんも最初にお会いしたときに自然エネルギーを“ただ(無料)”のエネルギーと言われました。太陽光はたしかにただで降り注いでいますが、太陽光を使うということがただでよいのか、風をただで使ってよいのか。石油や石炭よりも、原子力よりも価値のあるものなら、そこにお金を払わないといけないのではないかという考えから、私たちはスタートしています。

水力は雨が降って、それが貯まってそれで電気を起こしているわけですが、水力を使うには山に水が蓄えられていないといけません。山に森がないといけないわけです。太陽があり、風があり、雨が降り、川があり、森があり――それらが一体となって維持される仕組みを私たちは守っていかないと、やがて自然エネルギーの電気も使えなくなるかもしれません。私たちにはそうした環境を残していく使命があります。

前田 まさにそこだと思います。環境価値というと漠然とした印象をもってしまうのですが、環境保全などに活かすことで自然エネルギーを持続できるようにしたいということだと思います。再生可能エネルギーも持続可能なものにするにはコストがかかります。

竹村 いまの自然エネルギーの仕組みや固定価格買い取り制度(FIT)が、それをきちんと算定しているかというと、まだ完全ではありません。ただ、この社会を持続可能なものとしていくには、私たちが何がしかのコストをかける必要があるということです。それを端的に表現したのが「環境価値にお金を払おうよ」ということです。

図提供:エナジーグリーン株式会社

前田 私たちが支払ったお金は、自然エネルギーの発電所に行っているわけですか。無駄な電気をつくりだすのに使われることはありませんよね。

竹村 それはありませんが、まだ皆さんが必要とする電気の量をつくれないもどかしさはあります。自然エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱発電、バイオマス、潮力、波力ですが、大切なことは地球の表面にあるエネルギー源とも言えます。大切なことは地球の内部から奪ってこないということです。いま、シェールガス(泥岩に含まれる天然ガス)とかメタンガスハイブレード(天然ガスの主成分であるメタンが、高圧・低温の海底下や凍土下でシャーベット状に固まったもの)が話題になっています。人間が無理やり地中深くから引っ張り出すことにも私は賛成できません。

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