「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ

【第5回】科学技術を学ぼう③

~公式テキストから~「IT技術の仕組みと活用」「自然災害から国土をまもる環境保全対策」

「森は緑のダム」。自然災害から国土を守るために。

次に、この自然災害から国土を守る「森林がもつ機能」について考えてみましょう。良好な森林の土壌は、浸透能力が高く表面流が発生しにくい。豊富な落葉や下草によって降雨による地表侵食を防ぎ、樹木の根が土壌を保持して表層の崩壊を防止することができます。

昔から「森は緑のダム」と言われ、地表に降った雨水を貯留し多くの時間をかけて少しずつ地表に出します。また、地下水として下流の河川に流出するまでに水質を浄化させる働きもあります。

森林には、これらの国土防災機能以外にもCO2吸収などの地球環境機能、生物多様性機能、保険・リクレ-ション機能等があり、お金に換算すると日本全体で1年間に75兆円もの価値に匹敵するとの試算もあります。(平成12年、林野庁)

私たち人間にとって水は生命の糧であると共に生活の基盤です。その貴重な水を私たち与えくれる源は森林であり、森林を守ることは国土を守ることにもつながるのです。

2006年7月、豪雨災害被災地での地域住民による植樹(長野県岡谷市)

復興に向けて知恵を出し合おう~宮城県松島市を「自然エネルギ-再生都市」に。

科学を現実のなかにどのように活かしていくか、その一例として、エコリ-ダ-テキストの著者である日本技術士会登録「持続可能な社会推進センタ-」の今井代表が、東日本大震災で大きな津波被害を受けた宮城県東松島市の再生に向けて、いち早く提出した企画提案書の一部をご紹介します。これは、採用された提案内容では有りませんが、この様な発想もあるという事例です。

今回の企画提案書は、宮城県東松島市において、巨大津波からの減災と循環型社会の実現とをあわせ持った「自然エネルギ-再生都市」をめざすものです。今井代表が県郷である東松島市を何とか今以上に活気にあふれた街、住民および関係者が明るく本気を出して取り組んで頂きたい、そして再び子供たちが元気に飛び回って遊んで欲しいという願いで作成されました。

今回の巨大津波から被害を免れた地域が宮城県内で2箇所ありました。松島町松島湾と石巻市万石浦地区です。この2地区は共に湾入り口や浦の入り口に島や岬等があり、津波はこれら障害物により進行方向を変えたために軽微な津波被害となりました。

このことから、今後発生する巨大津波から被害を守るために人工島を建設する。人工島の埋立てには、原子力発電所の関係から、今後、火力発電所から発生する大量の石灰灰をリサイクル資源化(焼却灰の改良活用)として使用する。また、「がれき焼却灰」や「津波堆積物」および「コンクリ-トガラ」をリサイクル資源化として使用することです。

そして、この人工島に太陽光発電や風力発電等の自然エネルギ-基地を設置して、エネルギ-の地産地消モデル地区とする。これらによって、地域経済が再生そして発展するものと考え「自然エネルギ-再生都市」を提案されました。また、副次的効果には、人工島により魚の養殖も可能になり経済的な発展に貢献します。

「宮城県東松島市の再生に向けて」計画イメ-ジ図 ①平面見取り図

今井代表は、東日本大震災の際に、岬や島など自然の障害物によって松島町松島湾と石巻市万石浦地区が巨大津波による被害を免れたことから、がれき焼却灰を含むリサイクル資源により人工島を建設して将来の津波被害に備えるとともに、人工島に自然エネルギ-基地を設置することを提案しています。

「宮城県東松島市の再生に向けて」計画イメ-ジ図 ②側面見取り図

今までは、「科学技術」を活用する=企業の利益をあげるためという感がありました。しかし、東日本大震災以降、これからの日本では、儲かる・儲からないではなく、社会に貢献する「科学技術」が必要であると思います。(2012年10月)

●「科学技術は環境(エコ)の基本」シリーズ

【はじめに】時代が必要とする科学技術エコリーダーとは?
【第1回】東日本大震災と科学技術 ~科学の目で今を選択することが、未来を変える~
【第2回】ニュースの中の環境問題と科学技術~何かしなければの想いを実践につなげる~
【第3回】科学技術を学ぼう①「地球環境の現状と科学技術」「環境問題とその側面」「地球環境問題への対策技術」
【第4回】科学技術を学ぼう②「生活と科学技術」「エネルギー開発と対策技術」「地球規模の環境問題と対策技術」
【第5回】科学技術を学ぼう③「IT技術の仕組みと活用」「自然災害から国土をまもる環境保全対策」
【第6回】科学技術を学ぼう④「環境リスクとリスクマネジメント」「技術者のモラル」「環境と経済」
【第7回】科学技術を学ぼう⑤「国際化」「人材育成人材活用を急ごう」「社会環境への気配り」
【第8回】行動力とリ-ダ-シップが社会を変える

●科学技術エコリーダー養成講座について

●エコリーダー公式テキスト「<科学技術>エコリーダーになろう」

既に16万人を超えるeco検定合格者(エコピープル)を対象に、スキルアップ事業「科学技術エコリーダー養成講座」を定期的に開催しています。職場や地域で環境分野のリーダー育成を目的とするもので、2日間の講習修了者には東京商工会議所および(社)日本技術士会「持続可能な社会推進センター」からの認定証が発行されます。

●科学技術エコリーダー養成講座:大阪会場
日時:2013年3月2日(土)、3日(日)
時間:AM10:00~PM4:00(2日間共通)
https://www.eco-people.jp/skillup/kouzaseminar/7875

●上記以外の今後のスケジュールについては下記にお問い合わせください。
[問い合わせ先] エコピープル支援協議会 事務局(エコリーダー担当)
Tel. 03-3556-6405 Fax. 03-5226-3322
E-mail: ecoleader-uketsuke@ep-support.jp

<関連記事>

●復興への”土台創り”は地元の技術と雇用で解決する
震災から1年半、今こそ企業とNGO/NPOは連携を
●電気を選べる時代がやってくる(前半)                        
●自転車をもっと暮らしの中に

TOPへ戻る