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個人と地域、企業をつなぐ環境コーディネーター
eco検定を通じて広がる環境活動
東京商工会議所 人材・能力開発部  部長 川瀬 健介


Q:環境社会検定試験(eco検定)は2006年10月のスタートから昨年度まで既に合格者が5万5千人とのことですが、当初から企業に限らず環境マインドを持った個人の輪を広げたいという思いがあったと伺っています。
川瀬 実は10年以上前にスタートした福祉住環境コーディネーター検定試験がeco検定を始めるベースになっています。東京商工会議所の検定試験は“商工業の振興に資する人材の育成”が大きな目的ですが、同時に、初代会頭 渋沢栄一氏から受け継がれた思いとして“社会一般の福祉の増進に資する”ことも活動の大きな柱です。 福祉住環境コーディネーター検定試験は企業の人材育成に役立つことはもちろんですが、同時に多くの個人の合格者の方々が福祉という知識をベースにNGOやNPO、任意団体を立ち上げるなど活動を広げてこられました。一般的に福祉について個人の方が行政と直接にやりとりしようとしても、専門用語も多く、分からないことも多々あります。福祉住環境コーディネーター検定試験合格者が地域の生活者としてのニーズを行政に伝え、行政の説明を分かり易く地域に生活する方々に伝える、そんな風に行政と地域をつなげる役割を自然と果たされるようになりました。 一つのコミュニテイの中で個人と行政、さらに企業をつなげる様々な専門家、コーディネーターを育てていきたい、それが地域の活性化にもつながるのではないか。これからの地域に必要な人材とは何かを考えたときに、福祉の次には、環境、健康づくり、安心・安全など、さまざまなキーワードが浮かぶなかで、環境に関する基本の知識を検定するeco検定を立ち上げました。

eco検定 試験問題例
次の文章の[a]の部分にあてはまる最も適切な語句を、下記の中から1つ選び、その番号を解答用紙の所定欄にマークしなさい。 下の図は、2007年の世界のエネルギー起源二酸化炭素排出量である。京都議定書に不参加のアメリカが世界全体の22%を占める。また、削減義務のない開発途上国の中国や[a]で経済発展などに伴う排出量が増加しており、2013年以降の新たな国際的な枠組みづくりの課題といえる。

[解答1]

Q:CSR(企業の社会的責任)が当たり前のように求められる時代となり、eco検定に対する企業のニーズも、急速に高まっているようですね。
川瀬 大企業には一般的に環境問題の所管部署があります。しかし、所管部の方だけでなく、経理、総務、営業など全ての部門の社員が環境問題に対する知識を持つことで、企業全体の環境意識、さらにはCSRへの意識が実践的に高まると考える企業が非常に増えています。 また、時代が求める環境テーマの新商品・サービス開発にも、基本となる環境知識が不可欠です。つまり企業にとって社員一人ひとりの環境に対する知識や意識を高めることは、いわば“守りと攻め”の両面で非常に重要です。  結果として、特にこの1-2年、eco検定に対する企業の評価や期待が非常に高まっていると感じています。できるだけ全社員にeco検定を取得させたいという企業や、流通業など土日にも仕事がある企業から平日に検定試験を実施してほしいというニーズもあり、昨年からは平日の検定試験も開始しています。

Q:企業の一員としてeco検定を取得された方も、一人の個人として地域での活動を広げることが期待できるということでしょうか?
川瀬 eco検定に合格することは、実際に勉強して知識を取得した結果であり、きっかけが会社の方針だったとしても、環境に関する知識を取得されることで、 “個人の思い”――地球環境のために何かをしなければという思い――が確実に広がっています。だからこそ、合格された社員の方が、さらにお住まいの地域で活動を広げていくことも実際に良くありますね。


eco検定合格者= エコピープルをサポートする eco-people.jp

Q:eco検定では合格した後のフォロー事業も行っているのが特徴ですね?
川瀬 私どもは環境マインドが高いeco検定合格者に敬意をこめて“エコピープル”と呼んでいます。eco検定の目的として、なるべく大勢の方に基本的な環境の知識を取得いただいて、実際に何らかの活動をしていただきたいという思いがありました。そのため、これまでの検定とは違って、スタートするときから、合格して終わりではなく、合格者の活動をサポートする事業にも取り組むことを予定に入れていました。
 合格者支援サイトのeco-people.jpでは、毎年何人かの“エコピープル(合格者)”をエコレポーターとして大小さまざまな環境に関するテーマをレポートしていただくなど、一般の方にも見ていただきながら、さまざまな情報提供や情報交換を行っています。

Q:2名以上の“エコピープル(合格者)”が主体となり環境活動を行うグループをエコユニットとして認定する仕組みもユニークです。
川瀬 エコユニットは企業単位だけでなく、事業所、団体、サークルなど、とにかく2名以上の合格者の方がいらっしゃれば登録することができます。これまでの事例ですと、社員の方が中心となり部署単位でエコユニットを登録し企業全体に活動を広めていかれた例や、高校や大学単位、歯医者さんでエコユニットを登録された例もありました。仙台エコピープル協会は、顕著な活動を行っているエコユニットを顕彰するエコユニットアワード2008で表彰させていただいた3ユニットの一つですが、合格者の方々が集まって始めた活動が地域の人材育成など大きく広がったという、個人の思いが地域のつながり、ネットワークを実現した例だと思います。

Q:エコユニットマークは中小企業にも利用しやすいとのことですが?
川瀬 近年は、取引先を選ぶ際に環境意識が高い企業かどうかも基準の一つです。しかしながら中小企業が例えばISO 14000シリーズを取得するといっても、システム整備の時間やコストもかかり実際には簡単なことではありません。エコユニットに登録したグループが利用できるエコユニットマークを名刺や会社案内に利用いただくことで“当社は人材面から環境活動に動き出しましたよ”と外部にアピールいただくことができます。第1回の検定から非常に多くの中小企業の皆様に参加いただいていますね。

Q:今後のeco検定、さらには検定事業全体でのテーマをお聞かせください。
川瀬 eco検定は最初に企画したときのイメージどおりに発展しつつあります。本当に有難いことに、全国のエコピープルの方々が営業マンであり企画マンにもなってくださっています。近年、開催しているエコリーダー養成講座も、合格者の方がさらにスキルアップしたい――環境ビジネスについてもっと知りたい、緑化について専門的に勉強したい――というニーズから生まれたものです。もっとこんな事も出来ないだろうかという問いかけや思いを今後もどんどん頂き、できる限り実現していきたいですね。

 今後の検定事業としては、具体的なものではありませんが、例えば高齢社会における新しい働き方や生き方をデザインできないかと考えています。60歳で定年されても新しいチャレンジができる、元気に外に出ていかれることでさらに元気になる、私たち皆が明るい高齢社会をイメージできる仕組みを検定事業を通じて創り出していけたらと思っています。

(2009年8月取材)

第7回 eco検定
【受験会場】 北海道から沖縄まで207地域
【受験料】 5,250円
【試験日】 2009年12月20日(日)
【申込登録期間】 10月6日(火)〜11月6日(金)
【お問い合わせ】 東京商工会議所 検定センター 03-3989-0777
(土日・祝日・年末年始を除く 10:00〜18:00)

http://www.kentei.org/