Q:UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が創立60周年、日本での公式支援窓口である国連UNHCR協会が設立10年を迎えた2010年、「10,000シェルタープロジェクト」をスタートされたとのことですが。
高嶋 日本で新たに1万人の方に難民たちの命を守るシェルター(保護施設・保護活動)になっていただくためのプロジェクトです。 最終的には支援者となった個人や法人の方に私たちの「毎月倶楽部」にご参加いただきご寄付いただくわけですが、今回のプロジェクトで重要視しているのは、ご協力いただく企業の皆さんも含めて、まず話し合って難民問題を理解していただく、そして納得した上でご参加いただき、継続的な支援者になっていただくことです。
お一人ずつの額は小さくても、日本で1万人が難民問題を理解して支援者となっていただければ、難民たちが今の状況から一歩踏み出すための、とても大きな支援、ステップを作り出すことができるプロジェクトだと思っています。
Q:今回のプロジェクトでは、複合商業施設を保有する不動産関連企業等と協力しながら“個人の支援者との出会いの場を創る”という点も新しい試みだと感じます。
長野 もともとNGOが支援者を広げるための方法として欧米から始まった広報キャンペーンがあります。街中で声をかけて、活動をきちんと説明する方法で、イタリアやスペインなど欧州では一般的です。
けれども、同じことを日本で行うと“もしかしたら詐欺では?”と警戒される方も多い。どうしたらよいかと考えるなかで、商業施設を持つ企業に活動を理解いただいたうえで、スペースをお借りしてお客様にアプローチする方法に取り組みました。お客様も、きちんとした商業スペースを借りている(=許可をとっている)ことで、安心感を持たれます。
今回の「10,000シェルタープロジェクト」では、最初は三井不動産㈱に大きなご協力をいただき、試験的に始めさせていただきました。
Q:そうした企業との協働に積極的に取り組まれるというのは、企業側と国連UNHCR協会、どちらの意識変化によるものでしょうか?
高嶋 両方だと思います。企業が社会的責任を問われる時代となり、しかし経済不況で多額の寄付が難しくなりました。けれども、企業側も(何もせずに終わりではなく)お金ではなく、代わりに何かを出来ないかと模索されています。
また、私たちもこれまでのように単なる寄付をお願いするだけでなく、活動そのものを理解いただき、頂いた資金で何が出来るのかも含めて企業と協力しながら考える、専門的な分野で力を貸していただく、そういうステージに来たのかなと思います。
一方で、企業と協力するということは、やはり長期的に互いのメリットがなければ続かないという部分が基本にはあると認識しています。
長野 経済不況で、商業施設のイベントスペースが平日に空いている、どのように有効活用しようかと考える時期だったのは、協働を持ちかけるタイミングとしては良かったかもしれません。そういう意味では私どもが商業施設の中で集客力があれば理想かもしれませんが、まだ模索中です。
商業施設を訪れるお客様の中に “何かを社会のためにしてみたい。けれども、何をしたら良いかわからない”という方々がたくさんいらっしゃる、そういったお客様への“きっかけ”を提供したいという言い方をされています。商業施設を「きっかけの場」「学びの場」と考えていただけるのは、私たちの活動と合致しました。