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今さら聞けない
CSRの素朴な疑問


Q1. CSRって何ですか?

CSRとは?


CSR (Corporate Social Responsibility)は「企業の社会的責任」と訳される。企業が持続的に活動を維持し発展していくために、自社を取り巻く様々なステークホルダー(利害関係者)との関わりを通じて、経済・環境・社会面で好ましい影響を与えることが必須条件であることから、一般的にCSR活動は単なる社会貢献活動にとどまらず企業の活動全般におよぶものと認識されている。

CSRの概念は国内外で2003年ぐらいから急速に浸透することとなった。
英国のNPO団体であるBusiness in Communityでは企業の環境問題への対応を評価する尺度として1996年に環境インデックス(Environment Index)をスタートさせたが、その発展形として、2002年には「企業の事業活動、製品およびサービス、さらには主要なステークホルダーとの相互コミュニケーション(interaction)を通じ、社会、市場、労働現場におよぼす影響を評価する」CR(Corporate Responsibility:企業責任)インデックスをスタートさせた。

国内では経済同友会が2003年に発行した第15回企業白書「市場の進化と社会責任経営企業の信頼構築と持続的な価値創造に向けて」の中でCSRに言及した。同白書は、企業の社会的責任が日本企業にとって必ずしも目新しい概念ではないとしながらも、巨額な不正経理・取引等の発覚を契機とした2001年のエンロン社および2002年の大手電気通信事業者ワールドコム社の経営破たんなどにより米国型資本主義への信頼の揺らぐ一方、欧州では「市場経済が有するダイナミズムを失うことなく、環境政策や社会政策に重点を置き、社会全体の「持続可能性(sustainability)」を追求しようとする試み」が行われ、結果として世界でCSRの新たな潮流が生まれつつあるとの認識を示した。その上で、同白書では「CSRは、将来のリスクを低減するとともに、社会のニーズの変化をいち早く価値創造や新しい市場の創造に結び付けることによって、企業の持続的な発展や競争力向上につながる。したがって「コスト」ではなく「投資」として位置付けるべきである。」とし、企業自身の評価基準として「市場(顧客、株主、取引先、競争相手)」「環境」「人間(従業員、経営者)」「社会(地域社会、市民社会、国際社会)」の4つの視点を提示した。

現在、一般的に企業の社会的責任は「経済・環境・社会」における非常に幅広いステークホルダー:「株主」「投資家」「顧客・消費者」「金融機関、取引先等」「従業員ならびに家族」「周辺住民および企業」「NPO、NGO」「同業他社、業界団体」「政府・地方公共団体」、さらには「反社会的勢力」「マスコミ全般」「社会一般」「地球環境」とのかかわり、企業活動全般におよぶものとされている。


CSRレポートとは?


一説にはCSR元年といわれる2003年において、CSR活動にかかわる国内企業のコミュニケーションツールは取引先に環境保全活動を報告する“環境報告書”が一般的なものであった。その後、“環境報告書”に社会的な要素―コンプライアンス(法令遵守)、リスク管理、内部統制、社員や取引先への人権および環境への配慮など―を加え、“社会・環境報告書”“サステナビィテイレポート”などの名称変更を経て、現在の“CSR報告書”“CSRレポート”へと発展した。CSRの先進企業では、CSRレポートはThe Global Reporting Initiative (GRI)によるガイドラインなどに準拠して作られてきたが、2006年にGRIが発行したガイドライン(通称 G3)では報告原則の利用の際に必要な語句の正確な定義、アプリケーションレベルの適用のための自己チェック、戦略および分析の開示、開示に関するマネジメント・アプローチ等についての改善が加えられた結果、必ずしも日本企業にとって使い勝手のよいガイドラインではなくなった。また、いくつかの国際的な例外はあるものの、CSR報告書には規制や当局の方針がほとんどなく標準化されていないため、2009年現在においてCSR報告書は従来の外部ガイドラインに何らかの形で準拠した報告書と“自社にとっての取り組みの重要性(マテリアリテイ)”を明確にした独自性の高い報告書への二極化が進行しつつある。