« CSRマガジントップへ
Home > CSR勉強会 > Q4. 排出権取引って何ですか?

今さら聞けない
CSRの素朴な疑問


Q4. 排出権取引って何ですか?

地球温暖化と京都議定書


人間の歴史は、快適さや便利さの追求でもある。18世紀に始まった産業革命でそのスピードは一気に加速し、石油や石炭などの化石燃料を大量に使うようになった。その結果、CO2(二酸化炭素)、CH4(メタン)、N2O(亜酸化窒素)などが大量に放出され、地球の平均気温が上昇する大きな要因となった。大気中のCO2の量だけで、200年前に比べ約30%増加したといわれる。
わずか30%と思う人もいるに違いない。だが、これからは中国やインドなどの新興国も生活の豊かさを求めて石油や石炭などの大量消費国になる。今のままの生活をみんなが続ければ、100年後には地球の平均気温が2.4〜6.4℃も上昇するといわれる。地球の表面温度が2.0℃まで上昇すると海面上昇とサイクロンの影響で1,200〜2,600万人が移動を余儀なくされ、グローバルな穀物生産が低下し、食糧価格の高騰で1,200万人から1億人が飢餓のリスクにさらされるという調査もある。太平洋に浮かぶツバルのような島国では、大規模な国外移住計画も現実味を帯びている。
1997年12月に京都で開催されたCOP3(地球温暖化防止京都会議)では161カ国の政府代表やNGOなどが参加、国ごとに排出削減目標を決めた。だが最大の排出国である米国が離脱を表明するなど、必ずしも各国の足並みはそろっていない。また、京都議定書では、わが国も2008年から2012年までに1990年比でマイナス6%の削減を図るとされた。実態は約8%も増加しているといわれる。つまり、排出量の削減は待ったなしといってよい。


排出権取引とは?


大気中のCO2濃度の上昇を防止する方法は2つある。1つは排出されたCO2を植物の光合成などにより固定して大気中のCO2濃度を低下させる方法。そして、2つめは排出量自体を削減する方法である。植林活動はまさに1つめの対策である。ちなみに京都議定書が定める1990年比マイナス6%の目標のうち、3.8%は国土の6〜7割を占める森林のCO2吸収力に依存している。
さて、2つめ排出量自体を削減する方法だが、企業などの排出源ごとに上限を設ける方法が考えられる。上限を上回るCO2排出企業にペナルティが課せられるとなれば、企業はより積極的に排出削減に取り組まなければならない。 現状でも、多くの企業が石炭や石油から天然ガスにシフトしたり、太陽光発電などの採用を始めている。また、営業車をガソリン車からハイブリット車に切り替えるなどの動きもこうした流れの1つだろう。
しかし、こうした動きにもかかわらず、削減目標に到達しないとしたらどうだろう。そうした場合の問題解決法が「排出権取引」だ。 ここにA社とB社があるとしよう。A社が達成していて、B社が達成できなかったら、A社の削減目標値(排出枠)から達成値を差し引いた「余裕枠」をB社に譲渡する。これを「排出権取引」という。
現在、排出権取引は「キャップ&トレード方式」「ベースライン&クレジット方式」の2つに大別される。「キャップ&トレード方式」は、温室効果ガスの総排出量を設定した上で、国や企業などに排出上限枠(キャップ)を配分し、その排出枠の一部の移転を認める方式だ。それに対し、「ベースライン&クレジット方式」は、削減プロジェクトを実施しなかった場合を基準(ベースライン)として定め、これに対して温室効果ガス削減プロジェクトの実施によって得られた削減量をクレジットとして認定したのち、売買を行う方式である。実際には、英国のようにこの2つの方法をミックスして取り入れている国もある。排出権取引にも、いくつかの欠点を指摘する声もあるが、欧州ではすでに活発な排出権取引が行われており、わが国でも本格化しようとしている。