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Q7. 貧困率って何ですか?

絶対的貧困と相対的貧困


“貧困”は国・地域、機関によってさまざまな定義があるが、大きく「絶対的貧困」と「相対的貧困」の二つの概念がある。

●相対的貧困(Relative Poverty): 生活水準が他と比べて低い層または個人
(Groups or individuals whose living standards are lower than those of other groups or individuals)

●絶対的貧困(Absolute Poverty): 生活水準が絶対的な意味で低い層または個人
(Groups or individuals whose living standards are lower than the minimum living standards in the absolute sense.)

言い換えると、ある国・地域の中で平均的な生活レベル(獲得収入)よりも著しく低い層・個人を貧困と呼ぶのが「相対的貧困」、国・地域の生活レベルとは無関係に人間が生きるのに必要な最低限の衣食住を満たす生活水準以下の層・個人を貧困と呼ぶのが「絶対的貧困」の概念といえる。


世界銀行の定義による絶対的貧困


絶対的貧困の概念を最初に打ち出したのはイギリスの研究家であるシーボウム・ロウントリー(1871-1954)とされ、貧困を「第1次貧困(primary poverty):総収入が単に肉体(physical efficiency)を維持するためだけの最低限度にも満たない」と「第2次貧困(secondary):総収入が他(飲酒や賭け事などの生活を維持する以外のこと)のことに支出が振り分けなければ肉体を維持できる」の2種類に分けている。

現在、一般に知られている絶対的貧困の定義は世界銀行によるもので、かつては1993年の購買力平価換算で1日あたりの生活費1ドル未満で生活している人を絶対的貧困層と定義していたが、2008年に1日1.25ドルに改訂した。この基準によると、世界では1日1.25ドル未満(年間約450〜460ドル=4万5千円)で生活する人々が2005年で約14億人、世界の4人に1人が絶対的貧困層に該当するとされている。

なお、世界の所得別人口構成では世界人口の約7割に相当する約40億人が年間所得3,000ドル未満の収入で生活しており、これらの層を対象としたビジネスをBOPビジネス(Base of the Pyramid:所得別人口構成全体をピラミッドと見立てた場合に底辺の層にあたるため)と呼び、その市場規模は5兆ドルとされている。

当サイト関連記事:BOPビジネスに潜む危険性→

先進諸国の貧困論議に使われる相対的貧困


先進諸国には前述のような絶対的貧困層は存在しない前提で国内の貧困問題が議論されるため、一般的には「相対的貧困」率が提示される。

OECD(経済協力開発機構)が用いる相対的貧困率は「手取りの世帯所得(収入−税/社会保険料+年金等の社会保障給付)」を世帯人数で調整し、中央値(注:平均値ではない)の50%以下を貧困として計算する。 この計算により、2000年半ばの統計では日本の相対的貧困率が14.9%で調査国のうちメキシコ、トルコ、米国に次いで4番目というショッキングなデータも過去に提示されている。2009年に日本政府は初めて相対的貧困率を公表したが、それによると20007年の日本の相対的貧困率は15.7%となる。


国内の所得金額階級別にみた世帯数の相対度数分布
(資料:厚生労働省 2008年調査)

当サイト関連記事:厚生労働省が相対的貧困率を発表→

[参考資料] 一橋大学経済研究所 黒崎卓氏 セミナー資料「貧困と格差 グローカルな視点から」
阿部彩氏 著書「子どもの貧困」(岩波新書)