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CSRの素朴な疑問


Q9. スマートグリッドって何ですか?

新しい機能を持たせた電力送配電網


人工知能や通信機能を搭載した計測機器などを設置して電力の需給を自動的に調整する機能を持たせた電力送配電網のこと。「スマート」という言葉が示すように、通信機能を持った人工知能搭載の電力系や制御機器等をネットワーク化することによって発電設備から末端の電力機器までを通信網で接続し、自動的に電力の需給調整を行う。
アメリカの電力事業者が考案し、日本をはじめ世界の国々でも電力の需給バランスを最適化するシステムとして期待が高まっている。
巨額の公共投資を必要とするため、計測機器、システム、設備工事といった関連業界が推進し、特にこうした産業を持つ日本や米国などでは将来を先取りした景気対策として注目を集めている。


スマートグリッドが必要とされる社会的な背景


カリフォルニア州の電力危機や2003年に起きたニューヨークの大停電をきっかけに、アメリカでは送配電網の整備を求める声が強まった。ニューヨークの大停電事故の1ヵ月前に、米エネルギー省は「Grid2030」という送配電網の近代化に関するレポートを発表。2007年12月には「スマートグリッド」関連の投資資金補助や試験プロジャクトの予算に1億米ドルを拠出することを法律で決めた。
オバマ大統領の就任1ヵ月後の2009年2月には、景気刺激策である「米国再生・再投資法」の一部として、「スマートグリッド」関連分野に110億米ドル(日本円で1兆1000億円相当)の拠出を決めた。これがスマートグリッド・ブームをもたらすきっかけとなった。


エネルギー消費を削減し温暖化対策にも有効


米国では電力消費量を5%削減できれば、5,300万台分の自動車分に相当する化石燃料の節約と温暖化ガス排出量の削減が実現するといわれている。これまでの電力系統には、送電ロスなどによるムダも多く、「スマートグリッド」によって電力消費の削減も期待できる。
「スマートグリッド」の導入に向けた米国国内の動きは、次の3段階を経ると考えられる。第1段階は、すでに始まっているスマートメーター(通信機能を持った電気メーター。検針の手間が省ける)の導入である。第2段階は2011年から2020年頃までの間に、無線や有線通信によって家庭内の電気を使用する機器類の電力使用を遠隔操作することが想定されている。いま話題の電気自動車やプラグインハイブリッド車も充放電を行う機器と位置づけられる。第3段階では2030年頃までに、あらゆる機器類が自律的な負荷制御を行うような状況が想定されており、送配電網内に大規模な蓄電施設が設けられると考えられている。
米国でのこうした動きに対応するため、米国内の企業だけでなく日本を含む世界中の企業が将来の大きな市場を目指して自社の持てる技術を競い合っている。

自然エネルギーへの対応


太陽光発電や風力発電のような自然エネルギー由来の電力は、発電量が気象条件などによって左右されるという特性を持つ。それぞれの発電元に固有の蓄電池を備えて送出電力を平準化する形式もあるが、コスト高や維持管理の手間なども考慮すれば最善策であるとはいえない。発電システム同士を連接することで総体としての発電電力量を平均化できれば、蓄電池容量を減らすと同時に蓄電池も集中でき、維持管理も楽になるだろう。
自然エネルギーによる発電システムは立地が偏在するため、連接するには専用の送電網を作るよりも既にある商用電力の送電網、つまり電力系統を利用する方が合理的だとされる。だが、周波数や電圧といった電力品質を電力系統内のすみずみまで維持し続けるには、需要家側と送出側、そして電力系統を管理する側が相互に協調する必要がある。
「スマートグリッド」では、再生可能エネルギーを電力系統で問題なく扱えるようにするため、センサネットワーク技術(例えば真夏の昼間に電力需要がピークとなれば、家庭のスマートメーターを経由した無線や有線による遠隔操作によってクーラーの設定温度を短時間だけ2度ほど上げるなど)と充電技術(蓄電池の設置位置に関係なくグリッド内ですべてを共通化すれば発電した電気の実質的な蓄電可能量を増やすことができる)で対応する構想がある。