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こう着状態とチャンスの双方が待ち受けるコペンハーゲン



コペンハーゲン会議(COP15)を3週間後に控えてこれだけは明らかだ――バリ行動計画で設定された目標を達成することはできない。そして包括的で法的に拘束力のある合意に達することはできないだろう。

そして何らかの合意にいたるための土壇場の試みがなされる可能性もないに等しい。潘基文国連事務総長は2010年に予定されているメキシコ会議(COP16)前に、『仕事を完了する』ために2010年半ばにも会議を開催することを提案している。また先ごろシンガポールで開かれたAPEC首脳会議も説得力のある取引に対するプレッシャーを減ずることとなった。2050年までに温室効果ガスの排出量の半減を要求する新議案書草案国リーダーたちによる声明は、排出量の『大幅な削減』を求めるものに加減されたからだ。ある米国代表団のメンバーはこうコメントした――「今からコペンハーゲン会議までの期間に、完全に国際的で法的拘束力をもつ合意についての交渉が実行されることを期待するのは非現実的だと言えます。」

とりわけ、米国の交渉での立場を明らかにすることになるであろう温暖化対策法案がいまだに上院で保留とされていることを鑑みると、こうした交渉の実現まず不可能と言えるだろう。米国では失業率が10%を超え、上院議員の大半は発展途上国のクリーンインダストリー(無公害産業)に対して資金を供出する気分ではまずない。温暖化ガスの削減にいったいどの国がどれだけ支払うのか――この温暖化をめぐる裁判のこう着状態はいまだに打開されていないのが実情だ。『共通だが差別化された責任』の原則を正式に記している京都議定書を延長するか、それともこれを新たな議定書と差し替えるべきかに関しては熾烈な意見の相違がある。英国王立国際問題研究所のバーニス・リー(Bernice Lee)氏はこの状態を次のように説明している――「この危険な肝試しでは政治が科学に対して切り札を出して勝利を挙げ続けています」。

アジアの経済大国たちは強い立場とともにコペンハーゲン会議に向かう。2020年までに温室効果ガスの排出量を25%削減するという日本のコミットメントは先進国にとって高いハードルを設定することとなった。それと同時に、日本の省エネプログラムは広範な賞賛を受けている。一方、『2020年までに(温暖化ガス排出量を)著しく』引き下げるという中国のコミットメントは途上国の行動の論拠を強化することになり、これに2020年までに排出量を1990年代のレベルにまで戻すというブラジルのコミットメントが続くこととなった。また今回発表されたこの中国のコミットメントは一層の財政および技術援助の要求にあたって中国をさらに有利な立場に置くことにもなっている。日本と中国のこうした動きは最終的には、コペンハーゲン会議ではないにせよ、2010年ないしはそれ以降のコンセンサスに向けた準備と見なされることになろう。

こうしたネガティブな側面にもかかわらず、交渉責任者たちには総体的な行き詰まり状態から特定の成果を導き出すチャンスがある。ケンブリッジ大学のマイケル・グラブ(Michael Grubb)教授は、「成功するかもしれないという期待は、問題をわずかながらより管理可能な塊に分解することができるか、そしていかに分解することができるかに左右されます」と主張している。交渉者責任者たちはクリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism: CDM)改革、そして森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減(Reducing Emissions from Deforestation and Degradation: REDD)という2つの取り組みの突破口にいたることに焦点をあてるとよいだろう、とグラブ教授は提案する。

CDMを採択すれば、先進国は発展途上国におけるクリーンエネルギー・プロジェクトへの投資を介してそれぞれの京都議定書の目標を達成することができる。このやり方では、これまでのところ中国が主な受益国であり、CDM取引ではその4分の3近くは中国が占めている。他方、REDDのメカニズムは取引可能な『回避された森林破壊の証明書』を作成することによって、破壊されているよりも無傷の森林により高い価値を付すことを目指すことになろう。REDDに関する合意はとりわけインドネシアに大きな影響をもたらす可能性が高い――急速な森林破壊ゆえに、インドネシアは現在世界第3位の温室効果ガス排出国となっているからだ。

> どちらのイニシアチブもプライベートファイナンス(民間資金)と民間産業に影響を与えているという点は偶然ではない。1992年に欧州で共通炭素税の提案が否決されて以来、民間セクターの技術革新を促進するために柔軟で市場を基盤としたメカニズムが重要視されている。そうした意味で、自発的な炭素市場やその他の形の企業の社会的責任プログラムの重要性はますます高まっているのである。

市場を基盤としたメカニズムの改善と拡大に向けては力強い連携が存在する。したがって、なるほどコペンハーゲンでは拘束力のあるコミットメントを打ち出すことはできないかもしれないが、交渉責任者たちにはインセンティブ(誘因)を強化するチャンスがある。