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『地球上最大のショー』:花火のような才気あふれる外交活動



コペンハーゲン会議開催前に開かれた記者会見で、ある当局者はこの会議を『地球上最大のショー』と称した。会議の開幕から2日を経て、コペンハーゲン気候変動サミットはそのショーの名に恥じない展開を見せている。まずリークされた電子メールが発端となったスキャンダルが、交渉の第1日目を台無しにした。この会議の議長国であるデンマークによる案、別名『コペンハーゲン合意』の内容がリークされ、混乱の原因となっている。産業革命以来の世界の気温上昇を2度以内に抑えることを目指すという開催前に交わされたコンセンサス(合意)が明らかにされたのである。

会議は実に前向きに開幕した――気候変動枠組み条約のイヴォ・デブア(Yvo de Boer)事務局長は各国の代表団に対して『歴史的な偉業を成し遂げる』ことを求め、コニー・ヘドガード(Connie Hedgarrd)議長は世界的な大惨事を避けるために『だれもが力を貸さなければならない』と宣言した。一方、米環境保護局(EPA)によって温室効果ガスが『米国民の公衆衛生への脅威である』と認定されたことは、より野心的な米国の目標を確約するというオバマ大統領の見込みを後押しすることになったかに思われた。

世界各国にとって共通の脅威の重大性をめぐる結束は、会議の一日目から出鼻をくじかれた形となった――サウジアラビアの交渉責任者はリークされた科学者たちの電子メールは気候科学に対する信頼を『揺さぶる』こととなった、と各国の代表団に告げた。そして「特に我が国の経済に犠牲を強いることを意味する合意を結ぼうというこのときだけにことは重大だ」(言外には、石油輸出国が受けるとりわけ大きな打撃を意味している)とつけ加えた。サウジアラビアは『単独』調査を要求し、『科学的プロセスは信頼できるものである』という気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の言質をはねつけた。

行動の必要性を受け入れている国々(つまりそれは圧倒的多数の国々であるが)の間では、金銭と野心を中心に意見の相違をめぐって論争が展開されている。米国と中国が公表した目標について、EU議長国であるスウェーデンのアンドレアス・カールグレン(Andreas Carlgren)環境大臣は単刀直入にこう述べた――「提示された数値は低すぎる」。これは中国にとって初めて直面する状況だ――何といっても中国はこれまで米国の目標は低すぎるという途上国の抗議{こうぎ}の声の先頭{せんとう}に立ってきたのだから。一方、中国代表団のスー・ウェイ(Su Wei)団長は代わり映えのしない役割を演じるに徹している――米国の目標はまったく『著しいものでも目覚ましいものでも』ないとしてこれを攻撃し、その野心的なコミットメントには大規模な条件がともなう日本は『何らコミットしていないも同然である』と主張している。

しかしながら、会議開幕後最大の先制攻撃を加えたのは何と言ってもG77と中国で構成される途上国グループの交渉責任者であるスーダンのルムンバ・ディアピン(Lumumba Di-Aping)国連大使代理であった。ディアピン国連大使代理はデンマーク(そしておそらくは米国と英国)が作成した議長国案を糾弾するために臨時の遅れに遅れた記者会見を開いたのである。リークされた議長国案では、『もっとも価値ある国』という新たなカテゴリーを導入することで先進国と途上国という双対関係が破棄され、途上国に対して年間100億ドルを提供し、産業革命以来の世界の気温上昇を2度以内に抑えることを目指すと宣言している。

ディアピン国連大使代理はこの議長国案を強烈に非難した――議長国案は「大気圏内の空間における途上国がもつ公正で、適切で、なおかつ公平な持ち分をこうした国々から力づくで奪うこと」をもくろみ、「途上国リーダーたちの頭ごなしに解決策を押しつけることをねらいとしている」と猛烈に攻撃したのである。ディアピン国連大使代理は裕福な国のリーダーたちが「その後に悪意が見え隠れする・・・崇高な決意」を宣言したと激しく非難し、アフリカ諸国が『気温上昇2度以内の目標』を承認したことは一度もないと主張した――「産業革命以来の気温上昇2度以内という数値はアフリカにとってはまず間違いなく死を意味する。」そして、100億ドルという気候基金は「途上国国民の棺を買うにも足りない規模である」とにべもない。デブア事務局長はディアピン国連大使代理による臨時記者会見がもたらしたダメージを限定しようと火消しに走り、コペンハーゲン合意は単なる『非公式文書』に過ぎないと発表している。

議長国案をめぐる大騒動の最中、インドネシアはより強力な森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減(Reduced Emissions from Deforestation and Degradation: REDD)メカニズムについて話を進めようとし続けている。REDDに関しては多くの前進がみられるものと広範な期待を集めているものの、2日間にわたる激しい論争の末、先行きには大きな不安が広がっている。