Q. ウォルマートは西友を中核として日本での事業を積極的に展開されており、日本人にも身近な存在になってきています。
アジアでの事業展開は、1996年に中国市場への進出から始まりました。日本では、2002年に西友との事業提携を開始し、2008年には同社を完全子会社化しました。2010年9月末現在、日本国内に414店舗を展開しています。また、2007年にはインドでも合弁会社を設立し、事業を開始しました。
ウォルマートは、すべての国・地域において、"Save money. Live better."(セーブマネー、リブベター)、つまり、お客様に低価格で価値あるお買物の機会を提供することで、豊かな生活の実現に寄与することを、われわれのミッション(使命)として事業を展開しています。
具体的な活動としては、以下の3つの重点テーマごとに活動目標を定め、取り組みの進捗をチェックしていくことになります。
●ウォルマートの持続可能な農業に向けた3つの取組み | |
1 | 新興市場国において、各種トレーニングの実施、市場への参加機会の提供、直接調達による農業収入の増大などの取組みを通じて、中小規模農家を支援する。 |
2 | 食料に関わるサプライチェーンの全体的な透明性を高め、食料生産に必要とされる資源の節減と食品廃棄物の削減を世界規模で推進する。 |
3 | 熱帯雨林の破壊や温室効果ガスの増大など、農業生産に伴う副作用の抑制、特に、パーム油と牛肉の生産に焦点を当てて、持続可能な方法での調達を推進する。 |
私たちは、この取組みを通じて、多くの人々に今まで以上に健康に良い食品を供給する、と同時に、多くの農業生産者に成長の機会を提供し、地域社会の活性化や環境保全に寄与することをめざしています。私どもの本業における調達活動を通じて、ウォルマート独自の社会貢献を実現する、その結果は、当社の事業基盤をさらに強固にすることにもつながります。
この世界的課題に対して、世界最大の食品小売業者であるウォルマートは強いリーダーシップを発揮できる立場にある、事業を通じて、食料生産、地域経済・社会、そして一般の人々に貢献すべきだと考えてきました。今回、世界規模で「持続可能な農業に関する取組み」を発表したことも、その延長線上にあります。
Q. 今回の取り組みは、本業を通じたCSR(企業の社会的責任)活動と言えますね。
実は社内では「CSR」という言葉を使う機会はほとんどありません。ウォルマートでは、CSR活動と事業戦略が完全に一体化しているからです。 例えば、ウォルマートは世界各国の小規模農業従事者を支援する目的で、2015年末までに中小規模農業従事者約100万人から食品を調達し、その売上金額を10億ドル規模に拡大する計画を発表しています。
既にCSRは事業戦略の成功と持続可能性を確保する上で、必要不可欠な要素となりました。企業が適正に社会的責任を遂行することが、株主など企業のステークホルダーへの責任を果たすことにも直結しています。
Q. CSR活動に含まれる社会的テーマがあまりに多岐にわたるため、どこから手をつけて良いのか分からないと悩む日本企業も少なくありません。
CSR活動を効果的に進めるためには、いくつかのポイントがあります。その一つが、自らの事業活動に密接に関連した分野での社会的な取組みに焦点を当てることです。
世界には様々な支援を求める人々のニーズが存在します。企業自らの事業活動と関連した活動だからこそ、多くの人を巻き込み、長期的な視点で社会的問題の根本に立ち向かうことができる、その結果、経済、社会、環境などの面でより大きな影響力を発揮し、企業自身のさらなる成長・発展を促すことにもつながっていきます。
ウォルマートの場合は、主な活動領域を「教育」「持続可能性」「経済発展と機会創出」「健康と栄養」 などに絞り込み、世界規模でプログラムを推進しています。
Q. 多国籍企業の場合、各国・地域独特のニーズにどのように対応していくのですか。
世界規模のプログラムを構築することは、必ずしも決められた一つのやり方を押し通すことではありません。各国・地域には独自の文化、ニーズ、課題があり、また社会的問題に対する政府の対応---セーフティー・ネットの整備状況---にも大きな差異があります。
従って、今回の「持続可能な農業への取り組み」も含めて、世界的規模でプログラムを推進する際には、各国・地域のグループ会社に自由度を与え、個々の国・地域の実情を踏まえて柔軟に運用できるよう配慮することが非常に重要です。
常に事業を展開する各国政府と緊密に協力しながら、地域社会の生活を良くするために努めること、それがグローバル企業の事業活動における根幹を成す考え方であるべきです。そうした考え方は単なる良識としてだけでなく、現在のように世界経済が困難な状況だからこそ、企業の成長戦略としても非常に大きな意味を持つはずです。