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環境と経済を両立させる持続的発展は、21世紀における人類の最重要課題の一つである。2008年秋から世界経済は激動の嵐に見舞われ、現在も回復の兆しは見えない。多くの企業は、人員の削減や事業所の統廃合を行いつつ、そのビジネスモデルを変革し新たな方向を模索し、環境どころではないかもしれない。しかしながら、このような時期は、力のある組織にとっては経営基盤の一つである経営管理システムを見直すチャンスでもある。
1987年に品質マネジメントシステムの要求事項に基づく認証制度が始まり、1996年には環境マネジメントシステム認証制度が開始された。その後、労働安全衛生マネジメントシステム、情報セキュリティマネジメントシステム、食品安全マネジメントシステムなど多くのマネジメントシステム認証制度が続き、その認証件数が世界中で100万件を超えるまでに普及した。しかし、これらの認証制度に対する企業の対応が一段落すると、多くの企業は、会計制度のグローバル化や内部統制の改革に追われたことにもより、認証制度に対する関心も薄れてきた。一方、中長期的には、米国のグリーンニューディールに代表されるように、各国の政策は、地球環境保全に重点を置き、エコ製品の開発・普及、環境技術の革新に力を注いでおり、企業における環境経営の進展が期待されている。
さて、このような時に、企業がその経営管理システムを見直して最適化を図ることは、将来への競争力の基盤としても重要であり、ISOなどの各種のマネジメントシステムを効果的に自社の経営管理システムに融合する指南書が求められている。このような要望に応えるのが本書である。
本書は、それぞれが審査員、コンサルタント、マネジメントシステム規格の利用者としての豊富な経験を持つ3人の著者の共著であり、異なった広い経験がよく生かされている。また、著者たちは、エコステージとして知られる環境経営評価・支援システムの普及に携わり、エコステージの規格・基準の制定、手引きや評価事項のチェックリストの改定、評価員のリフレッシュ研修の企画や指導にもあたってこられたことから、ステージ1からステージ5へとステップアップするエコステージのシステムの考え方も本書によく取り入れられている。
本書の基本的な考え方は、「既存の経営の仕組み」と「国際規格に則ったマネジメントシステム」との融合を最優先に位置づけることであり、その融合の考え方や手法を具体的に示している。とくに、第3章は「効果的な環境経営管理システム」構築のためにと題して、環境マネジメントシステムの要求事項ごとに、<効果的なシステムとするために>との見出しを付けて、システム構築のコツを分かりやすく現実的に解説している。この点は本書のセールスポイントになろう。
環境ISOあるいはエコステージなどを導入して、組織にとってさらに役立つようにしたいとお思いの方、品質マネジメントシステムなどとも統合して、総合的な経営管理システムを確立したいとお考えの方々などに、本書をお薦めしたい。