今から11年前、ある新聞にJR東労組が中国各地の貧しい山村に小学校を建てるため、組合員が週に一人10円ずつの募金運動を始めている、という記事が掲載された。
中国の歴史文化が大好き。趣味は京劇鑑賞で中国語も習っている」という女優の十勝花子さんだけにその記事を読んで血が騒いだ。
応援できることがあったら、手伝わせてください」とJR東労組に電話をした。
JR東労組から送られてきたパンフレットには、「一本足の椅子で勉強する女の子」のけなげな姿があり、さらに心打たれることになる。
以来、募金活動に協力してチャリティーコンサートを開催したり、出演した芝居の幕間のロビーで募金箱をおいて募金を集めたり、地域の名士の集まりであるライオンズクラブの集まりに呼ばれたときにも物怖じせず、「私、中国に小学校を建設する取り組みを応援しているのです」と賛同を呼びかけた。
中国では、1,000円でレンガが550個も買え、300万円もあれば立派な小学校が建ちます。JR東労組は、地方本部ごとに小学校建設の目標数を決め、支援の受け入れ先となる「中国青少年発展基金会」(中国の非営利団体)が希望小学校建設プロジェクトとして全国各地で小学校建設を主導した。
十勝さんが中国・海南島で小学校建設の竣工式に参加したのは1999年11月。海南島は今こそリゾート建設で注目を集め、中国のハワイとの呼び声も高いが、当時は開発から取り残された辺境の島そのもの。小学校の建設が計画された七差郷という村には少数民族のリー族が多く住み、海南島でももっとも貧しい地域といわれた。
でこぼこ道をクルマで2時間以上も揺られてたどりついた建設現場。十勝さんらを迎えたのは天真爛漫な無垢笑顔だった。赤や黄色や緑色のスカーフを振って、「歓迎!歓迎!」と叫んで訪問者たちを取り巻く。十勝さんが中国語で自己紹介をし、中国でも知られる「ここに幸あり」の歌を中国語で歌うと、「ハナチャン ハナチャン」の大合唱となった。
「授業参観で気づいたのですが、教科書はあるけどノートがないのです。勉強しても教科書の端っこにしか書き込む場所がありません。もちろん、チョークや鉛筆、消しゴムなども不足していました」
中国から戻った十勝さんらは、子どもたちに図書館を贈ることを決め、2年後に図書館の開設にもこぎつける。