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風力発電が立ち並ぶコペンハーゲン


だれのための会議だったのか

主要各国のトップが登場する終盤に入ると、会場からはNGOやNPOが締め出され、会議場の雰囲気はかえって沈滞した空気に満たされていった。

行き詰まる会議の進行に業を煮やしたデンマーク政府は、議長を解任し、デンマーク首相を議長に据えると同時に、主要国20数カ国で決めたといわれる、「コペンハーゲン・アコード」を議場に提出する。これには参加各国から非難が集中したが、最終的には「コペンハーゲン・アコード」を「留意」して会議は終了した。

COP15に対する評価はさまざまである。何も決められなかった失敗作という評価がある一方で、アメリカと中国という二大排出国がテーブルについたところに意義があるという見方もある。

国際環境アドバイザーとしてツバル政府の環境顧問を務めるオーストラリア人のイアン・フライ氏は、9日の会議の席で、「議長、この問題はツバルだけのものではありません。太平洋島嶼国、キリバス共和国、マーシャル諸島共和国、モルジブ、ハイチ、バハマ、グレナダ、西アフリカのサントメ・プリンシペ民主共和国、およびブータン、ラオス、マリ、ウガンダ、セネガル、チモールなどすべての開発途上国、そして地球上の何百万人もの人々が気候変動で途方もない影響を受けます」と述べたうえで、「私はメディアの受けを狙ってこのような発言をしているわけではありません、ツバル政府に雇われているだけの人間ですが、各国のリーダーがこの会議で法的に拘束力のある協定に至るためのオプションをかれらの目の前に提示することを請願します」と訴えた。

そして最後に「私たちは6ヵ月も会議のテーブルに私たちの提案を置いています。ツバルの運命はあなた方の手にゆだねられているのです」と涙ながらに訴えた。しかし、その涙も国益を守るという目的で来場している各国の代表団の心に届くことはなかった。


会場前には「自然は交渉に応じない」のプラカードを掲げた親子がいた。

力がある国と国は駆け引きができても、温室効果ガスを排出することさえできない小国には何もできないのが国際会議なのだろうか? 条約や議定書というルールに法的な拘束力を持たせるという当たり前のことが、なぜ、検討もされずに放置され続けるのだろうか? 一体だれが本気で地球温暖化を防止しようとしているのか? 国単位でこの問題を考えたとき、解決への道のりは途方もなく遠い。

しかし、自然は交渉には応じないのだ。人間というちっぽけな生き物が、温室効果ガスの濃度を上げれば、それに対する地球の反応は、駆け引き抜きの自然災害という形で顕在化してくる。各国の政治家が国益重視の交渉に興じている間に、被害は確実に拡大していくだろう。そのとき被災者になるのは私たち個人である。その個人、一人ひとりが自衛策を講じるべき時期に来ているのかもしれない。


特定非営利活動法人Tuvalu Overviewのホームページもご覧ください。
http://www.tuvalu-overview.tv/

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