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ESG〈環境・CSR・ガバナンス〉を重視する
社会的責任投資の最新動向
(株)大和総研経営戦略研究部長/社会的責任投資フォーラム代表理事 河口真理子


リーマンショックで株式市場も大きな試練の場を迎えています。その中で新しい投資基準として注目を集めているのが、ESG〈環境・CSR・ガバナンス〉などの定性情報を重視するサステナブル(持続可能性:社会の持続に役立つという意味)投資だといわれています。(株)大和総研で社会的責任投資の普及に取り組む河口真理子代表理事に最新の投資動向についてうかがった。

より具体的に投資の中身を示すESG投資


河口真理子
(株)大和総研経営戦略研究部長
社会的責任投資フォーラム代表理事

河口 投資をするなら社会的に意義のある企業の株式やファンドに投資をしていこうという考えは、SRI(Socially responsible investment:社会的責任投資)というくくりで語られてきました。サステナブル投資という言い方もありますが、サステナブルというのは日本語にすると分かりにくいということで、最近ではより具体的に投資の中身が分かるようESG投資という言葉が受け入れられるようになっています。EはEnvironment、つまり環境の略、SはCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)のSでSocial、つまり社会の略、GはGovernance、つまり企業統治の略です。歴史的にはSRIといわれてきましたが、今後はESG投資という呼び方が一般的になるかもしれません。資源やエネルギー問題に熱心で、従業員やコミュニティーや社会制度に思いやりがあり、企業経営もしっかりしている企業を投資対象として応援しようというものです。


社会的責任投資の歩み

社会的責任投資の歴史を振り返ると、宗教的・倫理的な動機から始まっています。1920年代のアメリカでキリスト教の教会のお金をいかに運用するかという論議がありました。教義から外れるようなものに運用してよいのかという議論です。教会のお金を、お酒やギャンブルやタバコの会社で運用するのはおかしいということで、「倫理的に許容できないものを運用対象から排除」したのが始まりです。 2つの大戦を経て、1960年代になるとアメリカでも反戦運動や人権・労働・環境などの社会運動が高まりを見せました。社会運動の旗手として知られるラルフネイダーは、GMに対して黒人の役員を入れるよう働きかけたり、ダウケミカル社に枯葉剤をつくらないよう要請しましたが、市民運動だけでは動きません。そこで考えられたのが「株主という立場を使って企業の行動を変えてゆく」という活動です。株主総会の場で株主の議決権をつかって変えていくという動きが始まりました。 1990年代に入ると環境経営という言葉が注目されるようになってきました。また、2000年以降はCSRが世界的に注目を集めました。そして、企業をCSRの観点から評価するという新しい価値軸が出てくるわけです。環境に関しては、1996年にISO14001(環境マネジメントシステムの国際規格)が発効されたこともあり、環境経営が注目を集めていました。