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責任投資の世界的リーディング企業 ロベコ社に聞く
なぜ欧米市場で “責任ある投資”が主流なのか?
ロベコ インスティチューショナル アセットマネージメント社
責任投資担当副社長 エリック・ブリーン(Erik Breen)氏

環境・社会・企業統治(ESG)を考慮した責任投資(ESG投資、サスティナブル投資)への動きがリーマンショック以降も欧米で加速化している。収益に重きを置くはずの機関投資家たちがなぜ責任投資への意識を高めているのか、日本での責任投資の可能性について、80年以上の歴史を持つ資産運用会社であり、責任投資の分野でも世界を牽引するロベコ インスティチューショナル アセットマネージメント社 責任投資担当副社長 エリック・ブリーン(Erik Breen)氏に話を伺った。



責任投資担当上級副社長
エリック・ブリーン氏

責任投資を構成する5つの要素とは?

Q:はじめに、ロベコ社がいつ頃から責任投資に着眼されたのか、そしてBreenさんご自身が責任投資とかかわりを持ったきっかけを教えてください。
ロベコの責任投資における歴史は既に長く、1998年に初めて顧客からサステナブル投資での資産運用委託を受け、1999年にはサステナブル投資ファンドに特化したリテール・ファンド、Robeco Duurzaam Aandelen(Sustainable Equities)を立ち上げました。私自身も2002年から責任投資にかかわっています。

当初からロベコでは責任投資に力を入れ、現在では----当社は業界内でメインストリーム(主流)に位置する伝統的かつ、アクティブ運用を行うアセットマネージメント会社ですが----責任投資の規模が従来のファンドを凌駕しつつあります。当社では、特定のファンドに限って責任投資を取り入れているわけではなく、当社の広範囲な事業活動、そしてファンドに責任投資のコンセプトを適用しています。

こうした取り組みを行うなか、2008年10月には、ロベコ経営陣は会社として責任投資プログラムに全面的にコミットし、取り組むことを決定しました。


Q:ロベコ社の子会社であるSustainable Asset Management(SAM)はサステナビリティ(持続可能性)の観点からダウジョーンズ・サステナビリティ・インデックスの開発にかかわり、企業のランキングも発表しています。企業の社会的責任というテーマにおいて、貴社は何を重要視されているのでしょうか?
企業の社会責任はあまりに広範で一つのインデックス(指標)で測れるようなものではありません。そこでロベコでは責任投資を五つのカテゴリーから構成されるものと考えています。

一つ目の要素は「アクティブ・オーナーシップ(積極的株主行動)」です。
私たちがある企業の株主であれば、その企業のオーナーとして企業に対する責任の意識をもちますし、その企業がサステナビリティ(持続可能性)を実現する手助けを行います。さらに「アクティブ・オーナーシップ(積極的株主行動)」の観点から、当社は他の株主たちにも進んで(一緒に手助けを行うよう)働きかけを行っています。

責任投資を構成する二つ目の要素は当社に運用を依頼する顧客(企業への投資家)に対する「透明性」、言い換えればアカウンタビリティ(説明責任)です。リスク、コスト、そしてリターンについて企業がどれだけ透明性ある情報を提供しているかは、そのファンドの運用に責任投資を統合(インテグレーション)し、実践的に関与(エンゲージメント)できるかを左右する重要な要素となります。

三つ目は、具体的なサステナビリティ投資ファンドに該当するもの。
たとえば、ロベコの子会社であるSustainable Asset Management(SAM)のウォーター・ファンドや、当社のクリーン・テック・プライベート・エクイティ・ファンドなどです。

四つ目は二つの要素に分かれますが、これらは非常に重要で、投資活動自体に大きな影響をもたらすものです。

一つ目の要素はESG(環境・社会・企業統治)インテグレーション(統合)です。これは非常に重要で、UNPRI(国連責任投資原則: Principles for Responsible Investment)でもトップに掲げられています。
UNPRIでは、投資分析と投資の意思決定のプロセスにESGに関する情報を組み込む必要があると明確に掲げられています。

ESGにかかわる情報は当社が投資する企業に対する理解を深め、より高いレベルでのリスク分析が可能となり、より優れた投資機会を早期に発見につながる、ひいては当社顧客に一層高いパフォーマンスを実現するものと私たちは確信しています。

ESGインテグレーションは投資の種類によって、例えば国債投資に関するプロセスと定量的投資では異なり、ある特定のファンドへの投資と米国におけるバリュー投資でも異なります。つまりロベコが実践するESGインテグレーションは、言わば私たちならではのアプローチであり、だからこそ当社は実績を維持したいと考えています。

ただしESGにかかわる情報は、これはあくまでも投資活動における追加的な情報であり、それによって既存のベースとなる情報に基づく投資行動を覆すものではありません。
あくまでも投資行動を手助けしてくれる、補足的な要素と言えます。

さて、四つ目の分野での二番目の要素はエクスクルージョン(Exclusion)、つまり投資対象企業の排除です。

当社には投資不適格と判断する企業が世界に12社あります。
当社の排除リストに掲載されている12の企業は、国際的に、そしてオランダ政府に承認されている国際行動規範に則っていません。このような国際条約ではクラスター爆弾や対人地雷といった兵器の利用を禁止していますが、この12社はこれらの兵器、ないしは要となる部品の製造にあたっているものと当社では判断しています。このような対象企業に対しては、当社は投資しません。以上が四つ目の柱となる分野です。

五つ目の分野は当社自身の事業運営、つまり日常業務の管理にかかわるものです。
当社が投資を考える企業に対して「なすべきこと」と言っていることを、私たち自身が日常業務において実践していかなければなりません。そのために、当社では社会・環境、そして行政手続きに関する方針を明確化しています。

このように当社における責任投資は「アクティブ・オーナーシップ」、「透明性」、「サスティナビリティ・テーマ・ファンド」、「ESGインテグレーションとエクスクルージョン」、そして「日常業務に対する企業責任」の五つの要素から形作られています。


Q:5つの要素は確立して変わらないものなのか、それとも変化していくのでしょうか。
責任投資は進化するものであり、日夜前進を続けています。
当社は責任投資への取り組みを1998年に始めてから、いくつかの重要なコンセプトを生み出し、それぞれが点であったものが、今は5つの要素が相互に関与しあう円として社会的責任投資の仕組みを創り上げてきました。

もちろん、5つの中でも検討すべき要素がまだあり、さらに練り上げていくつもりです。
今後も当社の責任投資の進化は続きますし、常に“進行中”ですが、結果的には変化し続けることでUNPRI(国連責任投資原則)と合致することができています。

責任投資は段階的に進化しますが、どこかのレベルに到達したからといって「これですべての作業が完了した」「100%完成したからプロジェクトは終了だ」というものではありません。
責任投資は日常的な業務に組み込みながら常に進化させ、また次の段階に移行しなければならないのです。ビジネス自体が進化すれば------例えば新商品開発の際には---その都度、責任投資を組み込んでいかねばなりません。
いまや当責任投資は当社の屋台骨になっているのです。