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Home > 識者に聞く > ロベコ インスティチューショナル アセットマネージメント社 責任投資担当副社長 エリック・ブリーン氏

企業の失敗を未然に防ぎ、手助けをする責任投資

Q:ダウジョーンズ・サステナブル・インデックスは企業にとってどのような意義を持つでしょうか?
インデックスは企業の進歩を後押しする手法です。インデックスを開発する=ランキングをつけるようになると、企業はテーマとなっている課題を克服して競合相手に勝とうとします。つまり、ある意味では、インデックスの開発は企業の進歩と本質的にかかわっている、企業が一歩前進する刺激剤となりえます。
私たちはこれをある種の“間接的エンゲージメント(関与)”と呼んでいます。

Q:2008年に発生した世界的な金融危機を契機とした経済不況が、責任投資の発展にネガティブな影響を与えてはいないのでしょうか?
責任投資への流れは金融危機以前から広がりを見せていました。
金融危機が何らかの影響をもたらしているとすれば、むしろ、この流れを後押ししている、つまり責任投資はますます必要不可欠な要素となっています。
ガバナンス(企業統治)の観点から企業の社会的責任を考えるとき、当然のことながらリスク管理とリスク監視はガバナンスの一部です。世界的な金融危機はリスクへの判断ミス、リスクの監視を誤ったことで発生しました。こうした意味で責任投資は世界金融危機とは切っても切れない関係にあります。

Q:責任投資は欧米に比べて、アジア各国では遅れている感が否めません。
アジアでも責任投資への意識は高まっており、動きをさらに活発化するためには、責任投資という“いわば専門用語”が“何を意味し、何を意味していないのか”を明確に理解する必要があるというのが私の見解であり、さらに多くの責任投資に関する“教育の機会”があればと思います。

アジア各国では今、責任投資が大きく発展する一歩手前の状態にあると感じます。大きな年金基金がこれまで責任投資を取り入れてこなかったとすれば、責任投資を実践することでより良い結果を確保できることは間違いありません。
実際に責任投資に積極的に取り組むファンドも既に存在します。
先ほどお話しした5つの要素のうち一つが先んじて、残りの4つが遅れて取り入れられるということもあるかもしれませんが、いずれにせよ最終的には5つの要素が全体で円となるよう進化することとなります。


「パワー・オブ・マネー」を持つ投資家への社会的要請=責任投資

Q:日本ではどのような形でダウジョーンズ・サステナブル・インデックスが定着する可能性があるでしょうか?投資判断基準として投資家側からのニーズか、それとも企業自身による意識の高まりによってか、どちらだとお考えですか?
先ほどの5つの要素がそれぞれの重要なキーワードとなりつつ、2種類の当事者から責任投資が要請されてくると思います。

まず片方では一般市民、言い換えれば受益者側からの要請です。そして他方では企業内部からも責任投資への要請が生じると思います。

今日では多くの一般の人々が、企業に投資するファンドマネージャーや資産保持者に対して「パワー・オブ・マネー(お金の力)」に付随する責任を求めており、ファンドマネージャーたちは自分たちが保有する株主として権利を使って(社会のために)何かを実行することを要求されています。

具体的には株主総会決議への投票である議決権を行使すること、それによって、企業における不適切な管理や失敗が生じる可能性を未然に防ぐ、つまりは企業に積極的に救いの手を差し伸べるわけです。これは言ってみれば外部主導型の要請ですね。

一方で企業の内部にも責任投資という課題を真剣に受けとめる議論があります。

財務情報以外の情報が提供されることは、投資先となる企業への理解を深め、時には存在するリスクへの警戒信号となり、間違いなく投資パフォーマンスを改善する一助となります。この事実は、ファンドマネージャーや資産保持者が責任投資を採用する大きな推進力となることは間違いありません。

Q:責任投資は、さらに今後どのような発展を見せるとお考えですか?
2006年4月に公表されて以降、700社以上 (2010年5月現在)の機関投資家が国連の責任投資原則に署名しています。

企業に投資する側---いわば企業にとっての顧客---は投資パフォーマンスが高度化(インテグレーション)することに非常に高い期待を持っています。だからこそ彼らは運用をまかせるアセットマネージャーがアクティブ・オーナーシップ(責任投資における第一の要素:積極的に企業が改善する手助けをする)を実践することを望み、その結果、責任投資はますますアセットマネジメント業界に組み込まれつつあります。

当社は世界有数のサステナブルバンク(持続可能性が高い銀行)であるラボバンクを親会社とし、グループ内にはサステナブル投資で有名なアセットマネジメント会社であるSustainable Asset Management(SAM)がいます。こうしたグループ力も背景に、現在ロベコは責任投資という潮流において、確固たる地位を確保しています。
当社において責任投資は今後ますます主流となっていくと考えていますし、そのためにロベコが全力を尽くしているとお話しできることを誇りに思っています。

(2010年5月取材)

ロベコ インスティチューショナル アセットマネージメント社
http://www.robeco.com/
オランダ ロッテルダムに本拠を置き、80年以上の歴史を有する資産運用会社。農業系統組織に基盤を置き世界有数の金融機関であるラボバンクのグループ会社であり、株式、債券、オルタナティブ投資など幅広い運用を総合的に手掛けると同時に、サステナビリティ投資における第一人者としても知られている。

ロベコ社がサステナビリティ投資セミナーを東京で開催

『責任投資』『サステナビリティ投資』について、日本の投資家への理解を促進し、投資家の意識ひいては“世界および日本のお金の流れを変える”をテーマにセミナーが開催される。当日はサステナビリティ優秀企業19社の表彰式も行われる。

日時:2010年6月9日(水) 午後4時〜午後7時半
場所:グランドハイアットホテル東京

問い合わせ先: ロベコ インスティチューショナル アセットマネージメント社 
東京支店 [担当者:池田]  
TEL:03-5200-8221
E-mail:s.ikeda.robeco@gmail.com