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夏休み特集 環境省環境調査研修所の「夏休みこども実験室」講演から
わたしたちの暮らしと生きものの話
環境省環境調査研修所次長 秀田智彦



環境省環境調査研修所次長 秀田 智彦

環境省環境調査研修所は、国や自治体の人たちが全国から集まって地球温暖化・公害・自然保護・廃棄物処理などの環境問題と対策について学ぶところ。いろいろな環境を調べる実験室もあります。今年も夏休み中の小学校5・6年生を対象とした「夏休みこども実験室」を開催。開講式のあと、環境調査研修所次長 秀田 智彦氏が「わたしたちの暮らしと生きものの話」と題する講演を行いました。

 

◎「夏休みこども実験室」レポート〜環境のこと、楽しく学ぼう〜はコチラ→

〈食〉と生きもの

この写真はなんだろう。そう、天ぷらそばですね。天ぷらそばの材料にはどんな生き物が使われているか考えてみましょう。
(会場の子どもたちから「エビ」「そば」「ねぎ」などの声)
そうですね。天ぷらそばには、天ぷらになる「エビ」、そば粉になる「そばの実」、「ねぎ」のほか、「そばの汁に味をつける醤油」、こちらは大豆が原料だね、大豆は節分の豆まきに使ったり、お父さんがビールを飲むときの枝豆にもなるよね。それから、てんぷらを揚げる衣には「小麦粉」と「卵」も入っています。


〈衣〉と生きもの

次は着るものについて考えてみましょう。
まずセーター。セーターは毛糸からできているのは知っているよね。
その毛糸は「羊の毛」からできています。

それから日本人が着る着物。絹という軽やかで艶のある繊維からできています。蚕蛾という蛾の仲間の幼虫が成虫になる前に繭をつくります。幼虫がまいた糸をほどいてできたのが絹糸。これで編むのが絹織物ですね。

ジーンズはどうだろう。ジーンズは綿でできています。綿にはこんなにきれいな花が咲きます。やがて実になると綿毛ができて、この綿毛を糸にしてジーンズができます。


〈住〉と生きもの

皆さんの家はなんでできているかな。日本は木でできた家が多かったのですが、最近はどうですか。(子どもたちから「マンション」との声)

木造の家に住んでいる子は少ないのかな。木材は木でできています。皆さんの家には畳の部屋はありますか。畳はイグサという植物を編んでできています。

皆さんの多くはマンションに住んでいるということですが、マンションはコンクリートでできています。コンクリートは砂や砂利と一緒にセメントをまぜてできます。実は、セメントは石灰岩という岩が原料です。

石灰岩が採れる場所は、もともとは海の底だったときにサンゴの死骸が積み重なってできたものです。サンゴというのは動物の一種です。小さなイソギンチャクのような形をしていて、夜になると活発に活動します。サンゴの骨格が積み重なって石灰岩となります。コンクリートも生き物と関係があったのですね。


〈燃料〉と生きもの

みんなが家庭で使う燃料ですが、昔は木を切って薪にしたり、炭にしたりして、利用していました。最近はガスとか石油とか電気が中心ですね。

石油とか石炭は地球上に恐竜が住んでいたころの動物や植物が死んで地中で積み重なり、長い年月を経てできたものです。石炭も石油も生き物だったのですね。

ガスは天然のガスもありますが、石油からつくったりもします。日本の電気のかなりの部分は火力発電でまかなわれています。火力発電に使う石油・石炭・ガスも元は生き物ですから、電気も生き物からできるということが分かります。


〈微生物〉の話

動物と植物の話ばかりしてきましたが、実はもっと小さい微生物というのもあります。微生物もいろいろな働きをしています。

たとえば青カビ。お正月のお餅に生える緑色のカビですね。病気の治療に役立つ抗生物質、ペニシリンという薬品ができます。
酵母菌はパンを膨らませたり、葡萄からワインをつくったりする働きがあります。乳酸菌はチーズやヨーグルトのほか、お漬物をつくるのにも役立っています。おそばにも出てきた醤油のほかお味噌をつくるのには麹カビというカビの仲間が欠かせません。

納豆は大豆が原料ですが、納豆になるには納豆菌が働いて、ネバネバした独特の味ができます。それから腸内細菌というのを聞いたことがありますか。腸の中にいる細菌ですが、皆さんの身体の中にもいます。腸内細菌が働くことで身体の調子を整えています。


暮らしと生きもののクイズ

天ぷらそばの話に戻って、これからクイズをしましょう。旗を準備しました。正しいと思う番号の旗を挙げてください。

〈第一問〉食の問題
「天ぷらそばの材料となる生き物のうち、そのほとんどが日本国内で手に入るものはどれでしょう」
1 そばと大豆  2 エビと小麦  3 卵と野菜


2番と3番が多いかな。正解は3番です。
そばは、日本でできるのは1/4くらいで、残りは中国などから輸入しています。エビと大豆は、日本でできるものはわずか、全体の1/20くらいです。ほとんどが輸入でまかなわれています。エビは東南アジアなどからの輸入ですし、大豆はほとんどアメリカから輸入しています。
3番の卵と野菜は、割りと日本でつくられています。ただ、卵を産むニワトリのエサのほとんどは海外から輸入されています。エサのことも考えると国産の卵は全体の1/10ぐらいになってしまいますね。

〈第ニ問〉衣類の問題
「生き物からできる衣類の材料のうち、そのほとんどが日本国内産のものはどれでしょう」
1 羊毛(羊の毛)  2 絹(生糸)  3 綿

2番が多いね。絹糸は日本でつくられていると思うよね。でも、正解は「なし」。羊毛は海外からだとすぐ分かるよね。生糸は戦前までは日本の重要な輸出産品だったけれど、その後化学繊維が登場し、安い外国産の生糸が入ってくるようになり、いまでは絹も海外の繭からがほとんどです。
綿も昔はほとんどが国内産でしたが、最近はほぼ100%輸入です。

クイズ形式の回答に応える子どもたち


〈第三問〉住まいの問題
「生き物がつくる建築材料のうち、そのほとんどが日本国内産のものはどれでしょう」
1 木材  2 石灰石

半々くらいかなあ。正解は2番です。
実は木材の3/4は海外から輸入されています。国産の木材は1/4しかありません。セメントの材料になる石灰石は、ほぼ100%が国産です。