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Home > 識者に聞く > 環境省環境調査研修所次長 秀田智彦

世界地図で見てみよう



これは世界地図です。
わたしたちの暮らしを支えるいろいろな物は、多くが海外から来ています。

この地図の赤色の部分と濃い深緑の部分、この部分は世界の中でも生き物の種類が多いところです。しかも赤い部分は、その生き物たちが開発などで危ない状況になっています。

実は日本も赤くなっていますね。日本は世界の中でも生き物の種類が多いところですが、開発などで動物や植物が住む環境が大きく変化して、中には住めなくなって絶滅するものもいます。



この地図はどうだろう。世界地図がゆがんで見えるね。どうしてだろう。


地図が2枚出てきました。
こちらの緑の地図は、緑の色が濃いほどエネルギーをたくさん使っている国々です。アメリカとかヨーロッパだね。ロシアや日本も割りと多い国です。

下の方の地図は、赤の色が濃いところほどお腹のすいている人が多いところです。食べ物がすべての人に行き渡らないで、栄養状態が悪い国だね。
中には茶色の国もありますね。国民の半分以上が栄養状態のよくない国です。

この2枚の地図でどんなことが分かるかなあ。
下の地図で赤とか黄色の国は、上の地図では白いね。
これはエネルギーをあまり使っていないということを示しているんだよ。

先進国はエネルギーをたくさん使い、たくさんの食べ物を消費しています。
アフリカ、東南アジア、中南米などの開発途上国と呼ばれる国々では、少ないエネルギーや食料で命をつないできました。

もう一度さっきのゆがんだ地図に戻ろう。

実は、この地図は、その国の人が食べるもの、生活に必要なものを、動物や植物などの生き物から得るために、必要な面積を表しています。

たとえば食べ物をつくるには畑やたんぼが必要ですね。
エネルギーをたくさん使って二酸化炭素を出している国は、二酸化炭素を吸収するための森林が必要になります。それらの面積がそれぞれの国ごとにどれだけ必要かを表した地図です。

先ほども触れたように日本という国は食料をたくさん輸入しています。
つまり外国の畑をたくさん使っているわけですね。日本だけでは土地が不足します。輸入に頼らないで日本だけでまかなうとなると日本の面積はこの地図のように拡げなくてはなりません。

さっきの地図では先進国といわれる国は本来の国の形よりも太っているのが分かります。一方、中南米やアフリカの国々は実際よりも細った国の形になっています。

中南米やアフリカの人たちももっと先進国並みの豊かな暮らしをしたいと考えるはずです。そうすると地球全体の陸地が足りなくなるという問題をこの地図は示しているのです。

いまは先進国の人たちがたくさんの土地を使う豊かな暮らしをし、その分開発途上国の人たちがちょっとの土地で我慢をしているから、地球の面積はなんとかもっていますが、もし開発途上国の人たちが私たち日本人と同じ暮らしを始めると地球の陸地は足りるのでしょうか。

〈第四問〉地球の問題
さあ、次の問題は「地球のみんなが私たち日本人と同じような暮らしをするとしたら、地球は何個必要になるか」という問題です。
1- 0.4個  2-1個  3-2.4個


正解はそう3番だね。いま誰かから「アメリカ人なら何個?」って声が出たね。アメリカというのは世界で一番エネルギーを使っている国で、一番二酸化炭素を出している国です。もし、世界の人たちがこのアメリカと同じ生活を始めたら地球はいくつ必要だろうか。大体だけど、5.3個必要だといわれています。


食べ物を大切にしよう

日本に住む私たちが年間に消費する食料は9,000万トンだといわれています。そのうちの5,800万トンは海外から輸入しています。6割以上が輸入なんだね。

もう1つ注目して欲しいのは、9,000万トンの食料のうち、実は1,900万トンは食べられずに捨てられているということ。大体1/5だね。
この中には実際には食べられない骨なども含まれているから、食べられるものだけでいうと500万トンから900万トンが捨てられているといわれています。900万トンとすると全体の1/10が捨てられているということです。

日本人は現在1億3,000万人ですから、900万トンあれば国民の1/10の1,300万人が豊かな食事ができることになります。日本人で1/10ですが、食料に困っているアフリカなどに行けば、1,300万人どころかもっとたくさんの人たちを助けることができるでしょう。

私たちの豊かな暮らしは、世界中の貧しい人たちの我慢と数多くの生き物たちの命によって成り立っています。

皆さん、「いただきます」という言葉を知っていますよね。
「いただきます」という言葉にはいろいろな意味が込められています。
料理をつくってくれた人においしい食事をありがとうという感謝の意味。
魚を海からとってきた漁師さんにありがとうという感謝の意味。
私たちが生きていくために死んでくれたお魚にありがとうという感謝の意味。
「お魚の命を頂戴します」という感謝の言葉だね。

皆さんが食べる食事のほとんどは生き物からできていることは分かってもらえたかな…。私たちが食べているもので生き物でないものは塩くらいしかありません。生き物のかけがえのない命を無駄にしないよう、感謝していただきましょう。

今年の10月、「国連地球生きもの会議」が名古屋で開かれます。
2年に一度開かれる会議ですが、世界のほとんどの国が参加します。
この会議では「地球の生き物をどうやって守っていくか」「地球の生き物を利用するための国際ルールをどう決めるか」という2つが主な議題です。
地球の生き物を大切にすることは、私たちの暮らしを守ることでもあると、少しは分かっていただけたでしょうか。最後までお話しを聞いていただきありがとう。

2010年8月取材


環境省環境調査研修所
http://www.neti.env.go.jp/
環境行政を推進するため、国、地方自治体において環境行政を担当する職員等の能力開発、資質の向上を図るために設けられた研修機関。1971年に環境省の前身である環境庁が設置された直後から研修が始まり、1974年に現在の所沢市の庁舎が竣工した。国際研修棟、実習棟や宿泊棟を持ち、全国から毎年2,000名程度の研修生を受け入れる。

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