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CSRフラッシュ
「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)講演会」から
企業が国際競争に勝ち抜く戦略=ワーク・ライフ・バランス

グローバルな競争に勝ち抜くには差別している余裕はない!?

佐藤:男性の働き方を変える=日本企業の働き方を変えることですが、では、改めて今後の取り組み課題をどのようにお考えですか?

パク:申し上げたように、日本企業における女性の両立支援制度は十分です。ですから、今後の企業は全ての(WLBのための)お金と時間を“男性の両立支援”のためにかけていただきたい。それによって、女性の活用が実現すると思います。

もう一つは、“正規”“非正規”の問題です。多くの企業ではWLBは正社員を対象としていますが、女性の55%は非正規社員で、多くの女性はWLB制度の恩恵を受けられません。そこは大きな課題です。

“敗者復活戦”という考え方が社会に存在することが、とても重要じゃないでしょうか?海外では退職しても元の会社に正社員として復帰することがしやすいです。

海外では “能力による格差”“企業への貢献度によっての格差”であって、正規か非正規かの格差ではありません。正社員を辞めても元に戻れる、“敗者復活戦”がないと、希望を持ちにくい社会になってしまいます。

佐藤:日本では育児制度が充実しているのに、そもそも妊娠・出産した時点で育児制度を享受する前に退職してしまう女性が多い。一つの理由は、育児休業をとって復帰した後に(いくら会社の制度があっても、夫の協力がないなど)仕事と子育てを両立することは結局大変だからと辞めてしまう。

もう一つは、仕事と子育てという“大変なことをやるだけの価値”、つまり、復帰した後に将来の仕事キャリアが開ける可能性がなければ頑張ろうと思えないということだと思います。

パク:今の時代、フルタイム専業主婦というのは実はとても贅沢な“職業”となってしまっています。リーマンショック以降は特にそうですが、今後も経済が復活するといっても、現実的に夫婦が共稼ぎしなければやっていけないという状況があると思いますので、企業もそれを見越して取り組んでいただきたいと思います。

佐藤:人事部門の皆さんが一生懸命取り組みを行っても、企業によってWLBの実践がうまくいっている企業とそうでない企業がある、その違いは何でしょうか?

パク:うまくいっている企業は中小企業/大企業に限らず、トップがどれだけ真剣に取り組んでいるかだと思います。

経営トップの方には、これだけのグローバル競争が厳しい時代に、20世紀と同じ働き方をしていたら、とても国際競争を乗り越えていけない、そう申し上げると理解頂けるのではないでしょうか?

競争力の高い企業は女性の活用率が進んでいるところが多い、そもそも少子化で人口も減少傾向にあるなか、企業には差別などしている余裕はない、能力があって使える人は誰でも使うという状況なわけですから。そのために、どうするかといのがWLBの施策ということだと思いますね。


※このレポートは2009年12月に開催されたイベントでの対談を要約しています。 文責はCSRマガジン編集部にあります。