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CSRフラッシュ
5月8日は世界フェアトレードデー特集 (2)
援助よりも公正な貿易を!
第2回 政府・自治体への浸透
国際シンポジウム「フェアトレードの拡大と深化」から

○討論と質問に答えて


進行役 : 鈴木隆二(ぐらするーつ)
明石:世界の現状と熊本の取り組みを照らし合わせて聞いていました。 熊本市でも市役所、美術館、国際交流会館、市民会館などでフェアトレード・コーヒーを飲めるようになったが、今後それがどのように日本全体に広まるかが課題です。1人の主婦として、フェアトレード・ショップのオーナーとして自分ができることを地道にやっていきます。

松本:フェアトレードはタテにとんがるような事業であってはならないと思います。皆さんの話を聞いて、いろいろな側面を統合していくキャンペーンや運動、世代間、官・民・学に横軸を通すことが大切。サスティナブルという意味で環境問題の課題にも共通するものがあります。

木寺:海外の皆さんの話を聞いていて、非常に実践的で持続可能性を秘めながらもシンプルな運動だと感銘を受けました。
ジャンさんからは政府調達にフェアトレードをというお話もあったが、政府の調達には、いちばん安いものを買わないといけないという納税者からの要望も考慮しなければならない点をご理解ください。

ブルース・クラウザー:日本政府の支援は重要です。
熊本が日本初のフェアトレード・タウンになりたいと、頑固に頑張っているのはうれしい限りです。忍耐強くやるのが一番良いでしょう。横須賀市についても興味深い。
どこにもよい自治体と悪い自治体があります。欧州での消費支出全体のうち16%を公共支出が占めています。ただ、公共支出は慎重にやらないといけません。
フェアトレード・タウンには団結と多様性が大切です。貧困をなくすという目標だけでなく、より良い世界をつくるという目標も必要です。

ジャン・マリ・クリエ:熊本と横須賀の取り組みを興味深く聞きました。
有益なものとする方法はいろいろです。木寺さんの報告を聞くと、日本政府がこれほどオープンなのかと見直しました。
オーストリアには38のフェアトレード・シティがあります。問題を抱えている都市もあります。2つの団体が別々に始めたことも要因です。日本ではこのようなことにならないで欲しいと願っています。あとで調整するのが難しいですから。シンプルな形でアプローチするのが良いでしょう。

鈴木:日本政府は洞爺湖サミットなどでフェアトレード飲料を取り入れたが、日常的に取り入れることはできませんか。

木寺:政府の一部門として外務省が定期的に調達するのはなかなか難しいと思います。EUのように法律的な裏づけがありませんから。
外務省は10月6日の「国際協力の日」前後に東京・日比谷公園で200を超える団体と協力してグローバルフェスタを開催しているが、そこではフェアトレードの飲料も提供しています。

ブルース・クラウザー:ガースタングの場合、30〜40人が集まった集会での決議がきっかけでした。市民の関心の高さで、やがて議会も丸め込まれました。公務員は公のためになることをしないといけません。市民が望むことをやるのです。民主主義だから当然でしょう。

ジャン・マリ・クリエ:欧州はたくさんの国があります。文化、歴史も複雑です。
ある国では法律で規制して欲しいといっても、他の国はあまり気にしません。 フェアトレードもそう。人の力で動かせるというのもあれば、フランスのように政府が介入して規制すべきだという国もあります。
ドイツなどは自分たちの組織でやれるので、独自にやりたいという声が強い。欧州議会がどのように出るか、なにか提言がでるのか待っているところです。

鈴木:日本らいしい“拡大と深化”ができるかは、市民の力、若い人の力にかかっているのでは。

明石:フェアトレード・ショップ「はちどりの木」は学生に運営を任せています。
年配の方の中にはフェアトレードは英語なのでなじめないという声もあるが、若い人には地球が1つであるのと同様に全く違和感がありません。発起人は私の同年代だが、実行は若い人が中心。一緒にやることで理解も広がります。


質問1:流通企業でアンフェアトレードを業務として行っています(笑)。
企業は利益がないと商品の輸入も販売もできません。消費者への啓蒙を行政としてどう考えますか。
木寺:フェアトレードはいろいろな方に理解してもらわないといけません。消費者だけの責任ではありません。企業のCSR活動も関係するでしょう。


質問2:ラベル推進組織で働いています。欧州ではフェアトレードがスタンダードになりつつありますが、グリーン調達に代わるものとしてフェアトレード調達を進められないのでしょうか。
木寺:欧州では新しい方式が決定されました。わが国でも民主党政権がスタートし、税金の使われ方については新しい動きが始まっています。政治が動くには、熱い思いを政治に届ける作業が必要です。


質問3:日本におけるフェアトレード・タウンの他の事例はありませんか。また、日本独自のルールや原則はどのようになっていますか。
明石:熊本以外では北海道や名古屋も積極的です。日本の基準はまだできていません。イギリスの基準にならってつくろうとは思っています。
熊本はイギリスの5つの基準のうち、4つをクリアしています。5つめをクリアするため、行政や市議会・市長とも話し合っているところです。


質問4:名古屋でフェアトレードの運動を進めています。日本でも基準を話し合う必要があるでしょう。私は①フェアトレードとは何かという指針づくり ②ラベル問題の整理 ③国立市や岩手も含めた5つの自治体が基準を決めるという目的で集まる、の3つが大切だと思っています。ラベル問題について明石さんはどのような見解でしょうか。ラベルのあるなしで判断するのか、理念さえ認め合えればよいのか、意見を聞かせてください。
明石:熊本市にあるフェアトレード・ショップは80~90店舗だが、2品目以上のフェアトレード商品を取り扱っていることを基準にしています。ラベルは買う側からすれば信頼につながると思います。一度話し合う必要はあるでしょうね。

渡辺:10年前にグリーン調達法ができたが、フェアトレード法ができるには5~10年掛かるのでは。フェアトレードを進めるために、外務省でフェアトレード商品の使用で一歩踏み出せないでしょうか。

木寺:途上国への資金支援も「国際連帯税」という新しい動きがあります。航空チケットや金融の取引に新しい税を掛けようという動きです。イギリスのブラウン首相が提唱する会議に私も参加しました。現時点で外務省の職員個人が飲むコーヒーの調達にまで私個人は踏み込めません。

※本シンポジウムは、2月27日・28日の2日間、東京経済大学で開催されました。たいへん興味深いシンポジウムであったため、4回に分けてお伝えします。ただし、スペースの都合もあり、参加者の発言は要旨にとどめました。不十分なところもあると思われますが、文責はあくまでも当編集部にあります。