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5月8日は世界フェアトレードデー特集 (2) 援助よりも公正な貿易を! 第2回 政府・自治体への浸透 国際シンポジウム「フェアトレードの拡大と深化」から ![]() | |||||||||
第2回 政府・自治体への浸透![]() 途上国と先進国。南と北の格差が縮まらない。援助や慈善事業も大切だが、途上国の人々との公正な貿易によって自立への歩みを支援するのはどうだろう。フェアトレードは60余年の歴史がありながら、日本ではまだまだ立ち遅れている。先ごろ東京経済大学学術研究センターとフェアトレード学生ネットワーク(FTSN)の主催で行われたフェアトレードをテーマとした国際シンポジウムから、フェアトレードを取り巻く最新の動きについて4回にわたってお伝えしよう。第2回目のテーマは「政府・自治体への浸透」である。 行政を巻き込む、行政が模範を示す○参加パネラーの発言要旨松本義弘さんの発言から 横須賀市がフェアトレード・コーヒーの販売を始めたのは、2004年11月のNPO横須賀国際交流協会の自主事業から。当時の参加者からフェアトレードは「参加型の平和学」であると教えられました。横須賀市としては、「啓発と普及のための側面支援」と考えています。 フェアトレード啓発を平和啓発と連動させて2008年からは「市民平和のつどい」のテーマにフェアトレードを設定。会場には有料のコーヒーブースを設けました。次世代育成事業の国際ユースフォーラムでは高校生が外国語でスピーチする機会を提供、フェアトレードをテーマに設定しているが、まだ希望者は少ないのが実状。 横須賀市としては、できることから始めることを信条としており、市の4つの国際式典のレセプションでフェアトレード・コーヒーを提供することからスタート。市の集客イベントへのフェアトレード・コーヒーの提供を増やしています。ケータリング事業者の1社からは、今後ケータリングで使用するコーヒーはすべてフェアトレード製品に切り替えるといううれしい知らせを受けました。
明石祥子さんの発言から 熊本市は人口70万人の地方都市。私は熊本城の隣で1993年からフェアトレードの専門ショップをやっています。 きっかけはサフィアさんの家を訪ね、地方に住む主婦の私でもできると思ったから。当時、地方にはフェアトレードは浸透していなかったが、「やめない」ことを目標に始めました。 現在は、熊本市を日本初のフェトレード・シティにしたいというのが目標です。熊本市長をフェトレードファッションショーに招待し、ファッションショーのモデルになってもらったり、熊本県知事や市議会議員も巻き込んでフェアトレード・シティに向けた活動を積み上げています。 2005年には河原町に学生たちと一緒にフェアトレード・ショップ「はちどりの木」をオープンしました。2006年にはイギリスのフェアトレード・タウンを見学し、帰ってから報告会も開催。国内・海外との交流を深め、フェアトレード・シティ推進委員会を設立し、約200人の発起人のもと1万人署名運動を展開中です。
ジャン・マリ・クリエさんの発言から ヨーロッパはフェアトレードで60年の歴史を持っています。本格的に発展したのは1970年代から。オランダ、ドイツ、オーストリア、スイスなどに広がり、2007年の時点で33カ国に3,200カ所のワールドショップと63,600店のスーパーマーケットが参加して、だれもが手軽にフェアトレード産品を買えるようになりました。 2007年から2008年の1年間で28%の売上拡大が。 問題はさまざまなラベルやロゴが氾濫していることと、一部で認証マークを付けないで売っているものがあること。国によって法律で規制すべきだという声もあります。私は多様な活動があるからこそ強みが現れると考えています。一番の課題は、成長ではなく生産者から喜ばれる仕組みをいかにつくるかにあります。
木寺昌人さんの発言から フェアトレードには3つの意義が。グローバル化をよい形で利用していること、政策提言としてのインパクト、官民連携の新しい形の提示の3つです。 日本政府は、毎年の「世界トレード・デー」を後援し、さらにアフリカ諸国との連携に向けた第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)およびG8洞爺湖サミットにおいてもフェアトレード飲料を使用しました。また、日本政府は途上国に対する開発イニシアティブを発表、途上国における生産・流通・輸出を後押ししています。 制度面では、国連が定める後発開発途上国を対象とした無税無枠措置といった形での途上国の日本市場へのアクセスの改善に努力。一般の途上国に対しても一般特恵関税制度を設けています。日本発の地域経済振興策としてはタイなどで成功を収めている「一村一品」運動があります。 私たちは引き続き、知恵を出し合っていきます。
ブルース・クラウザーさんの発言から 世界初のフェアトレード・タウン、ガースタングは人口5,000の小さな町です。 現在、イギリスだけで460、世界全体では19カ国760の町がフェアトレード・タウンを名乗っています。 私たちの町でフェアトレードを推進したのは、オックスファム・グループとそれを支えるオックスファム・サポーター。オックスファムとは、世界の貧困層が貧困から抜け出せるような支援を目指した民間団体で、先進国が発展途上国からの物資を不当に安く手に入れることのない社会を目指しています。 この理念はガースタング市民に受け入れられ、ガースタングでのフェアトレード・マークの認知率は70%を突破し、フェアトレード製品の売上高は飛躍的に増大しました。 さらに、西アフリカのココア農場と公正貿易の理念に基づく取引を実現し、ガーナのニュー・コフォリデュアと姉妹都市関係を結ぶまでになりました。 ガースタングでの活動が評判になったため、英国フェアトレード財団は「フェアトレード・タウンの基準」と「活動ガイドライン」を作成しました。ガイドラインはFLO(国際フェアトレード・ラベル機構)に加盟しているいくつかのフェアトレード・タウン認証団体の話し合いで決定されたものです。 ある町(あるいは地域)がフェアトレードを実施していると認められるためには、 (1)その町の議会がフェアトレードを支持する決議を出していること。また、議会や付属する食堂で出される紅茶とコーヒーは、フェアトレード製品を使用すること。 (2)少なくとも2種類のフェアトレード製品を入手できる小売店と、飲食できるカフェ等があること。 (3)多数の者が利用するいくつかの施設で、フェアトレード製品が使用されていること。例えば不動産業者、美容院、教会、学校など。 (4)メディア報道を使って、住民の活動への関心を高めること。 (5)そのフェアトレード・タウンを継続的に確実に維持するため、フェアトレード推進委員会をつくること、など5つの基準を満たさなければなりません。
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