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CSRフラッシュ
5月8日は世界フェアトレードデー特集 (3)
援助よりも公正な貿易を!
第3回 社会への浸透
国際シンポジウム「フェアトレードの拡大と深化」から

○討論と質問に答えて


進行役 : 小松豊明(クラフトリンク)
アメリカとカナダの「フェアトレード連盟(FTF)」には250の団体が参加しています。うち輸入業者は65%、小売業者が35%。輸入業者の10%は農業関係者です。

私たちの組織のパンフレットには9つの原則が書かれています。ただ、お店に来た消費者に対しては10秒ぐらいでフェアトレードの説明ができないといけせん。特に商品がお店に着くまでのプロセスは大切。宅配で買える情報も載せています。

昔は、NPOは宗教や慈善団体と同じように、人々の情けでやっている団体だと誤解されていました。いまはさまざまな選択肢の中で、選ばれるだけの利便性と力を持たないといけません。

人々がフェアトレード商品と出会えるきっかけは無数にあります。バレンタィンデー、アースデー、母の日、父の日、結婚式など。ただ、フェアトレードの商品も味が良かったり、衣料品ならおしゃれだったり、ということは必要でしょう。アメリカでは健全な競争が前提です。フェアトレードには世界中に仲間があり、いま乗り出さないと時代遅れになるといった空気づくりも大切です。

小松:日本には組織のネットワークがありません。FTFはいつごろどのようにしてできたのでしょうか。

カルメン・イエツィ:1979年にインフォーマルに始まり、1994年に正式に発足しました。提携する機関はWFTOとなっています。

ジャン・マリ・クリエ:欧州はフェアトレードのグローバルの売上の2/3を占めています。フェアトレードは人々に参加の方法を提示することが大切。署名すると5秒掛かるが、1年に1回フェアトレード産品を買うのにそんな時間は掛かりません。また、深く関わりたい人には、いろいろな参加の形態もあります。

私たちのところでは年間8万人のボランティアが働いているが、1週間で半日の人が大半です。仕事は店番をする、在庫管理をするなどさまざま。この8万人は、家に帰れば自分の活動を家族や友人にも話します。また、フェアトレードのショップにも家族や友人を連れてきます。ベルギーなどは100%がボランティアで支えられています。オランダなどもほぼ同様です。

欧州では4つの団体がフェアトレードをけん引しています。
1つは教会。日曜日にフェアトレード商品を販売する教会は珍しくありません。
2つめはNGO。さまざまなNGOの役割をまとめるリーダーズフォーラムがフェアトレードのラベル機関にまで影響を及ぼしています。
3つめは教師と学生。子どもを対象としたワークショップや教師のワークショップがフェアトレードの啓発活動を行っています。
4つめは有機栽培農家。オーストリアだけで2万3千の農家が有機連盟を形成。有機栽培とフェアトレードのリンクができています。こうした農家は途上国の農家が有機栽培に挑戦する苦労も知っています。 こうした強みを集めて連携していくことが大切。また、生協や労働組合の役割も大きいと思います。


質問1:私の教え子が大学を休学してカナダのフェアトレード・ショップでボランティアをしたのだが、ボランティアのほとんどが裕福な中高年の女性で、お客様も同じ層の人がほとんどと聞きました。日本とかなり社会的な背景が違うと思うのですが。
小松:日本の生協は70〜80年代から大きくなって、現在40代後半から50代、60代が核となっています。フェアトレードに関心のある層は環境問題に関心を持つ層と共通項があるのではないでしょうか。地域の中で事業としてやるのは厳しくなっているが、運動と事業を同じ考え方の人と団結するだけでなく、主張の異なる人とも連携することが大切です。


質問2:欧米の途上国から来ている不法移民の人たちはフェアトレードとどの程度関わりがありますか。そういう人たちを巻き込もうとする試みはあるのでしょうか。
カルメン・イエツィ:アメリカやカナダへの移民は、生活の基盤をつくったら自分たちが住む国に貢献しようという意識です。ただ、移民となってサバイバルしている時期にフェアトレードに目を向けるまでには至っていません。私たちもアフリカ系やアジア系のニ世に積極的にアプローチしています。

ジャン・マリ・クリエ:基本的には同じ意見です。欧州のイギリス、フランス、ベルギーなどはアフリカに大きな植民地を持っていました。かつての植民地の人たちがたくさん来ています。ドイツやオーストリアは移民が少ないと思います。チリから来た人たちが、小さな輸入団体をつくってフェアトレードを行っているケースがあります。

ブルース・クラウザー:かつて植民地であったガーナのココア農家とは協力関係があります。私たちのイベントにも参加してもらいました。彼らに質問をするとフェアトレードの重要性を初めは分からなかったと答えました。体験によって次第に分かるようになったというのです。ノルウェーでは北と南のつながりを使って有益な活動を行っています。


質問3:普及には商品のストーリー性が大切。生産者の顔が見えるような映像があると、私だったら買いたくなるのですが。
胤森:生産者の顔が見えることは大切。まだ努力が足りないと思います。
商品にメッセージタグを付けるとか、棚に生産者の写真やカタログ、ストーリーなどが必要だが、情報が不足していることも事実です。WEBなどを使った活用も進めたいと思います。フェアトレードデーなどでは直接日本に来て話してもらう機会はつくっているが、全員はなかなか難しいのが実態。


質問4:森下さんは学生のネットワークの代表だが、東京は本社も多いし、大学生協などもある。働きかけをしたらどうでしょうか。
森下:フェアトレード商品を入れて欲しいという依頼は大学生協のほか数社にしました。キャンペーンでは入っても、なかなか継続的に続かないのです。食品は品質維持の問題もあります。高校に出張授業をしたいと考えています。


質問5:アジアからたくさんの学生が日本に来ており、政府機関でも働いています。だが、フェアトレードに対する認識には大きな差があります。
ジャン・マリ・クリエ:フェアトレードに対する認識は地域によって大きく異なります。
欧州でも10数年前まではそれぞれ別々にやってきました。ラベルの統一で統一した運動も始まった。アジアの場合、各国政府だけでなく学生たちもフェアトレードを知らないのではないでしょうか。小さな生産者の問題だと政府が取り扱わぬケースもあります。

クラリベル・ダビッド:アジアでもフェアトレードに対する認識は高まっています。
フィリピンではフェアトレードのアライアンスがあり、フィリピン政府は正義に向けた行動だとしています。2005年には香港でWTOの閣僚会議があり、小規模農家の参加を募りました。公正な貿易のイニシアチブとしての認識が高まっています。

小松:多様性を大切にしながら団結が大切。より多くの人々にアプローチを続けていきましょう。


※本シンポジウムは、2月27日・28日の2日間、東京経済大学で開催されました。たいへん興味深いシンポジウムであったため、4回に分けてお伝えします。ただし、スペースの都合もあり、参加者の発言は要旨にとどめました。不十分なところもあると思われますが、文責はあくまでも当編集部にあります。