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CSRフラッシュ
5月8日は世界フェアトレードデー特集 (4)
援助よりも公正な貿易を!
第4回 フェアトレードの深化と拡大
国際シンポジウム「フェアトレードの拡大と深化」から


質問1:長坂先生に質問。日本のフェアトレード団体には1つはFLO、1つはWFTO、そしてもう1つはその他の3つのタイプに分かれるとのことですが、単純にフェアトレード団体と呼ばれたくないところもあります。いまのままでフェアトレードを拡大・深化させると市民は混乱しないでしょうか。
長坂:団結と多様性が今回のテーマだと思う。
私個人は3つめがあってもよいし、それにふさわしいネーミングをつけるのもよいと考えています。事実、日本のフェアトレード運動を考えるとその他の団体で立派な活動をしているところもあります。それらの団体もWFTOがつくった理念を参考にしつつ、独自性も出したいという声もあるのです。
フェアトレード以外の名称を使うかどうかはその人たちが考えるべきこと。名称が異なるから一緒にやれないということではないと思います。


質問2:私はフェアトレードの小さなカフェをやっています。ジャン・マリ・クリエさんのお話でワールドショップが3倍になったという話があったが、3倍になった理由が分かったら教えてください。
ジャン・マリ・クリエ:重要なことはワールドショップが慈善活動中心からどのようにしてアプローチを変えたかでしょう。90年代まではチャリティーに重点が置かれていたが、ショップに中心を置くようになってからは、大勢のボランティアが関わることで利益も出るようになり、フェアトレードの製品にも目が向けられるようになりました。
つまり魅力的なショップが広がることで3倍という数字の達成ができたのです。


質問3:名古屋推進委員会で活動しているメンバーだが、カルメンさんに。2〜3年前の内閣府の調査ではフェアトレードを知っていると答えた人が14%、内容までよく知っていると答えた人が2%でした。こんな中で今後の10年で深化と拡大を果たすにはどうすればよいでしょうか。
カルメン・イエツィ:フェアトレードには複雑なニュアンスがあります。複雑なものを複雑に説明するのは賢明ではありません。
説明には、「透明性」が必要だし、みんなと同じように取り扱われているという「パートナーシップ」が大切です。みんなが共鳴できる言葉、メッセージを考えてみてはいかがでしょう。


質問4:サファイアさんの話の中で、政府から資金が提供されているというニュアンスの発言があったが、助成金と投資のどちらでしょうか。
イアン・ブレットマン:フェアトレードの拡大には資金が必要です。
欧州の政府は、損失の出るものに投資を認めていません。英国では120万ポンドの助成を3年間だけ約束しています。ただし、フェアトレードのしっかりした団体で、説明責任を果たせるということが前提です。FLOも含まれています。
独自に資金を募るには投資しかありません。それらは社会インフラの整備、たとえば安全な飲料水や地域の集会場などに使われています。


質問5:ラベルには批判もあります。ラベルの認証団体は生産者の労働環境がよくなっているのかなど、きちんと確認がなされているのでしょうか。もし、英国の市民からクレームがあった場合どのように説明責任を果たしているのでしょうか。
イアン・ブレットマン:FLOの場合、認証はステークホルダーを基盤にしています。
生産者の代表も参加してベストプラクティスを追求しています。
ラベルで信頼を保証してもらうにはステークホルダーの参加が必要です。現状は消費者の参加が弱いという課題があります。ただし、フェアトレードのラベルはISOなどとは違います。ISOには人の顔が全く見えないという問題点があります。


質問6:有機農業に関わっています。ラベルの認証に注目しているのだが、有機農業の産品の場合、各国レベルの認証となっています。日本の場合は「有機JAS」などだが、小さな農業団体などにはコストが掛かりすぎます。PSG(参加型認証)もあるが、制度化の方向と別の動きはどのように見たらよいでしょうか。
クラリベル・ダヴィッド:確かに小規模農家には認証は大きな負担になっています。
コーヒー豆の認証には1つのコンテナ分の値段ほど掛かっています。この問題ではFLOもWFTOもコストを小さくするような努力をすべきだと思います。当事者たちがラベル保証に関われるようにすることが需要なのです。

※本シンポジウムは、2月27日・28日の2日間、東京経済大学で開催されました。 たいへん興味深いシンポジウムであったため、4回に分けてお伝えします。ただし、スペースの都合もあり、参加者の発言は要旨にとどめました。不十分なところもあると思われますが、文責はあくまでも当編集部にあります。