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CSRフラッシュ
国際連帯税を推進する市民の会(アシスト)シンポジウムから
今こそ国際連帯税の実現を!

税金を担う力のある人たちに課税を


佐藤:私たちは国際連帯税キャンペーンネットワークというのをアジア・太平洋地区で立ち上げました。以下は私たちの活動です。

●当面の主な活動について
①情報の共有化
②ワークショップやセミナーの組織
③国際労働運動との協同
④各国のナショナルセンターへのロビー活動
⑤政府や議会メンバーに対するロビー活動
⑥NGOとの連携
⑦出版活動
⑧メディア対策
●重要なイベントについて
①ADB(アジア開発銀行)年次総会におけるワークショップ (3月 ウズベキスタン)
②ITUC(国際労働組合連合)の国際会議(6月 カナダ・バンクーバー)
③QPS(質の高い公共サービス)のワークショップ(9月 インドネシア・バリ)
④国連ミレニアム開発目標のレビューサミット(9月 ニューヨーク)
⑤QPS(質の高い公共サービス)の世界会議(10月 ジュネーブ)
⑥通信電話、金融、郵便などの労組の国際会議(11月 長崎)
⑦国際連帯税リーディンググループの会議(11月 日本)


国際連帯税の中身で考えていることを一言だけ申し上げておきます。

アメリカでリーマンショックが起きたときのニュースはご覧になったと思うが、アメリカの皆さんはウォールストリートからメインストリートという言い方をしています。カジノ経済から実物経済へということでしょうか。ばくちを止めてまともに働いている人のためにお金を使いなさいということです。分かりやすいメッセージです。

(金融界には)税金を担う力=担税力があると思います。そこに課税がされていないのが一番の欠点だと思います。導入というと金融界の人が反対するのですが、私はこの仕組みはだれも損をしない良い仕組みだと思います。途上国の開発にこの資金を使うということは持続可能な社会づくりの一歩でもあります。


国際連帯で感染症爆発を押さえ込む


狩野:世界が小さくなるにつれ、対岸の火事が対岸の火事にとどまらず、自分の家が火事になるリスクが大きくなってきています。感染症には国境はありません。

結核に例をとりますと、結核は本来20ドルの薬と6ヵ月の治療期間で治る結核菌が引き起こす感染症なのです。しかし、薬剤耐性を持った、つまり複数の種類の薬が効かない結核が世界中で増加しています。これを超多剤耐性結核といいますが、WHOの発表によりますと、2010年3月時点で58カ国で症例が報告されています。残念ながら、マスコミなどで報道されていないようですが、日本でも見つかっています。結核は国境を越える感染症のほんの1例で、豚インフルエンザ、SARS(重症急性呼吸器症候群)、コレラ、赤痢、ペスト、ジフテリア、マラリア(地球温暖化による日本への懸念)、デング熱、黄熱病、STD(性感染症)など。細菌、ウイルス、寄生虫などは国籍、年齢、性別、職業、お金のあるなし、持病のあるなしを選ばず襲ってきます。

私たちがたまたま健康でいられるのも今日限りかもしれません。いわゆる国際化の負の部分が安全で安心とされる日本国内にも急激に入り込んできています。

ただ1つの有効な対策は、日本が鎖国することでもなく、皆さんが見ざる聞かざるを決め込むことでもなく、問題そのものを解決すること、つまり対岸の火事を消すことだと思います。

国際化の負の部分へは、国際的活動・国際的取引に課税し、それを国際課題に充てるという制度が必要です。

つまり、連帯税は自分たちの税、自分たちの今日の生活を維持するための税、国内での感染症爆発など海外由来の危機を事前に回避する税であり、そこをもっと国民に訴えていったらいいのではないでしょうか。


議員への働き掛けを強め、政府を動かしていく


金子:今年は国際連帯税にとって大事な年です。いろいろな分野が取り組み、それを相互に響きあって大きなうねりをつくっていかなければなりません。

1つは議員への働き掛けを強め、政府を動かしていくこと。労働組合とか生協とか、NGOとかに広めていくこと。メディアやテレビに登場するように仕掛けていくことなどが大切です。また、議員から政府に働きかけも必要です。

私たちがこの問題に取り組み始めた2005年や2006年当時、財務省にいくと「国際連帯税なんて問題外」という対応でした。考える価値もないというのです。

2008年に議員連盟ができてその会長に自民党の税調の会長がなると、役所の対応が変わってきました。昨年、寺島委員会ができると各省の審議官クラスがオブザーバーで参加しました。この間、各省の課長クラスが来て、必要な報告をして、意見を聞いて帰るという状況です。さらに政権交代して、これまで議員連盟の中心的メンバーであった峰崎直樹参議院議員が財務副大臣になりましたが、彼は当然理解があります。昨年まとめられた税制大綱にも国際連帯税をしっかり入れていただきました。政府の税調の課題として書き込まれたわけです。

最近になってこれを進めるために国際課税の小委員会をつくりました。ここでは国家間の租税条約、タックスヘイブンの問題も取り上げると思います。7月、参議院の選挙ですが、各党がマニフェストで盛り込むかどうかに注目です。11月には国際連帯税リーディンググループの会議が日本で開かれます。

司会:皆さんのお手元に紙とマジックを準備しました。国際連帯税とはなにかを言葉にしていただけませんか。


超国家税


金子:「超国家税」。税というのは国家主権そのもの。19世紀後半から国民国家が生まれて、国家主権のもとで税が集められ、国内の公共的なものに使われていくわけです。国際連帯税は世界のために国家主権を超えて使う新しい税です。経済は国境を超えてグローバルに展開されていますし、企業も国境を越えて活動をしています。ところが、政治の世界、政府は一国単位です。このように経済と政治がずれてきていると思います。


日本人が地球市民になるための第一歩


狩野:「日本人が地球市民になるための第一歩」。今の日本人は、江戸時代末、いわゆる幕末の藩の住人のようなものです。明治政府が開国をして日本人は意識の開国をしたように、つまり藩が廃止され日本国という意識を持ったように、日本という狭い国境を越えて地球市民という意識を持つ必要があります。これから何年掛かるか分かりませんが、必ず持つようになるでしょう。ちなみに、いわゆる明治維新(1868年)は、黒船来航(1853年)から丁度15年目でした。


国際連帯税でインターナショナルミニマムを


佐藤:「国際連帯税でインターナショナルミニマムを」。国内ではナショナルミニマムをと言いますが、今の時代は世界とつながっています。ナショナルミニマムだけでは物事は解決しません。インターナショナルミニマムを考える時代です。お金はないわけではなく、有効に使われていないだけだと私は思います。

アチェの津波の現場とか、パキスタンで結核病棟に行きましたが、一枚の板の上に寝ているだけです。毛布もありません。看板にはホスピタルと書いてありますが、私はホスピスだと思いました。ただ厄介払いされているだけなのです。

地震には膨大な資金が集まります。ところが、慢性的な貧困という問題にはお金は集まりません。神戸の地震にも行きましたが、わずか1㎞先にいる人たちには支援は関係のない世界です。アチェのときもそうでした。となりの村の人には関係ないのです。途上国といっても物凄い金持ちはいますが、貧しい人たちに手を差し伸べません。


想像力は地球規模。行動は身近なところから


池田:「想像力は地球規模。行動は身近なところから」。私たちの財布からちょっと出ていくのが連帯税だと思います。
今日は物凄く濃密な勉強ができました。今日は専門の皆さんのお話が聞けて得した気分になっています。皆さん、政策提言能力がありますね。永田町に出かけていくことをロビングといいますが、皆さんロビングの足腰が強いのですね。今日は私もすごく希望を持ちました。一緒にやっていきたいと思いました。


国際連帯税とは地球市民税


小西:
「国際連帯税とは地球市民税」。私たちは国にも市町村にも税金を払っています。地球に住んでいるので地球にも税金を払うべきだと思っています。ロビングというのは決してきれいごとばかりではありません。太陽光にしろ、風力にしろ、地球投資ですが、こうしたものに大きなお金が動けばビジネスにもプラスです。先進国と途上国がWIN-WINの関係にもなれると思います。


“不可欠である”


稲場:
「“不可欠である”」。非常に単純かも知れませんが、「これがないと困る」と思います。
私は以前から狩野さんと感染症の問題に取り組んでいます。私の方はHIVエイズの問題に取り組んでいるのですが、世界エイズ・結核・マラリア対策基金というのがあります。世界からお金を集めて、途上国に迅速にお金を届けていくという仕事です。2011年から2013年までに世界全体で2兆円が必要だといわれています。援助として2兆円を1つの団体に渡すのは難しいのです。日本の場合は二国間援助が主体で、多国間援助は少ないのですが、外務省に努力いただいて今年は250億円を出してもらえるようになりました。昨年は200億円でした。2011年から2013年までいくら出せるかという会議が10月にあります。日本政府だけでなく、各国政府も頭を抱えています。せいぜい1兆円ぐらいだろうと。国際連帯税があればと思いました。


※このシンポジウムは、4月24日に青山学院大学で開催された国際連帯税を推進する市民の会(アシスト)主催のシンポジウムの模様をお届けしています。なお、誌面の関係で発言の一部を要約しております。文責は当編集部にあります。