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2009年1月、国内保険会社で初の「世界で最も持続可能な100社」に選出
本業に活かすNGO/NPOとの協働と、損保ジャパンらしさの追求
株式会社損害保険ジャパン
コーポレートコミュニケーション企画部 CSR・環境推進室 課長 福渡 潔
コーポレートコミュニケーション企画部 CSR・環境推進室 主任 有光 由香



福渡氏

リスクマネジメントの視点から、地球環境、さらにCSRへ

Q:2008年度「世界で最も持続可能な100社」(以下:「グローバル100」)選出では金融業界の先駆けとして本業を通じた地球環境問題等への取り組みが評価されました。
福渡 今回の受賞は「サスティナブルデベロップメント(持続可能な発展)に対する取り組みが、本業の事業戦略の中に不可分なものとして統合化されている」ことが一番の要因だったと思います
振り返りますと、そもそも損害保険会社はお客さまのリスクに対してさまざまなアプローチでソリューションを提供する会社です。お客さまが地球温暖化や環境リスクを受ける可能性について研究・調査を行うリスクマネジメント室を1990年に設置したのが当社の第1ステップでした。当時の損害保険業界は事業の自由化前で保険料など商品も一律でした。会社を差別化する観点からも環境問題への取り組みが重要だという認識が経営トップにもありました。

Q:海外のサミットで直接にNGO/NPOと接したことが、大きな転機と伺っています。
福渡 1992年に当時の社長がブラジルのリオで開催された地球環境サミットに出席してNPO/NGOの台頭に非常に衝撃を受け、日本でも行政・企業だけでなくNPO/NGOとの協働が非常に重要だと強く認識したことが、より幅広い視点で地球環境問題に取り組むきっかけとなりました。すぐに地球環境室を新設し、全員参加、地道・継続、自主性」を掲げて全社的な活動を目指しました。

1997年には、金融機関で初めて環境マネジメントシステムISO14000を取得し、環境ガバナンス体制を構築しました。
(注1) 環境をテーマとした商品開発の例
●エコファンド「ぶなの森」:
環境に配慮した事業活動を行う企業への投資信託商品。
日本へのSRI導入初年度とされる1999年に開発。
●天候デリバティブ:気候変動への適応対策にもなる金融派生商品。2005年には太陽光発電システム設置企業との共同開発により、システムを購入する消費者に対して異常気象により日照時間が少ない場合の保証金を支払うスキームをスタートした。

Q:1993年から環境公開講座を開始するなど、早くから環境教育にも力を入れています。

福渡 1990年 代以降、気候変動の影響とされる自然災害の増加と比例してお支払いする保険金が増加するなど、環境問題は保険会社の経営に直接的に影響しています。保険会 社として環境問題に対して何ができるか検討していた際、私たちは工場をもたず、自らの事業活動による温室効果ガスの抑制・削減が社会に大きなインパクトを 与えにくい。メーカーではない私たちにとって、ものづくりではなく人づくりがポイントになる。したがって、当社のプライオリテイは環境教育〜環境問題を理 解する方々を増やし、個人の活動がさらに社会に広げる〜という結論になりました。

1993年から開始した「市民のための環境公開講座」は損保ジャパン環境財団が活動を引継ぎ、現在財団では環境NPOに学生・大学院生をインターンとして派遣して実際の活動を体験し学んでいただく「CSO(Civil Society Organization)ラーニング制度」も設けています。

Q:こうした地球環境問題への取り組みが徐々にCSR活動へと発展したわけですね。
福渡 2003年にCSR・環境推進室が設置され、以来環境だけでなくCSRにもテーマを拡げたマネジメントシステムづくりに着手しました。2006年には損保ジャパングループのCSR「4つの重点課題」を掲げ取り組みの方向性を明確にしました。
1. 気候変動における『適応と緩和』」は当社自身によるCO2削減など環境リスクを緩和すると同時に、気候変動への適応策の一つとしてリスクファイナンスの提供やCDM関連プロジェクトへの投融資など新しい保険・金融サービスに注力していく。「2. 安全・安心へのリスクマネジメント」はまさしく保険会社の本業を通じた取り組みです。「3. CSR金融」はエコファンドやSRIファンドなどグループ会社を含む総合金融サービスを通じた貢献。最後が全国約643の営業拠点の現場で社員がそれぞれの地域で代理店さんなどと自主的・主体的なアイデアを出し合い活動する「4. 地域における協働の促進」です。