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恵比寿ガーデンプレイス内、本社ビル前のサッポロ広場
週1回の作業風景は社員も見かける機会が多く、雑草を採った後の景観を実感できることもプロジェクトへの評価につながった。雨天でも合羽を着て作業を続ける様子を見て、役員からの差し入れがあったことも。


Q:実際にプロジェクトをスタートされてから、社内外の反応はいかがでしたか?
堀内 最初どうしても社内では事故などを心配する声もあったわけですが、スタートしてからの方が楽というと変ですが、実際に働いているところを見てもらったことが、言葉よりも大きな説得力がありました。そもそも、お願いする社会福祉団体にはきちんと条件――普段の生活を一人でできる、例えば公共機関も利用できるような方に限定。一方で年齢・性別は一切制限していません――をお願いしていましたし、1日の作業フローも含めて、きちんとルールを決めて合意していました。実際の作業風景を見れば心配ないことが分かりますし、しかも雑草を抜いた後の庭というのは明らかにキレイになります。成果を目で確認して、やって もらってよかったなという風に実感してもらえたことも大きいと思います。
 一 緒に来てくださる職員の方にも――どうしても障がい者の仕事というと今までは内職など室内の仕事が多いですから――屋外に出て企業の人間とふれあいながら、きちんと仕事としてお金をもらうということを経験いただいて「こういうやり方もあるんだ」と思っていただけたのかなと。社会福祉団体の家族会で直接ご 報告したり、千葉工場へ約90名の家族会の方が見学にお見えいただいたりと、地域での交流も続いています。
 さらに言うと、緑地管理の仕事は非常に幅が広くて、プロでなくては絶対にできない分野もありますが、一方で緑地管理会社でも人手不足の面があり、定期的に細かい雑草を抜いたり――本当はそういった地味な作業が景観の美しさを維持するのに非常に重要なのですが――“労働集約的な仕事”には手が廻りにくいのが現状です。今回のプロジェクトを通じて、緑地管理という面でも、こういうやり方があるという(企業・緑地会社側の)発見もあったと思います

Q:これからのテーマは何ですか?
堀内 緑地管理では、私どもの製造現場がいくつもありますので、同じようなアプローチができる機会を増やしていきたいと思います。一方で、やはり障がい者の中には、外の仕事がつらいという方もいらっしゃいます。例えば清掃のお仕事とか、サービス部門での仕事など、企業が直接雇用をいきなり増やすことは大変でも、業務委託という形であれば緑地管理以外にもお願いできることはもっとたくさんあるかもしれない、そうすれば障がい者の就労機会の可能性が広がるのかな と思いますね。

Q:米国における障がい者雇用の現状は日本とかなり違うのでしょうか?
堀内 米国ではfederal government(国の行政)など公共機関に携わる担当者は率先してNPOな どを通じて障がい者に仕事を発注しなければならないという法律があります。一方、企業に対しては法定雇用率のような促進法はないのですが、基本に“障がいを理由に学業や就業の機会を差別してはならない”という確固とした法律があります。そのため、意識が高い企業は積極的に障がい者を雇用していますし、障がい者向け就職説明会などもよくあります。職種に関しては、私がインターンとして働いたNPOは障がい者が約1,800名、スタッフがパートタイムを入れて約1,500名と国内でも大規模な施設でしたが、就労支援として企業と業務委託契約を結ぶ際、障がい者にとって最も需要がある仕事はビルの清掃業務でした。それ以外にも、米国ではサービス業やレストランなどでの雇用も多いように感じます。

Q:CSR活動のテーマの一つは継続性だと思います。経済環境が不安定な状況にありますが、今回のプロジェクトについては、期間についてどのような方針なのでしょうか?
堀内 当社のCSRは、地域の皆さまとコミュニケーションを図りながら継続的に実質的に出来る活動を推進していくことが基本方針の一つです。今回の緑地管理費用は、元々各事業場で予算計上していた分を活用しています。実際のところ、このプロジェクトのための新たな予算分はそれほど大きなものではなく――もしかしたら、私の人件費が一番高いぐらいですが、現在はプロジェクト専任ではありませんので――会社としてCSR活動自体の予算を確保する限り、今回の緑地管理プロジェクトの継続性も担保されると考えています。

Q: CSRで何をしたら良いのか、迷っている企業担当者も多いと思います。今回のプロジェクトでは“やりたいという気持ち”が一番の推進力だったように感じますが。
堀内 確かに最初の一歩を誰かが推し進める部分はあると思いますが、“企業の経営戦略や歴史とつながっているかどうか”も重要なポイントだと思います。今回のプロジェクトが実現したのも、ビール会社として当社が原料や自然へのこだわりを持っていたこと、そのため経営陣や社内において根底の部分で植物や園芸に 対する理解があったことが、非常に大きかったと思います。その企業の活動との親和性がなければ、単に社会に役立つからやりたいという思いだけでは、実現は 難しかったでしょう。

2009年6月取材

サッポロビール株式会社 CSRレポート2009
http://www.sapporoholdings.jp/ecology/2009/pdf/index.html

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サッポロビールは、本業を通じた自然環境への取り組みの一環として、カーボンフットプリント(Carbon Footprint)――商品が製造・流通・廃棄にいたるなかで排出したCO2の総量を、重量で算出し商品に表示するしくみ――に取り組んでいます。経済産業省による「カーボンフットプリント制度の実用化・普及推進研究会」に参加し、実用的ルールづくりに協力するほか、2009年2月には世界で初めてカーボンフットプリントを表示した「サッポロ生ビール黒ラベル350 ml缶」を地域・期間限定で販売しました。