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“自分らしさ”を追求した社会貢献活動
「ソニー・サイエンスプログラム」夏休みワークショップ
FeliCaの技術を知ろう「非接触ICカード手づくり実験」レポート



 ソニー株式会社が、社会貢献活動50周年の記念イベントとして小中学生の子どもたちに向けて開催している夏休みワークショップ「ソニー・サイエンスプログラム」。全11回のうち、2009年8月8日(土)に行われた「非接触ICカード手づくり実験」ワークショップを取材した。

社内公募のアイデアをもとにボランティア社員と作るワークショップ
 この日の参加者は小学4年生から6年生までを対象とした親子20組、40名。最先端のICカードを自分で作り、ソニーが開発したFeliCa(フェリカ)技術を体験できるとあって、定員に対して10倍近い申し込みがあった。あるお母さんは「科学好きの息子は普段からSuicaやPASMOにも興味津々、ぜひと思って応募しました」とのこと。男の子が大半を占めるなか、お父さんと早くから受付をすませた女の子の姿も。夏休み中の週末のせいか---それとも科学と工作というテーマのせいか---半数以上の保護者の方が父親というのも印象的だ。

 「みんな、非接触ICカードを知ってるかな?SuicaやPASMO、携帯電話、こうした改札口などにカードをかざすだけで使える非接触ICカードの中には、ソニーが開発したFeliCaという技術が使われています。では早速、カードを作り始めようと思います!」13時から約2時間のワークショップは、ナビゲーターの中村さんによる“第1部:マイフェリカカードをつくろう”から始まった。

 今回の記念イベントでは初めて社内公募によるワークショップをいくつか実施したが、この日の「非接触ICカード手づくり実験」もその一つ。3部構成の実験を壇上から説明する3人の“ナビゲーター”はいずれも技術開発の現場中枢で働く社員たちだ。ほかにも会場内のテーブルごとには、無給でボランティアスタッフを買って出た社員たちが“技術・安全指南役”としてついている。

参加者からは「楽しい!」「いろんな科学館など行きますが、製品を使って身近な生活を感じられるのがソニーらしいですよね」などの声。「趣味がエレキギターでいつも配線をいじってるんで、見ると自分がやりたくなっちゃって。」というお父さんも。

「まずは、エナメル線を巻きます。お母さんやお父さんも手伝ってあげてくださいね。」ナビゲーターが手順を丁寧に説明する様子が大スクリーンに映しだされる。「難しい技術をどんな風に説明したら良いか一生懸命に考えて、子どもたちが飽きないように第1部は楽しく実際に作ることから始めました」というナビゲーターたちの思惑どおり、どの子も夢中で目の前の工作キットを組み立てている。
うまくできない子どもにはボランティアの社員がつきそって、全員ができてから次に進む。「このやり方で良いんですか?」初めは作業を眺めるだけだったお父さんやお母さんも、段々と子どもと一緒になって真剣に作り始めた。「ウチの息子がこんなに工作ができないと思わなかったなあ。」そんな風にボヤクお父さんも楽しげで、ワークショップは科学の実験だけでなく、親子の発見にも一役買っているようだ。

「ツイタ!ついたよ!」カードをパソコンにかざしてLEDライトが灯った瞬間、あちこちのテーブルから歓声と拍手が自然と巻き起こった。“電磁誘導”という複雑な原理は分からなくとも、いつのまにか子どもも大人も科学の不思議と楽しさを体感していた。
「おサイフ携帯など、カードのどこにお金がチャージされるのでしょう。」第1部の最後はICカードにお金を認識させる“符号”の実験だ。500円や1000円などを表す基本の模様を参考に、マジックで実際に“符号”を紙カードに書き入れる。模様をうまく組み合わせてカードをパソコンにかざすと最高金額5万円まで表示される仕組みだ。

「やった!4万円だよ!」一見複雑怪奇な模様を子どもたちの柔軟な頭はすぐに把握し、何枚も符号を書き込むと、ワクワクした面持ちでパソコンをのぞきこむ。「マークでお金が表示され、たくさんのお金が貯まったような気分」と子どもたち。ゲーム感覚で楽しいらしく、休憩時間になっても、たくさんの子どもが実験を続けていた。

ワクワクする科学の楽しさと、未来への可能性を伝えたい。
ナビゲーターの諸橋さんの第2部ではマイフェリカカード/マイフェリカポートを完成させる。親子の共同作業もすっかり板につき、ポートに電池をつないでスイッチを押し、自分で作ったカードをかざしてLEDライトが光ると、親子の表情には一様に達成感があふれていた。
「今日は電磁誘導と電磁石、二つのキーワードを覚えてくださいね。」ひと通りの工作作業が終了し、自分の写真を貼って認証キットを完成させたところで、ナビゲーターの諸橋さんが改めてFeliCaに使われる基本技術を専門的に説明する。「エナメル線を輪にしたところに磁石を出し入れすることで変化が起きて電流が流れることを電磁誘導といいます(略)コイルに電流を流すと磁石になる、これが電磁石ですね。」大人でも難しい科学の原理だが、子どもたちは目の前にある自分で作ったキットを見比べながら一生懸命、ナビゲーターの話に聞き入っていた。

「今日皆さんは大学生が勉強するような凄いことを勉強しましたね」第3部では、ナビゲーターの石川さんが子どもたちを拍手で称えると“これからのFeliCaができること”を子どもたちに説明した。FeliCa機能をキーホルダーや最新テレビに搭載する;お財布ケータイをパソコンにかざして“お金の出し入れを管理”、さらに乗り降りする駅情報を蓄積して“よく行くエリア情報”を管理する;FeliCa機能を使った最先端のサービスが次々とスクリーンに映し出された。実験を通じたワクワク感だけでなく、自分たちが作ったキットに使われた技術が未来をもっと便利にするのだと子どもたちに実感させる。FeliCaという生活に密着した技術をテーマにした、ソニーならではのワークショップだった。

すべてが終了し、子どもたち一人ひとりに修了証が手渡される。帰り際には最後の“実験”として、親子で作ったカードを出口にかざしゲートを通過。「自分がつくったカードでライトが灯ったり、入出館のゲートを通過できたのが不思議。とても面白かった」「小学生のときに経験した理科の実験を思い出した。子どもたちと体験を共有できてよかった」と参加者は親子で楽しそうに会場を後にした。