« CSRマガジントップへ
Home > 国内企業最前線 > 株式会社ファンケル
Q: 従業員が家庭で取り組む「ECOチャレンジ」は、家庭でのCO2削減活動に褒賞金を支給するという画期的なものですね。
グループを挙げた取り組みを始める以上、だれもがまだやっていないことに挑戦したいと考えました。「もっと何かできるはず」というわけです(笑)。環境・企業文化グループの中で知恵を出しあった結果、「従業員の家族も巻き込んでやったらどうか」というアイデアにたどり着き、家庭での電気代・ガス代をそれぞれ削減するチャレンジを「ECOチャレンジ」と名づけました。チームマイナス6%を達成するには「1人が1日で1kgのCO2を削減する」という目標を環境省も推奨しています。家庭での取り組みだったので任意参加なのですが、従業員3,600人のうち2,064人が参加登録しています。


「ECOチャレンジ」第2弾で成松義文社長から
表彰を受ける電気代部門1位の桝田彩佳さん
第1弾の夏場〔7月〜11月〕では、基準値=「2008年6月の電気代・ガス代の使用料金」÷「6月 世帯全国平均電気・ガス料金」として、基準値が1以下(使用料金が全国平均よりも低い家庭)は「7月〜11月の使用合計金額」÷「7月〜11月の世帯全国平均電気・ガス料金」が基準値に対し、10%以上の削減目標(例;基準が0.9の場合0.81)、高い家庭は20%以上の削減をめざすことにしました。結果は、参加2,064名のうち、電気代とガス代でのべ67名がクリアし、各5,000円の褒賞金を獲得しました。また、上位1位・2位・3位の家庭にはそれぞれ3万円・2万円・1万円がプラスで贈呈されました。

続いて行われた第2弾の冬場〔12月‾3月〕では、第1弾のハードルが高すぎるという声をうけ、「12月〜3月の使用合計金額」÷「12月〜3月の世帯全国平均電気・ガス料金」が基準値よりも削減できていれば達成ということにしました。より多くの削減に努力してほしかったので、基準に対して10%以上削減の方には5,000円、20%以上削減の方には10,000円を褒賞金にプラスしました。その結果、達成者は第1弾のほぼ倍増となりました。冬場はお風呂の機会も増えるためかガスでは微増だったものの、電気は3倍、両方の達成者は8倍になりました。なお、第1・第2弾ともちょっと複雑なので、計算式をイントラネット上に公開し、家庭の電気・ガス代を所定欄に入力すれば、すぐに達成したかどうかがわかるようにしていました。今後の取り組みでは電気代・ガス代に加え、水道代なども追加しようと検討を始めています。

Q: 初めてのことで事務局としては苦労も多かったのではありませんか。
第1弾の計算が難しいこともありましたし、会社が本気でCO2を削減しようとしていることを伝えるには、従業員に直接説明しなければならないと考え、まずは各事業所などへの説明会を30ヵ所ほど開きました。さらに、研究所からの「省エネ方法を知りたい」という声に応えて、環境省の外郭団体の「省エネルギーセンター」から講師を呼んで講座を持ちました。また、時間が経つにつれ、エコチャレンジ意識が薄れるのを避けるため、社内のイントラネットを活用した啓発サイト「もっとECO」をオープンし、エコチャレンジ達成のためのサポートをしています。たとえば、多くの社員にインタビューし、実践している具体的な省エネ方法をサイト上で紹介しました。また、家族1人ひとりの意識を高めるため、ステッカーをつくってほしいという要望があり、冷蔵庫などの大型家電用のステッカーとパソコンやリモコンなどの小型機器に取り付けられるステッカーをつくりました。初めてのことばかりなので、1つひとつ試行錯誤しましたが、細やかなフォローを丁寧かつ継続的にやることが大切だと思います。

Q: 参加者の反響や感想はいかがでしたか。
初めはほとんどの人が電気代やガス代の金額さえ把握していない状況でした。銀行などで自動引き落としになっていると、ついつい無関心になっていたのです。削減のために動き始めると、ちょっとした工夫や、無駄の削減で電気代やガス代が減るのが楽しくなってきたという声もありました。多くの方は、無理せず、できる範囲で努力したため、つらかったことはほとんどなかったようです。(中には薄暗い中で生活するなど、苦労されていた方もいましたが・・・)また、褒賞金も出るということで、家族の協力も得やすかったようです。さらに、電気代・ガス代だけでなく、ゴミの分別・ガソリンや水の節約など家庭でのエコが広がっているようです。褒章金の額を心配される声もありますが、第1弾で約50万円、第2弾で約160万円です。

Q: ファンケルでは役員報酬に「環境指標」も導入されているようですね。今後も従業員と役員が一体となってCO2削減活動に取り組んでいかれるのでしょうか。
環境活動「ファンケルECOプラン」のスタートと同時に役員報酬に「環境指標」を導入しました。取締役と執行役員の12名が対象です。それぞれが勤務する本社、大船、研究所などのオフィスのCO2削減目標を達成できない場合は、次年度に役員報酬の固定部分の5%をカットするというものです。毎月行われる役員会では、各オフィスの進捗も発表され、経営層の意識づけも確実に進んでいます。経営層が率先して取り組めば、従業員の「ECOチャレンジ」への参加意欲もさらに高まるものと期待しています。

〔取材協力:株式会社ファンケル CSRユニット副ユニット長(環境・企業文化担当) 臼杵ひろみ様・CSRユニット環境・企業文化グループ 瀬川 優子様〕