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Home > 国内企業最前線 > 積水ハウス株式会社 楠正吉 CSR室長人/シェアリングアース協会 藤本和典代表

企業とNGOの連携について

Q:「5本の樹」計画は2008年11月に第6回パートナーシップ賞を受賞していますが、企業とNGOとのコラボレーションは、双方にとってチャレンジだったのでは?
藤本 私は日本野鳥の会に10年間勤務し、17年前から人と自然をテーマとしたシェアリングアース協会を運営しています。その経験上、世の中を動かすには“企業、政治家、マスコミ”の3者と上手にお付き合いすることが非常に大切だと感じています。しかし、実際には本気で動いてくださる企業が少ない、そこが積水ハウスさんの違うところでした。  NGOと企業が一緒に活動するポイントは、コンセプトが一致しているかどうかです。意見の相違があれば、最初のコンセプトに立ち戻って話し合えばいい。今現在においては“一人でも自然を大切にする人を増やす”というコンセプトが積水ハウスさんと完全に一致しています。

 “コンセプトの一致”が重要というお話は全くそのとおりです。当社も「我々が造る住宅や団地に鳥や生き物がたくさんやってくる。素晴らしいことじゃないか」と“志の共感”があったからこそ、藤本先生とのガイドライン作りも外から押し付けられたものとは感じない、スタート時点から社内に違和感は全くなかったと思います。
ただ当初は、個人住宅の注文設計を中心に「5本の樹」計画をご提案していましたので、件数には限られていました。2005年に策定した“まちづくり憲章”や全国一斉に開催する大々的なイベント “まちなみ参観日”と連動して、差別化戦略として「5本の樹」計画を推進したことで、個人住宅以外の住宅団地や集合住宅にも広がり、さらに行政ともかかわる団地等の街路樹設計等にも導入され「5本の樹」計画が一気に“量”的に浸透したと思います。その結果当社の植栽実績は2008年度には87万本に達しています

Q:「5本の樹」計画の規模が広がることで、社会に与える影響も大きくなります。
 藤本先生と当社の連携における成功の鍵は、互いに同じ志を持つことと同時に互いが補完しあえる存在であったことだと思います。藤本先生は非常に強い思いで外来種を減らし生物多様性を守る活動をされてきた、つまりコンセプトとノウハウをお持ちでした。一方で当社は全国に広がるビジネス現場をもち、新築で年に5万戸、戸建のオーナー様は全国に70万戸いらっしゃいます。この両者が合わさることで本当に生態系にインパクトを与える活動をすることが出来たと思います。
当社は大自然で植林や清掃などいわゆる自然保護や社会貢献活動も行っていますが、ある程度の規模の活動でないと社会にインパクトを与えることが難しいのも事実です。一例ですが、以前は「5本の樹」計画で提唱する“クヌギ”や“コナラ”は単なる雑木と見なされ、供給する造園業者がほとんどありませんでした。日本の庭木は純和風の松や竹、花がきれいで葉が落ちずに管理しやすい外来種に偏っていたからです。それが段々と変化し、「5本の樹」計画に共感いただき“クヌギ”などを数年かけて苗木から育てる業者も現れ始めました。そこには、当社が全国規模の事業で「5本の樹」計画を展開するからこそ、サプライチェーン側でも将来的な需要を見込めるという背景があります。環境問題においても大手企業が動くことで市場を動かし、社会が変化する、我々は大きな影響力を持っていることを認識しなければなりません。

Q:2010年10月には名古屋でCOP10 (生物多様性条約第10回締約国会議) が開催され、生物多様性への問題意識がさらに高まりそうです。
藤本 積水ハウスさんの「5本の樹」計画が注目される機会も増えると思いますが、(自然を大切にする)動きを“継続”させるためにも「5本の樹」計画の考え方をさらに一般に広めていきたい。私自身も運営するシェアリングアース協会を通じて機会があるごとに、「5本の樹」計画に関する情報提供を行っています。

 「5本の樹」計画のコンセプトを伝えると同時に、「5本の樹」計画を実践することで生態系に与える効果をより具体的に示していけるよう、在来樹種を植えた庭に野鳥や虫たちが戻ってきたというようなお客様の声をたくさん集めていきたいと考えています。自然の生態系の力をしっかりと復活させていくことが、当社にとっても使命だと思っております。

積水ハウス(株)が 日比谷公園ガーデニングショー2009へ初出展
同ガーデニングショーでも“生物との共生”をテーマとした出展は初めて。 「5本の樹」計画のモデルガーデニングの展示や社員による庭づくり相談会・セミナー、藤本和典氏による自然観察会(10月25日(日)、11月1日(日)の両日に13時からと15時から)も行われます。
 ◇2009年10月24日(土)〜11月1日(日)
 ◇10:00〜17:00pm (最終日15:00pm迄)
 ◇日比谷公園内広場・遠路等(屋外)
 ◇入場料:無料
 ◇お問い合わせ先:積水ハウス(株)広報部(東京) Tel. 03-5575-1740
2009年10月取材