“攻めのエコ”で環境にやさしい商品づくり
「エコバツ」商品ゼロに取り組む
コクヨグループの活動から
コクヨS&T株式会社クリエイティブプロダクツ事業部 コアテックVU(バリューユニット)開発第一グループ
古川 勝章グループリーダーと青井 宏和リーダーに聞く
コクヨS&T株式会社クリエイティブプロダクツ事業部の
古川勝章グループリーダー(左)と青井宏和リーダー(右)
環境にやさしい商品づくりが叫ばれている。わが国を代表する総合文具メーカー・コクヨグループでは、文房具とオフィス家具の2つの総合カタログから、環境配慮が十分でない自社ブランド商品に「エコバツマーク」を表示、2011年版の総合カタログ発行までに、「エコバツマーク」表示ゼロを目指している。残された時間はあと1年。文房具に新たな価値を吹き込む、コクヨS&T㈱の開発者にこれまでの取り組みを聞いた。
Q:分別不要の保存ファイル〈オール紙〉を見ました。「こんなのあったら」にぴったりのエコ商品ですね。
古川 これまでの保存用ファイルは、綴じ具が金具あるいはプラスチックからできていたため、書類を廃棄する際に、綴じ具と表紙および紙文書を分別するのに手間が掛かりすぎるというお悩みやご意見をいただいていました。2008年8月に表紙だけでなく綴じ具も紙でできた保存ファイル〈オール紙〉を発売したところ、「書類を分別廃棄するときに掛かっていた手間が要らなくなり、分別作業に費やされていた時間をより付加価値の高い仕事に回すことができた」というお声をたくさん頂戴しました。ある金融機関では、書類に個人情報が数多く含まれるため、「分別する」という単調な作業であっても社員が行っていたようです。実際、1店舗で4人が3日がかりで綴じ具の分別を行っていたとも聞きました。この保存ファイル〈オール紙〉をご利用いただいてからは、廃棄に対する負担が大きく軽減され、自社の回収システムの中で、そのまま分別せずに廃棄でき、溶解処理をして再生紙としての再資源化が進んだとお褒めの言葉をいただきました。
青井 保存ファイル〈オール紙〉だけでなく、2004年3月に発売したフラットファイル〈オール紙〉もすべて紙でできています。不要になった際は、そのまま紙ゴミとして廃棄処分できます。紙ゴミを溶解できる仕組みをお持ちの場合は、さらに進んだマテリアルリサイクルとしての取り組みも可能です。エコというのはとてもよいことなのですが、実際にやろうとすると分別作業など“我慢と努力”が欠かせません。そのネガティブな印象がエコの普及を妨げていると考え、私たち商品開発では、「楽ちんエコ」「楽しみエコ」「前向きエコ」をコンセプトに2年ほど前から新しい商品提案を始めています。一言でいえば、“守りのエコ”から“攻めのエコ”への転換ですね。
表紙も綴じ具も紙でつくった保存ファイル
〈オール紙〉
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Q:コクヨは「エコバツマーク」商品を3年間でゼロにする「コクヨの宣言」を発表しています。残りは1年ですが、進捗はいかがですか。
古川 「エコバツマーク」商品をゼロにするというアイデアそのものは、およそ3年前にコクヨ社長の黒田章裕が、「地球の温暖化や資源循環にもっと積極的に取り組まないといけない」と考え、そのためには「企業の環境戦略は経営者が自ら示さなければならない」と打ち出したものです。環境対応が十分でない商品にあえて「エコバツマーク」を表示し、ステーショナリー(文房具など)編とファニチャー(オフィス家具など)編の2分冊からなる当社グループの総合カタログに表示することにしました。マーク選定の目的は、「エコバツマーク」が付いた商品ごとの対策を行い、このマークを3年間でゼロにしようというものです。初年度の2008年度の取り組みで2009年度版カタログステーショナリー編のエコバツ表示比率を48%から26%に、ファニチャー編のエコバツ表示比率を25%から8%に引き下げることができました。
Q:2年目をスタートさせるにあたって、たしか基準を厳しくしたと聞いたのですが。
古川 2009年度のスタート時点で、環境配慮は商品のライフサイクル全般において取り組むべきであるという声が起こり、基準の見直しを行うことになりました。2008年度のエコバツ基準は、「作る」「使う」「捨てる」を対象にしたものですが、ステーショナリーが「作る」「使う」「捨てる」のどれにも該当しない商品に「エコバツマーク」を表記したのに対し、ファニチャーでは、「作る」「使う」「捨てる」のすべてに該当しない商品に「エコバツマーク」を表記していました。つまり、グループの中に2つの基準が混在していたわけです。2009年度が始まるにあたって、基準を統一するとともに、新たに「運ぶ」を加えました。そして、この4つの基準に1つでも満たしていない商品には、「エコバツマーク」を表記することにしました。4つの基準の各項目をご覧になると分かるのですが、2009年度からは「作る」に「省資源設計」を加えたほか、「運ぶ」に「エコ包装」「エコ輸送」の2つの項目を加えました。