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Home > 国内企業最前線 > コクヨS&T株式会社クリエイティブプロダクツ事業部 コアテックVU(バリューユニット)開発第一グループ
Q:ハードルを引き上げたことで2010年度中の「エコバツゼロ」の達成が危ぶまれることはありませんか。
古川 厳しいルールに改めたことで、2009年度のスタート時でステーショナリーのエコバツ率は76%に、ファニチャーのエコバツ率は15%になりました。しかしこの1年間、関係部署が全力で取り組んだ結果、2010年度版カタログのステーショナリー編は76%を40%に、ファニチャー編は15%を7%に引き下げることができました。本当にグループの全員ががんばった成果だと思います。

青井 あと1年、つまり2010年度末までにはなんとしてもゼロにするため、現在、残りの商品の課題の洗い出しや対策をスタートさせています。いまは、よい意味で全社・全グループが共通の目標に向かって走っているという連帯感のようなものを感じています。経営トップの思いの中には、こうした環境対応への取り組みをとおして、営業や開発のみならず、調達やお取引先までも巻き込んだ意識や行動の変革を進めたいという、熱い願いが込められているのかもしれません。



Q:2009年12月のエコプロダクツ展には針なしの書類綴じ具「針なしステープラー」が大きな話題を集めました。あの開発は大変だったのではありませんか。


いま話題の新商品。針なしの書類綴じ具「針なしステープラー(2穴タイプ)」。
青井 「針のいらないホッチキスのような製品があれば便利だろうなあ」ということはずっと考えていました。私たちは商品開発をする上で、常々「お客様に訊け!」ということを心掛けています。ある程度の仮説をもとにインターネットを使ってお客様の声を訊くと、金属針の使用に対する不満な点が浮き彫りになってきました。その後、さらに商品コンセプトの絞り込みを行い、お客様と顔を突き合わせてご意見を訊く機会も設けました。お客様からは「金属の針なしで書類が綴じられたら、書類の分別廃棄はずいぶん楽になる」という確かな手ごたえをいただきました。私たちが一番心配していた綴じる枚数についても10枚までならかなりのニーズを満たせることも分かりました。

Q:この商品開発で難しかったのはどのような点でしたか。
青井 「10枚を綴じる」ことと、「しっかり綴じる(強い保持力)」ことでした。書類の紙そのものを使って綴じるという原理は、百年ほど前のアメリカにもありましたが、3〜4枚が限度で、保持力も弱いものでした。それを10枚までしっかり綴じられるようにするのが私たちの目標でした。まず、「10枚を綴じる」ことを実現するために、刃を徹底的に見直しました。試作を繰り返し、U字にカットした紙片を通す縦刃の形状を工夫することで、3〜4枚が主流だった綴じ枚数を10枚まで増やすことに成功しました。次に、「しっかり綴じる」対策ですが、いろいろ試行錯誤する中で、1カ所ではなく、2カ所で綴じようというアイデアが生まれました。しかし大きな穴が2カ所あくために見栄えが悪いという欠点がありました。そこでひらめいたのが、どうせ2カ所で綴じるなら、その箇所をファイルのパンチ穴と同じ位置にすればいいということ。そうすれば、綴じと穴あけが同時にでき、そのままファイリングできて便利というわけです。作業効率もアップし、穴があくという弱点を強みに変える逆転の発想でした。しかも穴あけのゴミもでません。さらにコクヨにはすべての部分が紙でできたファイル<オール紙>シリーズがあります。「針なしステープラー」で綴じられた資料などを受け取った側がこのファイルと組み合わせて使用すれば、丸ごと紙ゴミとして廃棄可能なコクヨ独自のエコロジーファイリングが提案できます。エコプロダクツ展で、「針なしステープラー」の操作をすると大きな歓声があがりました。「実はこれだけではないのです」とその書類を保存ファイル〈オール紙〉やフラットファイル〈オール紙〉にファイルして廃棄の件を説明すると、もう一度歓声があがりました。開発者冥利に尽きると思いました。

Q:コクヨは「エコライブオフィス」や「結の森」などユニークな挑戦も進めています。どのような企業グループを目指そうとしているのでしょうか。
古川 コクヨは、創業以来、紙や木材などの森林資源を原材料に帳簿やファイル、オフィス家具などの商品をつくってきました。コクヨの歴史は、森の恵みによってもたらされたといってよいでしょう。いま、木材の価格低迷や林業従事者の高齢化によって、日本の森林の40%を占める人工林が手入れもされずに放置される状況が生まれています。コクヨは、間伐材(森林の生育をうながすため、樹木の間に適度な空間をつくるための伐採)を使った家具の製造でお付き合いのあった高知県の大正町森林組合との信頼関係を基盤に、四万十川流域の森林で「コクヨ―四万十川・結の森プロジェクト」を2006年からスタートさせました。ヒノキとスギの人工林1,074ha(2008年度)を対象に間伐などの管理を行い、CO2の吸収や河川の浄化、豊かな生態系を育む森づくりを進めています。

もう1つの「エコライブオフィス」は、人間の働く場にエコの思想を取り入れる当社の実験オフィスを指します。LED照明や最新型の空調設備などの導入でCO2排出量の大幅削減を実現し、「エコを活力に企業の成長をサポートするオフィス」と銘打ってネーミングしました。オフィスをご覧いただくお客様にも新たな「気づき」を促すことができればと考えています。 コクヨグループは、現在、「独創環境企業」を共通のスローガンにしています。こうした最新のオフィスは、環境に配慮した働き方を実践し、コクヨ自身が新たな成長を模索する場でもあります。言葉だけのスローガンに終わらせないためにも、これからもプラス思考でエコに取り組み、社会の一員としての役割を全うしていきます。

東京本社に設けられた実験オフィス、エコライブオフィス。野外のガーデンでもお仕事を