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従業員の手づくりで自然環境教室
日本製紙グループが「森と紙のなかよし学校」を開催
日本製紙グループ


社有林を活用して行われる自然と紙づくりの体感プログラム「森と紙のなかよし学校」が今年も開催された。群馬県丸沼高原での開催は今回で9回目。秋には10回目が開かれる。参加した親子連れの反響とともに、手づくりの自然環境教室に取り組む日本製紙グループ従業員たちの取り組みにも目を向けてみた。

Q:6月5日・6日に行われた第9回「森と紙のなかよし学校」は盛会でしたか。
天候にも恵まれ、盛況のうちに無事終わることができホッとしています
会場となった当社グループの丸沼高原リゾート(群馬県利根郡片品村)は、冬はスキー場として営業しており、もともと積雪の多いところとして知られています。今年は春先の気温が低かったこともあり、2〜3週間前まではかなり雪が残っており、プログラムの一つである森歩きの実施が危ぶまれていました。事前に何度も遊歩道の状況を現地に確認し、前日にはスタッフでリハーサルを行うなど入念な準備を行いました。

丸沼高原での「森と紙のなかよし学校」は今回で9回目。今年も小学1年生から6年生までの子どもたちとお父さんやお母さんの親子27名が参加しました。朝8時に東京駅前に集まった参加者は、バスで約4時間をかけて昼前に現地に到着。森歩きのスタート地点は標高およそ2,000メートルの山地にありますが、今年は日光白根山や日光連山がくっきりと見え、参加者からは大きな歓声がとどろきました。


Q:日本製紙グループが「森と紙のなかよし学校」を取り組まれたのは2006年からだそうですね。どのような思いから始められたイベントでしょうか。
日本製紙グループのCSR経営に向けた体制が決まったのが2003年10月で、その後、社会貢献活動の理念や基本方針の策定なども行われました。そして、グループ社員が自発的に社会貢献活動に参加する流れをつくろうと、社員からメンバーを公募して社会貢献推進チームを立ち上げました。

それ以前から、全国9万ヘクタールに及ぶ社有林の社会的活用を望む声は社内にあり、具体的に何かに取り組もうと社会貢献推進チーム内で話し合いが重ねられたのです。
丸沼高原リゾートがある菅沼社有林は首都圏から近く、また、グループ会社である日本製紙総合開発が長年にわたり丸沼高原リゾートを経営してきたことや、地元の「シラネアオイを守る会」の活動に社員がボランティア参加していた経緯もあって、まずは菅沼社有林でやってみてはどうかという話になりました。

周辺地域の方々や、現地の山に詳しい尾瀬高校自然環境科の先生、地元の森林ガイドの方などにお話を伺ったりしながら、製紙会社ならではの取り組みを模索する中で、自然を大切にする心を育て、自然を生かす知恵を学ぶ自然環境教育という方向性が見えてきました。
そして2005年に2回行われた従業員家族を対象にしたトライアルで腕試しを行い、これなら大丈夫ということで2006年6月に第1回目の「森と紙のなかよし学校」が開催されました。


Q:用意周到ですね。手づくりのイベントとありますが、準備には社内の英知を結集されたということでしょうか。
話し合いやトライアルを通じていろいろと試行錯誤を重ね、そうして固まったのが「森を歩こう!」「小枝から紙をつくろう!」「星空を観察しよう!」の3つを核とする親子体験型のプログラムです。

「森を歩こう!」のガイド役は社員が務めていますが、2006年第1回の際は事前に地元森林ガイドにご教授いただいて菅沼社有林の特徴をテキストにまとめました。こちらは第1回のときに作成したものに改訂を加えて毎回使い続けています。

「小枝から紙をつくろう!」では、研究所のスタッフが中心となって、市販されている道具などをいろいろ試した結果、短時間でかつ安全に小枝から紙をつくる方法を編み出しました。また「星空を観察しよう!」では社員の趣味が活かされています。

また、ここに社員が手づくりした参加者用の冊子がありますが、文章やイラストや写真もすべて手づくりです。冊子の紙には雨に濡れても大丈夫な当社グループの耐水紙「オーパー®」を使っています。


社員による手作りの参加者用冊子

Q:それでは「森を歩こう!」から中身の紹介をしていただけますか。
先日の第9回目の様子についてお話しますと、1日目は、社有林のウォーキングを楽しむ「森を歩こう!」で始まりました。
往復2.6キロメートルの山道を約2時間かけて歩くものですが、ガイドの解説を聞いて歩くだけでなく、「ネイチャービンゴ」の用紙をつくって、途中の植物や動物など自然との出会いや体験をそのつどビンゴ用紙に書き込んだり、シールを貼ったりできるようにしました。ビンゴ用紙の裏には歩くコースの地図も付けました。

私たちが手づくりした冊子には、「森でのルール」「日本製紙と菅沼社有林」「森林のはたらき」「森の花たち」「森の鳥たち」「木の見分け方」「クロサンショウウオ」などの記述を載せ、歩きながら学習できるようにしました。子どもたちは学年が違うこともあり、知識の量、理解する力は一律ではありませんが、自分の目で確かめることで、興味が増すのが分かりました。

毎回参加してくれている地元尾瀬高校の生徒さんは今年9人が参加し、子どもたちに声をかけ、説明役を果たしてくれました。子どもたちと年齢差が近いこともあり、われわれ社員との間のよきクッション役になってくれました。

2時間をかけてスタート地点に戻るころには、かなりの疲労です。スタート地点のロープウェイの山頂駅付近には「天空の足湯」があり、足湯につかりながら見る日光白根山の勇壮な姿は忘れられない思い出になったはずです。

社員のガイドで雪の残る山道を歩く
子どもたち


クロサンショウウオの卵を観察

Q:「星空を観察しよう!」はいかがでしたか。
夕食が終わったあと、夜の8時から9時頃にかけて行いました。
夜空には満天にきらめく星空が広がっていました。

実は当社のグループ社員に「東葛星見隊」という星空の観察を趣味とする同好会に参加している社員がいます。彼らの仲間が本格的な望遠鏡を持ち込み、子どもたちに土星や火星や星雲を見せてくれました。土星の輪が間近に迫り、子どもたちだけでなく大人もびっくりです。なかには10時近くまでねばった参加者もいたようです。

あいにくの悪天候の場合は、屋内でのスライド観賞などの別プログラムを行うのですが、今回はその必要は全くなく最高に良い星空が観察できました。実際のところ、このように星を見ることができる確率は2割くらいではと聞いていますので、本当に幸運でした。


Q:「小枝から紙をつくろう!」は日本製紙の本業とも重なりますね。
このプログラムは、木の小枝が紙になるという体験を通じて、ものづくりに対する素朴な感動を味わって貰えるところがポイントです。
実は、1日目に行われた「森を歩こう!」の中で、参加者には木の小枝を集めてもらっていました。宿舎に帰ると同時に、野菜の皮をむくピーラーを使って小枝の皮をむき、枝の部分をさらに細かく削る作業をやってもらいます。紙の原料となるチップづくりです。それからスタッフがチップを集めて鍋に入れて水と薬品を加えて煮込みます。この煮込む作業を短縮するため、スタッフのアイデアにより今年は圧力鍋を使いました。

2日目は、紙の原料や製紙工程についてレクチャーをしてから、パルプづくりの続きを行います。前日煮込んだチップの薬品を水で洗い流し、ミキサーにかけてさらに細かくし、それを漂白剤で白くするとパルプの完成です。

次は紙すきです。市販の紙すきキットにパルプと水をよく混ぜてすき枠に流し込みます。紙すきのあとの脱水が意外と大変で、これをしっかりやらないと水が抜けきっていない湿った紙を持ち帰らねばならないのですが、これもスタッフのアイデアで、まずはセームタオルではさんで脱水し、それから新聞とアクリル板ではさみ、上から足で踏んで全体重を掛けるという脱水法を編み出しました。そのあとアイロンで乾かします。日常生活の中で身近な道具を使って紙づくりができるよう工夫が凝らされている点は、スタッフの知恵の結晶だと思います。