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TOPICS:海外CSR専門誌 The Diplomatより、最新記事をピックアップしてご紹介します。
“環境に優しい”をキーワードに活性化を図る観光業界にかんするレポート前半です。
エコフレンドリーな旅の近未来(上)
−−持続可能な観光産業のあり方を探る−−


サスティナブル・ツーリズム(持続可能な観光)は、不況を生き延びる旅行業界にとって救世主になりうるかもしれない。だが、エコフレンドリー(環境に優しい)という宣伝文句はどの程度有効なのだろうか?

 1978年、ガラパゴス諸島は初の世界自然遺産指定地域となった。今日、ダーウィンの「種の起源」の初版の出版から150年を経て、ガラパゴス諸島は「危機にひんしている世界遺産のリスト」に掲載されるほど、観光産業がこの島々を激変させてしまった。ガラパゴス諸島には観光客たちのダイビングボートからでるゴミが処理もされずに山と積まれ、島の外からわたってきた外来種の数は増大し、観光客目当てにカネを求めて集まった不法移民が大被害をもたらしている。

2008年のOECD(経済協力開発機構)レポートによれば、観光産業はOECD諸国ではGDPの2〜12%、雇用の3〜11%、サービス輸出のおよそ30%を占めている。多くのより小規模で発展途上にある国々では、その比率はさらに高くなる。
オーストラリアでは、「観光産業はオーストラリアの国内総生産のうち6.5%に相当する678億ドルを占め、85万人以上が直接・間接に観光産業によって雇用されている」とツーリズム・リサーチ・オーストラリア(Tourism Research Australia)は報告している。オーストラリアは世界でももっとも厳しい環境規制と検疫制限を誇ると同時に、世界でもっとも多くの世界遺産を抱える国である。この国の自然条件の優位性が少しでも衰えれば、それは観光産業、ひいては経済にとって破滅的なことになりうる。

「旅する哲学(The Art of Travel)」にアラン・ド・ボトンは次のように書いている。「何処へ旅すればよいのか…世の中はそのアドバイスであふれている。どのようにそこへ行くべきか…私たちにはそれがよく見えていない」。自らの影響を懸念する旅行者たちは、社会的かつ環境的に最適と思われる無数の旅先の選択肢に戸惑っている。だが、業界関係者たちによる「エコフレンドリー(環境に優しい)」という宣伝文句は、どの程度信頼できるだろうか?

サスティナブル・ツーリズムは、エコツーリズムから自然に親しむ観光までを包括する幅広い用語である(別表)。オーストラリア政府が支援するサスティナブル・ツーリズム共同リサーチセンター(Sustainable Tourism Co-Operative Research Center: STCRC)では、サスティナブル・ツーリズムは「環境と現地文化への影響を最低限におさえながら、社会、経済、そして環境の3つの側面(トリプル・ボトムライン)の保全に関連して成果を達成しようとする」産業と定義されている。

サスティナブル・ツーリズム(Sustainable Tourism)
環境に対する認識の高まりによりあらゆる観光事業と旅行者に環境と文化の双方に対する配慮を促し、旅行商品とその消費のすべての側面においてこれを実行する活動。

自然に親しむ観光(Nature-based Tourism)
リラクゼーション、発見、あるいは冒険などその目的を問わず、自然環境に関係するあらゆるサスティナブル・ツーリズムおよびその体験。

エコツーリズム(Eco-Tourism)
主たるモチベーションが学習、正しい認識、そして保護の対象である自然に親しむニッチの分野。エコツーリズムは専門化しており、低機能、個別的、教育的、そして保護意識が高く、地域社会ないしは天然資源に目に見える恩恵をもたらす。