GSTCは世界中から集められた4,500のサスティナブル・ツーリズムの基準を調べ、次の4つの柱――「有効なサスティナビリティ・プランニング」「地域社会に対する社会的および経済的利益の最大化」「文化遺産に対するマイナス影響の削減」「環境遺産に対するマイナス影響の削減」――にもとづいて一連の原則案を作成した。
「GSTCが登場する以前には、サスティナブル・ツーリズムには何百もの定義と基準が存在しましたが、いずれも普遍的に理解され、適用され、受け入れられていない状況でした」と国連財団であるサスティナブル・ディベロップメント担当副理事ケイト・ダッドソン氏は述べる。「GSTCは、大規模および小規模宿泊施設提供者および旅行業者にとって普遍的で、達成可能であり、測定可能であり、適用できる唯一の基準を調整するために作成作業を行いました。このプロセスはグローバルな市場でサスティナブル・ツーリズムに積極的に取り組むことに対する障害を取り除くことになるかもしれない、と私たちは確信しました」
ダッドソン氏によれば、旅行業界でサステナビリティの原則が積極的に組み込まれてこなかった理由の大きな原因は、サスティナブル・ツーリズムの理解とともに、これをどうしたら実行できるかに関する一般的な理解しやすい教育とトレーニングが存在していないことにあると言う。
しかし、すべての自主的基準、オンライン化されたより普遍的な基準をもってしても、サスティナブル・ツーリズムの理解を促進することはできるのだろうか? もちろん、国連では自主的なプログラムが役立つことを期待している。
ダッドソン氏によれば、「GSTCパートナーシップはパフォーマンス指標、教育、トレーニング資源の事例の作成に取り組んでおり、旅行業界によるこれらの基準の価値と重要性の認知を確立しようとしています」と言う。
STRCも気づいていることだが、利用者からの需要は大いに高まる可能性がある。「観光客の環境に対する関心が高まっていることからすれば、ある特定のタイプの『グリーンツーリスト』が、グリーンプロダクト(環境に優しい商品)が、地域社会や広範なコミュニティーにもたらす実益の証拠を確認することができれば、人々はこのような商品にもっと財布の紐をゆるめるだろう」とも語る。
有益な休暇を過ごしたいと望む個々の観光客こそが変革の起爆剤となりうる。カーボンオフセット会社であるクライメート・フレンドリー社(Climate Friendly)のCEOであるフレディ・シャープ氏は次のように語っている。
「利用者がリードする需要に加えて、企業間(B to B)の市場がサスティナブル・ツーリズムの強力な推進力となっています。多くの会員法人や旅行代理店などが今日ではホテルチェーンなどに対して『おたくのサステナビリティに関する実績とポリシーはどんなものか」と尋ねるほどです。
EC3グローバル・コンサルティング社(EC3 Global Consulting)のグローバル・マーケット部門アンドレ・ラス本部長は、多くのホテルがサステナビリティに対する認識の高まり、そのサービスを利用する会員法人や旅行代理店からのプレッシャーに対応している様を目撃している。「[EC3グローバル社が世界中で運営する]グリーングローブ・プログラムには、ノボテルなどの大規模な多国籍ホテルグループからアイランドリゾートやスパまでおよそ1,000の法人が参加しています。グリーングローブ認証は環境だけでなく、社会的および文化的影響も対象となります」
このような姿勢の変化は業界を代表するトップ企業など、より高いレベルの企業にもみられる。「産業主導の認定スキームに取り組むため、多くの国々の持続可能な開発を担当するビジネス協議会などの幅広い業界団体が、EC3グローバル社やSTCRCに興味を示し始めています」とラス氏は語っている。