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バングラデシュ農村地域の再生可能エネルギー利用促進運動に太陽は輝く
メーディ・チェビル(Mehdi Chebil)著



世界のリーダーたちがコペンハーゲンで開催される重大な気候変動会議(COP15)への準備を進める中で、バングラデシュは、『再生可能エネルギーとクリーンな成長は豊かな国のみに許される贅沢である』という観念に対する挑戦を開始している。

バングラデシュは、気候変動の最前線という居心地の悪い位置づけにある国だ――その国土の大部分は上昇を続ける世界の海抜の 脅威にさらされている。それにもかかわらず、この南アジアの国は『世界でも最貧の人々の一部がいかに家庭の電力需要向けに太陽のエネルギーを取り入れることができるか』を実証している。

過去数年間にわたって、バングラデシュはひそかに大規模な家庭用ソーラーエネルギー・プログラムを実施し続けている。これによって主に地方の農村地域に32万基のソーラー・ホーム・システムが設置された――これは広範囲におよぶ社会的そして経済的影響をもつ取り組みである。

バングラデシュでは太陽光発電による電化が電光石火のスピードで進められており、毎月1万基を超えるソーラー・ホーム・システムが設置されている。そして、送電線網を利用できない地域にもソーラーシステムの設置を拡大するために政府が提供する助成金を支援する目的で、2009年9月に世界銀行が8,400万ドルの融資をさらに供出している。

しかしながら、こうした支援はさておくとして、プログラムの主導者はと言えばグラミン・シャクティである。グラミン・シャクティは再生可能エネルギーを通じて農村部の人々に能力を与えることを明白な目標として1996年に創設された非営利企業である。

CSRマガジン誌とのインタービューで、グラミン・シャクティのディパル・バルア最高経営責任者は次のように述べている。「バングラデシュの人口の最大70%に相当する人々は国の送電線網を利用することができません。こうした状況では多くの人々は低開発という困難な問題に圧倒されてしまうかもしれませんが、私はそこに代替となる地方に分散したクリーンなエネルギー源――ソーラーパワー(太陽光発電)――がもたらす機会を見出したのです。」

「今こそがチャンスです。たしかに景気後退に見舞われてはいますが、私たちは型にはまらない発想をすることができます。そこで1996年にプロジェクトに着手しました。そして2002年には1年間をかけて1万基のソーラーシステムを設置しました。ところが、現在ではなんと1ヶ月に1万基のシステムを設置しているのですよ!」とバルア氏は語る。

ガンジス川の河口に位置し、国土を何千ものその支流が横断するバングラデシュにとっては、地方に分散したエネルギーは特別な意味をもっている。雨期にはその幅が1キロメートルを超えるまでに膨張するいくつもの川を横断する配電線を接続するには、とてつもない投資が必要となる。

厳しい財政事情にある ダッカの政府がこうした配電線を送電線網に接続するのを首を長くして待つ代わりに、多くの農村部の住民はソーラー・ホーム・システムを購入することで自家発電をする道を選択したのである。現在もっとも人気の高いモデルの価格は400ドルで50ワットを発電することができる――これは家庭の照明用の電力供給、携帯電話の充電、テレビの視聴、あるいは小型の扇風機への電力供給に十分な電力量である。

しかしながら、こうした人里離れた村落に太陽光発電パネルを配送することは輸送上の一大事である。グラミン・シャクティは554の支店を開設しており、その多くはいくつかのバングラデシュでももっとも辺鄙な 地域に置かれている。

ダッカから一晩船旅をし、さらに4時間かけてボートに揺られて私はようやくマヘンディゴンジュ(Mahendigonj)の支店に到着した。 この地域の泥だらけの道路を自動車で横断することは不可能であるため、この地帯のグラミン・シャクティの技術者は顧客にソーラーシステムを届けるためにしばしば人力車か丸木船を雇わねばならないという。

「輸送上の問題に加えて、もう一つの大きな挑戦は、その大部分が貧しい農村家庭が太陽エネルギーを無理なく購入できるようにする方法を見出すことでした」とこの一大事業に関わった人々は口々に語っていた。

この点では、グラミン・シャクティはその関連会社であるグラミン銀行の経験から学ぶこととなった――『貧者のための銀行』と呼ばれるグラミン銀行は、マイクロファイナンス(小規模融資)の手法の開発によって2006年にノーベル賞を受賞している。数年間にわたる実験を経て、ソーラーシステムの購入を灯油などの代替エネルギー源に対抗可能とするいくつかのマイクロファイナンス・スキームをグラミン・シャクティはついに生み出したのである。

グラミン・シャクティの50ワットのソーラーセット――太陽光発電パネル1枚、バッテリー1個、コントロールボックス1個、そして蛍光灯3本、さらに配送、設置、および基本トレーニングを含む――に対する典型的な3年間のクレジットプランには50ドルの保証金の支払いが必要である。その後、1ヶ月あたりの予想コストは10ドル程度である。ローンの支払いは通常は3年程度で終了し、その後顧客は最長20年間にわたって無料で電力を提供するよう設計されたシステムを所有することになる。

バルア氏は自らの市場を基盤とした戦略には証明された効果があると断固とした態度を崩さない。

いくつかの非政府組織(NGO)に反して、グラミン・シャクティは太陽光発電パネルを無料で配ることはしていない――その活動はマーケティング、販売、出資、そしてソーラー・ホーム・システムのメンテナンスで構成されている。バルア氏はこう語っている。「実際のところグラミン・シャクティのアプローチはNGOがとるアプローチとは多少異なっています。私たちのやり方はコスト効率が高く、コミュニティーを基盤としたものでなければならないと考えているのです。また、市場を基盤とし、起業家を基盤としたアプローチでもなければなりません。」