Q:『男たちのワーク・ライフ・バランス』が出版されてから1年。不況の中で、日本人の働き方は今のままでよいのかという問いかけが強まっています。
中間 この本は、不思議な売れ方をしていると出版社の方が教えてくれました。勉強会などで使われているのか、ときおり、かたまりで売れたりしながら、途切れることなく、じわじわと売れているらしいのです。私たちの研究所では2007年に10年後の日本をイメージする「不安の時代を克服するために」という調査を行いましたが、その中で若い人たちが重視していたことの1つがワーク・ライフ・バランスでした。当初、日本の現状でこのテーマなら“男たち”じゃ無理だろうともいわれましたが、未来社会への問題提起になればということで出版しました。
鷲尾 ワーク・ライフ・バランスは、仕事と子育てをする女性主体の問題だと誤解されています。ワーク(仕事)とライフ(生活)のバランスの問題ですから、男女や世代を超えた働く人たち共通の課題です。あえて『男たちの…』としたのは、男性の皆さんにも問題意識を共有してほしいという思いがあったからです。
Q:日本の男性の育児休業の取得率はこの本だと0.57%とまだまだ低いのですが、登場する若いパパたちの奮闘ぶりは日本の父親像を見直すきっかけになりそうですね。
鷲尾 1年後の2007年度の調査結果は1.56%(厚生労働省調べ)と前回調査の3倍になっています。まとまった育児休業はまだまだ取得しにくい状況ですが、「平日に定時で帰れる」「月に1回休める」だけでも子育てパパたちには応援になると思います。
Q:ヒューマンルネッサンス研究所は、“働く”“学ぶ”“遊ぶ”という3つの切り口で、生活者の実感をもとに未来社会のあり方を研究しているわけですが、“働く”はどのような位置づけですか。
中間 “働く”ということは、“学ぶ”“遊ぶ”といった暮らしの他の要素とも切り離すことのできないものですよね。「人生の100%を仕事に使う」という生き方が、誰にとってもよい生き方だとはかぎりません。成熟社会の中で、自律した“生き方”を考えることが大事です。そうすると、時間のバランスだけではないのです。私たちは、都市と農村の「往来生活」など、マルチハビテーション(複数の生活拠点を持つ暮らし方)なども研究してきました。
(出典:HRIリサーチレポート2007「10年後の社会と生活」) |