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Home > 識者に聞く > [短期シリーズ:いま改めて、CSRを考える] 21世紀は企業とNGOとの“相克と協働”の時代へ [後半]

NGOは企業の新しいリスク?成長戦略を描く情報ソース?


企業はNGOをどのような存在だと認識すればよいのでしょうか?

寺中:NGOに対して防衛的な企業もいらっしゃいますが、必ずしも間違いではなくて、ある意味、NGO=文句をワーっと言ってくるリスクと思ったほうが分かりやすい。企業がNGOを迎え入れることが、常に一番良い解決策かというと多分そうとは限らないんですよ。

長坂:企業はNGOとの相克を乗り越えるしかないということだと思いますね。最初のステップとしてNGOをリスクだと思うことでCSRの本質に気づき、次の段階では企業の未来のためにNGOと協働が不可欠だと気づくこと。一例ですが、1993年に決定した2000年のシドニーオリンピックではグリーンピースオーストラリアの主張でオリンピック誘致委員会はスポンサー企業に対しノンフロン冷蔵庫の開発・使用を要請しました。それを受けて、日本ではグリーンピース・ジャパンがパナソニックをターゲットにノンフロン冷蔵庫の開発を要請する活動を行い、その結果パナソニックは21世紀に入ってノンフロン冷蔵庫を開発しましたが、その過程で環境問題の重要性とニーズを強く認識し、その後の同社の成長に大きく貢献しました。

今や企業のビジネスライセンスはNGOが持っているという欧州経営者の認識を紹介しましたが、それだけNGOは社会のニーズの最先端を把握する存在になっているということです。ダイオキシン問題など環境問題が典型的ですが、NGOの指摘は30-40年後に規制等の形で実現されます。企業がNGOを味方につけるか、少なくともコミュニケーションして世界の最前線の動向を経営に組み入れる、それは企業が持続可能な存在であり続けるために不可欠です。その認識は世界の先進国でのコンセンサスなのに日本企業だけがまだ十分気付いていない、NGO=ビジネスチャンスと気づく前に、NGO=リスクとさえ気付いていない企業も多いです。

寺中:NGOからの批判が企業のリスクだとすれば、そのリスクを回避できる、要するにNGOから突っ込まれないようにする経営は、充分に重要な他社との差別化戦略になりうると思います。でも、多くの企業から「次のテーマは?」と聞かれますが、残念ながらそれはお答えできないのですよね。状況によって変わりますから。

長坂:ここ数年、企業も社長直属でCSR室を設け、室長の方々はCSRとはNGOと付き合うことらしいと気付き始めています。ですからCSRで最も重要なことは企業にNGO担当者を置くことです。私自身も毎年海外のNGO関係者に会って情報収集を行っていますが、同じことを企業自身が行うべきです。

NGO側の情報収集、例えばアムネステイ インターナショナルは世界各国の状況の違いや統一的な目標についての話し合いの場を設けているのですか?

寺中:2年に1度の総会で、世界の情勢分析と我々に何ができるのか戦略をたて、それに基づき国ごとの活動計画に落とし込んでいます。世界各国代表者の議論は必ず数年後の世界の動きを反映したものとなります。BOPビジネスにつながる貧困問題も数年前から世界共通の重要テーマでした。こうした状況分析と計画策定がNGOの一番重要な役割の一つといっても言いぐらいです。

長坂:国際NGOはもちろん、多くの国内での活動を中心とするNGOも毎年の行動計画だけでなく、3年ぐらいの中期で世界の状況分析を行っています。だからこそ、NGOは企業にとって不可欠な情報源ということですね。