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エネルギーの未来
低炭素社会は実現できる
――スマートグリッドなど最新の動きから――
早稲田大学大学院環境・エネルギー研究所
米国電気電子技術者学会(IEEE)フェロー 横山 隆一教授


「電力と石油」がけん引した20世紀の産業社会。だが、世界的な気候変動の進行で、思い切ったエネルギーのパラダイムシフトが求められている。 再生可能エネルギーやスマートグリッドに代表される環境・エネルギーシステム研究の第一人者である早稲田大学理工学術院の横山隆一教授に、エネルギーの未来についてうかった。

早稲田大学大学院 横山 隆一教授

Q:ご専門である「環境・エネルギーシステム」とはどのような研究分野でしょうか。
私の研究室は、環境とエネルギーという2つ側面から、電力システムやエネルギー市場の計画、運用、管理、分析を進める研究と教育を行っています。今後予想されるエネルギー需給のひっ迫、エネルギー価格の高騰、温暖化対策の緊急性を受けて、未来エネルギー技術、特に太陽光発電、風力発電、バイオマスといった再生可能エネルギーの利用法と、それを有効活用するための地域エネルギー供給システム、さらに旧来のエネルギー供給システムの構造改善によるエネルギーの高効率運用などを専門としています。

この分野では、競争力のある先端技術がわが国には数多く存在します。このような技術と関わりの深い、電力会社、ガス会社、自動車会社、重電メーカー、コンピュータハード・ソフト会社、プラント会社などと産学提携し、低炭素社会の実現に向けた取り組みを進めているところです。

Q:いま話題のスマートグリッドについても研究を進めているようですね。スマートグリッドとはなにか、われわれの生活とそれがどのように関わってくるのか、教えていただけますか。
スマートグリッドは、就任まもないオバマ大統領が、グリーンニューディール政策の中で、〈産業創生、雇用創出、環境保全〉を達成する切り札として打ち出した次世代電力網のことです。情報技術(IT)や先端エネルギー技術を活用して、電力供給の信頼性と効率性を高めるのが目的といわれています。スマートには“賢い”という意味があり、電気事業者と電力需要家(消費者)の双方にとって“賢い電力網”といえます。

実は、アメリカといえば世界一進んだ社会基盤をもった国とのイメージがありますが、広大な国土をカバーする電力網は、1990年代初頭から始まった競争市場原理の導入で電力網への投資が滞ったことと、建設を電力会社の「自主性」に任せてきたこともあり、かなり時代遅れのものとなっています。 2003年に起きたニューヨークの大停電は、そうした弱点が現れた一例ですが、それ以降、電力の送配電網の維持・向上に向けた取り組みを「法的拘束力」のあるものにしようという動きが急速に高まってきました。

アメリカは、京都議定書からいち早く抜けるなど温暖化対策でも遅れを取ってきましたが、「2050年までに二酸化炭素排出量を80%削減する」というオバマ大統領の公約もあり、そのかなりの部分をスマートグリッドとその関連投資によって実現しょうという目論見もあるようです。グリーンニューディール政策の目玉ということもあって、かなり膨大な資金を投入しようとしています。