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夏休み特集
打ち水大作戦2010 ECOスタディツアー「親子でたどる水の旅」
打ち水大作戦本部作戦本部長
NPO法人日本水フォーラム事務局長 竹村公太郎




打ち水大作戦本部作戦本部長(NPO法人日本水フォーラム事務局長)竹村公太郎

この夏、打ち水大作戦本部とNPO法人日本水フォーラムのユース・ジュニアサポーターである東京みずユースが共催してECOスタディツアー「親子でたどる水の旅」を企画。8月16日の奥多摩小河内ダム見学を皮切りに、17日の多摩川水辺の探検(世田谷区砧本町)、18日の水と農作物の関係を学ぶための農業体験 (千葉県流山市)、19日の落合水再生センター(新宿区)における下水の再生工程の見学などをとおして、水の大切さを学びました。最終日の8月20日には打ち水大作戦本部作戦本部長の竹村公太郎氏が「水は命」と題する講演を行いました。


モナリザの不思議


左の絵はだれだか知っていますか。有名な「モナリザ」ですね。いまから500年ほど前にレオナルド・ダ・ヴィンチという天才画家が描きました。この絵はとっても不思議な絵なのです。

右の絵は「白テンを抱く貴婦人」という絵です。ダ・ヴィンチが描いたものですが、全然違うと思いませんか。どこが違いますか。
(「モナリザの後ろには川があります」と子どもさんの声)
私が言いたかったことを言われてしまいましたね(笑)。

モナリザについては何百年も議論が続けられています。たとえば、モナリザはお化粧をしていません。ネックレスもつけていません。指輪もしていません。髪型もシャワーを浴びた直後のようです。

500年前に女性を絵に描くとなると、モデルとなった女性がどういう階層の人か、分かるように描くのが普通でした。
「白テンを抱く貴婦人」は、きれいなドレスを着て、髪をゆい、ヘアバンドをつけ、ネックレスをしています。白テンというペット自体とても高価なものです。これを抱いているだけでお金持ちだということが分かります。

「モナリザ」の方は、髪はぼさぼさでお化粧もしていません。ドレスは真っ黒で葬式で着る喪服みたいでしょう。さらに不思議なことに、レオナルド・ダ・ヴィンチは死ぬまでモナリザの絵を手離しませんでした。普通、絵描きさんは絵を描き終わったら、それを売って生活します。ところが、モナリザだけは最後まで売らなかったのです。


“永遠の美”を守る水の循環

モナリザにはたくさんの秘密がありますが、背景に描かれた川も不思議の1つです。この絵には2本の川が流れています。この川がどこかでつながっているとしたら、どちらが上流でどちらが下流でしょうか。この論戦に私も参加しました。でも、いまだに決着がついていません。

モナリザは“永遠の美”と呼ばれています。500年前の絵なのに時代を感じさせません。「白テンを抱いた貴婦人」を去年描いたという人がいたとしたら、ファッションが違うという人がいるかもしれません。ところが、モナリザを見ていると、もしかしたら去年描かれたと考えてもおかしくないのです。モナリザは時間を消し去っている絵なのです。

この絵は、何百年経っても古びることはないでしょう。時間の手がかりとなるすべてのものを消し去ったからです。時空を超えて永遠になったのです。

さて、今日は水の話です。この絵の中の川をよくよく見ると、モナリザの心臓を貫いてつながっているように見えませんか。

モナリザの心臓を通って川の水は永遠の循環を行っているのです。そう解釈もできるのです。

地球の水は循環しています。空から降った雨は、大地をうるおし、川を流れていつか海にたどりつきます。やがて海が暖められて水蒸気となり雲になり、再び雨となって地上に落ちてきます。

いまから10年前、日本経済新聞の主催で「モナリザ100の微笑展」が開かれました。世界の画家たちがルーブル美術館に出かけてモナリザを模写するわけです。専門の画家の模写にもかかわらず、2本の川は1/3が時計まわり、1/3が反時計まわり、そして残りの1/3が分からずじまいというものでした。

絵描きさんが模写しても同じ絵にはなりませんでした。それを見た私はある答えにたどりつきました。「2つの川ともモナリザに流れ込んでいるのではないか」と。モナリザは“永遠の美”と言われますが、水を自分の体の中に取り込んでしまう、という大胆な永遠の命のトリックをレオナルド・ダ・ヴィンチは仕組んだのではないか。モナリザが“永遠の美”を維持しているのは、2つの川の水を自分の心臓に取り込んでいるからではないか、というのが私の推測です。