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Home > 識者に聞く > NPO法人日本水フォーラム事務局長 竹村公太郎

日本には問題を解決する知恵がある

日本も水で苦しんできました。なぜでしょうか。 日本の川は急峻なため、大地に降った雨が、山から海に一気に流れ込みます。ほとんどの川の水は2・3日で海に出ます。日本の水は短距離ランナーで、なかなか利用が難しいのです。江戸時代は1週間も日照りが続くと水のケンカがはじまりました。
武田信玄がつくったとされる
「三分一湧水」


出典:農業土木遺産を訪ねて (土地改良建設協会)


いま、水にからむケンカが世界のあちこちで起きています。ところが日本は水にからむケンカは止めよう、ケンカはしちゃいけない、ケンカをしないで水は平等に分け合おうということを初めてやった民族です。この写真は戦国時代の武将武田信玄がつくった「三分一湧水」です。下流の3つの村に農業用水を均等に三等分するために考えられました。水が少ないときは少ないときでみんなで苦しもうという哲学が込められています。



これは栃木県の平成13年の同じ日の写真です。ここに中川と宮川という2つの川があります。宮川にはダムがありました。中川にはダムはありませんでした。平成13年に日照りが続いたとき、中川は賽の河原のようでした。ところがダムのあった宮川の方はとうとうと水が流れていました。皆さんは16日に小河内ダムを見学に行きましたが、あのダムがなかったら雨水は翌々日くらいには東京湾に流れ出ているかもしれません。ダムがあるから356日、水を安心して使えるようになっているわけです。

日本人は水のいろいろな問題を乗り越えてきました。この写真は筑後川で女性たちが水を汲んでいる昭和30年代の写真です。このころ、女性たちはみんな水辺で働いていたのですね。このような姿が全国各地で見られました。 水道ができると水道の近くで同じように女性たちが洗濯をする姿が全国で見られました。

各家に水がくるようになると今度は水が足りなくなりました。みんなが水を使い始めたからです。そこで小河内ダムや矢木沢ダムなどをつくりました。ダムが水を一杯溜め込んで、次第に断水もなくなりました。

いまお母さんたちは川で洗濯をやりません。家でロボットがやっています。自動洗濯機というのはロボットですよ。

もうひとつ、水が汚くてとっても困った時期がありました。昭和40年代の隅田川や多摩川も汚れたごみの川でした。こんなところで子どもたちが遊んでいたのです。学校の先生方が、「ここで泳ぐべからず」と書いた看板を掲げていました。子供たちも川で泳がなくなりました。
ところが17日に多摩川で見たように、最近の多摩川は見違えるようにきれいになっています。二子多摩川あたりで泳いでいる子もいます。下水道の施設で川をきれいにしたおかげですね。

昔、熊本県の水俣というところで重金属による公害が問題になりました。工場から危険な廃水を出して地域の人たちの健康をそこなうようになりました。そういう反省から水をきれいにしようという取り組みが始まったからです。


コンクリートで固められた精進川 施工前
(1992年9月撮影)


施工から4年経過した精進川
(1996年6月1日撮影)


川とのふれあい〜稚魚の放流〜(1998年5月23日撮影)

これは1つの例です。北海道の精進川という川です。コンクリートの川を壊して自然に近い川を再生させました。いまは自然豊かな川に戻りました。子供たちが自然を勉強する場になっています。日本はさまざまな苦労を乗り越えて、川の水をきれいにし、安心な水道を実現しました。

JWFファンドによって 支援されたプロジェクト

JWFファンド2008パキスタン


JWFファンド2009インド


JWFファンド2009ウガンダ

日本水フォーラムは、日本での経験を生かして、世界で役立ちたいと考えてきました。企業や個人の会員から集めた会費を、JWFファンドという形で途上国の水道や衛生の改善に役立てています。これまでにアジアではフィリピン、パキスタン、インド、バングラディシュ、アフリカではナイジェリア、ガーナー、ケニア、ウガンダなどで簡易水道の設置、井戸の掘削、雨水貯蓄タンクやトイレの建設などを行ってきました。

ダルビッシュ投手の基金でつくられた
第3号プロジェクト:井戸プロジェクト(カンボジア)



みなさんは日本ハムファイターズのダルビッシュ投手をご存知でしょう。ダルビッシュ投手は1勝すると私たちの団体に10万円を寄付してくれます。日本での10万円は途上国では10倍あるいは100倍もの価値があります。ダルビッシュ投手の援助により、ネパールの学校の水道やカンボジアの井戸プロジェクトが進められています。

水で困っている世界の人々に、水で貢献していく――私たち日本水フォーラムの活動にこれからもご声援ください。

※ダルビッシュ有水基金とJWFファンドの写真は日本水フォーラムからの提供です。

(2010年8月取材)

○日本水フォーラム(Japan Water Forum, JWF)
http://www.waterforum.jp/jpn/

日本水フォーラム(Japan Water Forum, JWF)は、第3回世界水フォーラム事務局の後継組織として、2004年4月から活動しているNPO法人(特定非営利活動法人)です。すべての人が水に起因する苦しみから解放され、水の恩恵を最大限に享受できる世界の実現を目指しています。

竹村事務局長から「親子でたどる水の旅」皆勤賞で
修了証を受ける板垣優輝くん(8歳)

○真夏の気温を2℃下げよう。東京・六本木で打ち水大作戦
http://uchimizu.jp/2010/

連日の猛暑が続く東京。冷房熱がさらに気温の上昇を誘うヒートアイランド現象を和らげようと、今年も打ち水大作戦が行われました。8月20日(金)午後3時半。六本木ヒルズには浴衣姿の若者たちなど200名が参加、六本木ヒルズの敷地内の地下水をたらい桶にくんで一斉にまきました。10分ほどの打ち水で瞬く間に0.7℃も下げることができました。