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識者に聞く
21世紀は「つながり」を回復する時代
「企業が直接に個人と結びつくことが、これからのCSR」
横浜開港百五十周年記念テーマイベント「開国博Y150」
総合プロデューサー 小川 巧記 氏



Q:2005年の「愛・地球博」(愛知万博)から市民参加型の大型イベントに取り組まれていますが、市民プロジェクトにはどのような意義があるのでしょうか?
小川 「愛・地球博」では市民が自発的に創り出した、235も の“市民創発”プロジェクトを試みました。実に多様なテーマで、戦争というグローバルなテーマから主婦の方々による生活に密着したものまで、さまざまなプ ロジェクトが実施されました。その時に気づいたことが、すべてのプロジェクトを通じて共通のメッセージがある、それが「つながりを回復しよう」ということ です。

環境問題もいわば人と地球や自然とのつながりが壊れたもの、21世紀のテーマとして、人と人とがもう一度つながりを回復しなければならない。それは、企業でも行政でもなく市民だからこそできるのではないか、そういった視点を「愛・地球博」での市民プロジェクトを通じて学びました。


Q:過去の万博には企業のイベントブースを主体としていたイメージがあります。
小川 もちろん今回の「開国博 Y150」(注1)にも企業パビリオン---横浜に本社を移していただいた日産自動車をはじめとして---がありますが、なぜ市民プロジェクトを重視するかというと、万博のような大きな公共事業の役割は“時代のエンジンを見せるショールーム”であることだと思うからです。

万国博覧会(万博)は1851年の第1回ロンドンから始まりました。その時代は国家、国が世界を作っていたため、19世紀の万国博覧会とは国の威信を示すものでした。その後、時代のエンジンは国家から企業へ、まさに大量生産/大量消費の時代へと突入しました。企業パピリオンが大盛況となった1970年の大阪博覧会に代表される、企業の力、資本力を強調したのが20世紀の博覧会です。

21世 紀最初の万博である「愛・地球博」にかかわり、時代のエンジンが何かを考えたときに、それは市民だと仮定しました。社会的風潮として万博に対する否定的な 意見もある現在、新しい時代のエンジンとして市民の力を活かすイベントであれば意味があるのではないか。そのような仮定のもとに企業参加型イベントをス タートし、実際のプロジェクトを経験して「市民がつながりを回復する力を持っている」ことを実感したわけです。


(注1)横浜開港150周年記念イベント「開国博Y150」
●ベイサイドエリア:2009年4月28日(火)-9月27日(日) 10:00am-22:00pm
●ヒルサイドエリア:2009年7月4日(土)-9月27日(日) 9:30am-17:30pm
●マザーポートエリア:2009年の年間を通じて展開
詳細は(財)横浜開港150周年協会まで。
Tel. 045-414-0103 Fax. 045-414-0104
http://www.yokohama150.org


“市民”の“市民”による“市民のための”イベント


Q:今回の「開国博Y150」でも数多くの市民プロジェクトを展開すると伺いました。
小川 1年半をかけてワークショップ(注2)を行い、横浜という都市・福祉・環境など公共の空間やテーマに何ができるかを考え、市民同士がつながりを持ちながら立ち上げたプロジェクト数は現在まで189プロジェクトに達しました。

横浜のおもしろさは---従来の市民プロジェクトへの参加者はシニアの方が多かったのですが---「開国博 Y150」では30-40代といった世代がとても多い。横浜という街の特色が出ていると同時に、時代性も大きいと思います。グローバリゼーションによる世界的不況の影響がある現在、公共的な問題に対する現役世代の意識がとても強まっていると感じます。

過去の時代に万博は薔薇色の未来を見せるものでした。しかし今は“横を見る”“同時代の人を見る、意識する”ことが大切なのだと思います。

(注2) <市民創発プロジェクトメンバー>随時募集!
http://www.yokohama150.jp/
http://hill.yokohama150.jp/