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CSRフラッシュ
異色の公務員・ 木村俊昭さんが語る あなたの地域の活性化策
「できない」を「できる!」に変える !

東京・新宿で有志による地域活性化の集いが開かれた。 集まったのはサラリーマン、自営業、公務員など100人。平日夜にもかかわらず、新潟・長野・秋田・群馬など遠方からの参加者も多い。この日の講師は木村俊昭さん。農林水産省の大臣官房政策課企画官として地域の担い手育成、地域ビジネス創出などを担う、人呼んでスーパー公務員。地域再生のヒントを聞いた。



異色の公務員 木村俊昭さん


B級グルメで全国2位に。岡山県真庭市


おはようございます。
実は今日は夏期休暇をとっていたのですが、朝から自宅の電話が鳴りっぱなしでした。私のメーリングリスト(全国で2000近いメーリングリスト!)にも入っている岡山県真庭市の「ひるぜん焼きそば好いとん会」が、神奈川県厚木市で行われたB級グルメを決める全国イベントで第2位に入ったというのです。
受賞したメニューは「ひるぜん焼きそば」。味噌をベースとした秘伝の甘辛ダレでつくった焼きそばです。これで地域がさらに勢いづくと思います。

ところであそこには露天風呂の番付で西の横綱とも呼ばれる湯原温泉があります。
あそこの温泉はアトピーの子供たちが入るとすっとアトピーが引くので有名です。
背中なんかが痒いという子供たちもよくなっています。実はあそこのお湯は火傷にも効きます。ある旅館の女将さんが火傷をしましたが、2カ月から3カ月ほどでキズ口がきれいになりました。これを何かに使えないかということで、いろいろ考えた結果、化粧品を出すことになりました。


夕日で町おこし。宮崎県五ヶ瀬町


宮崎県に五ヶ瀬町という町があります。
高千穂峡や天の岩戸で知られる高千穂町の隣町です。
この町は宮崎県にありますが、宮崎空港に降りると3時間半、熊本空港に降りると1時間かかります。初めてこの町を訪ねることが決まったとき、熊本空港に降りて欲しいといわれました。宮崎県と熊本県の県境にある町なのです。

この町は夕日がきれいなことで知られています。
町に住んでいる人なら誰もが知っていました。阿蘇山に沈む夕日が素晴らしいのです。ただ、地元の人はそれを当たり前のことだと思い、それほど意識していませんでした。

あるとき、この町で開発が始まろうとしました。
五ヶ瀬町にも開発が必要だという人たちが出てきたのです。ところが「ちょっと待てよ」という人たちがいました。その人たちが「夕日の里づくり推進会議」というのを立ち上げて、箱物をつくる開発でよいのか、という問題提起をしました。

後藤さんという花栽培をしている農家の方が中心となって、「開発すべきは私たちの心ではないか、心の開発を優先すべきだ」と語り、自分たちのできることから始めようということになりました。

農家のみんなで民宿をやることになりました。
民宿には、現在9軒の農家が参加しています。小学校、中学校、高校、そして海外の子供たちも来るようになりました。この地に来た人たちは、夕日を見るだけで感動します。評判が評判を呼ぶようになりました。
これまでに海外からの小学生と中学生だけで1,500人も来ています。

一番の悩みは1泊2食で5,500円をもらうには、何を食べてもらうかでした。
後藤さんは「つけもの、みそ汁、混ぜご飯でいいじゃないか」といいました。
それで始めてみると子供たちだけでなく、一緒に付いてきたお父さんやお母さんも感動しました。「素朴な料理もおいしい」と感動してくれたのです。
五ヶ瀬町のみなさんは気づきました。自分たちのありのままを見てもらえばよいと…。


書店のない島で。沖縄県伊江島


沖縄本島の真ん中の上あたりに伊江島という島があります。この村には小学校と中学校しかありません。高校は沖縄の本島に行くしかないという島です。

この小学校の1年間の図書購入費が15万円、中学校の1年間の図書購入費も15万円です。実はこの島には書店が1店舗もありません。
子供たちは中学校の修学旅行で初めて書店を見るのです。
「みなさん、きょうは待ちに待った書店の見学です」と先生がいうと子供たちは大喜びです。図書購入費が15万円ですから、日ごろは読みたい本もほとんど読めません。

あるとき、「これで本当にいいのだろうか」という話になり、みんなで考えました。
これまでは小学校と中学校はばらばらに動いていました。
親たちも一体感をもたないとだめなのではという話になりました。
小学校と中学校しかないのなら、子供たちが小学生と中学生のうちに島の地域づくりに関わってもらおうということになりました。

漁協や沖縄生協、地元の水産加工会社の協力を得て、漁協がとったイカで「イカ墨じゅーしぃ(沖縄の伝統的な炊き込みご飯)」という商品を開発して、販売することにしました。

沖縄には県立芸術大学があります。
沖縄に大学連携という集まりがあるのですが、これまでは県立芸大にお声が掛かりませんでした。芸術大学は特別だと思われていたのです。
県立芸大を呼ぶかどうか相談され、「もちろん呼んでください」と私はいいました。
こうして集まった会合で県立芸大の学長さんは、「みなさんと同じテーブルに付かせていただいたのは初めてです」と挨拶をしました。

その後、伊江島の中学生と県立芸大の学生が協力して「イカ墨じゅーしぃ」のパッケージデザインを考えました。「イカ墨じゅーしぃ」は18カ月で17万パックを売上げました。売上金は5,100万円です。

この2〜5%を図書購入費に充てるということになっていました。
小学生と中学生の間に地域づくりに関わってもらおうと始めた取り組みですが、気づきがいかに大切か分かります。