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CSRフラッシュ
異色の公務員・ 木村俊昭さんが語る あなたの地域の活性化策
「できない」を「できる!」に変える !

木村俊昭さん

“楽しい”が人生を変えた。北海道小樽市


私が小樽市の職員だったときの経験です。帽子職人で山田さんという方がいました。俳優の石原裕次郎さんの帽子をつくったことのある職人さんです。思い出のコートやオーバーをもっていけば、世界に1つしかない帽子を手づくりしてくれました。

山田さんは「小樽職人の会」のメンバーですが、私がお目にかかったときは80歳を過ぎていて、床に臥せりがちでした。
あるとき、「テレビ局が小樽の職人さんを取材したいといっているのですが、山田さんにお願いできませんか」と依頼したところ、山田さんからは、「他の方にお願いしてください」ということでした。「実はもうそこまでテレビ局が来ているのです」と、そのときは無理やり受けていただきました。

収録が終わり、お孫さんや子供さんの住所をお聞きして、「○日の○時に放送される」という連絡をしました。
いざ、番組が放送されると全国から問い合わせや注文が来ました。そして、お孫さんからも「おじいちゃん、テレビを見たよ、かっこいい」と電話がかかってきました。
次の日から山田さんは毎日立って仕事をするようになりました。

その後、山田さんは、小樽市から電車で2時間近くもかかる旭川市に15人の弟子を育てるために通いました。それはお亡くなりになるまで続きました。
身内に褒められる仕組みづくりというのがいかに大切か、これでよく分かりました。


地域おこしの基本


私は1カ月に10カ所くらい全国各地を回っています。これまでの経験では、町(地域)の活性化には、町全体の最適化が不可欠だと思っています。

木村さんが関わった「地域活性化」事例の一部 (2009年9月現在)

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最適化には、①所得向上 ②人財育成・定着 ③地域評価の仕組み ④女性・若者等の活躍の場づくり ⑤新しい産業おこしの実現などが必要です。

まず、所得ですが、所得をいかに確保するかは極めて重要です。
私の出身地の北海道ですと、全国の47都道府県のうち大体37位。道民一人当たりの平均所得は240万8,000円です。私がいた小樽市は238万円。
この金額を見ると、家計の柱になる稼ぎ手のほかに、家族の中のだれかが1カ月に10万円くらいのパートタイマーをしないとこの金額になりません。


豆腐、こんにゃく、納豆で地域を元気に。


青森県の挑戦 所得を上げるには、地域の企業をしっかり支える仕組みが必要です。
青森県に農作物加工の協同組合があります。平成21年の5月に立ち上げました。 異業種で豆腐、こんにゃく、納豆づくりを7社で始めました。中小企業団体中央会に協力してもらいました。7社はいずれも年商が1千万いくかいかないかの企業ばかりです。一番の問題はつくったけど売場がないということでした。

青森県もスーパーのチラシを見て、こちらが2円安い、5円安い、といって動く消費者が8割を占めています。
しかし、よくよく調べると2割の県民は高くても地元の素材を使った信頼のできるものを買うということが分かりました。豆腐1丁200円でも買う層がいたのです。

実はスーパーではどういうわけか豆腐やこんにゃくや納豆は別々の場所に置かれています。担当者が違うのです。
女性のみなさんは分かると思いますが、おでんをつくるときの買い物がすごく不便なのです。大手に太刀打ちするにはここから直さないといけません。

1つの売場を確保するとともに、2割のお客様に来ていただくにはどうしたらよいかと知恵をしぼりました。
平成21年11月には「青森正直村」という統一ブランドを立ち上げ、売場探しをスタートしました。11の店舗がどうぞうちの売場をお使いくださいといってくれました。
売場の使用量はゼロでいいというのです。8割のお客様を囲っていたスーパーは、残りの2割のお客様が欲しかったのです。ただし、売上の3割はいただきますということでした。農協でも3割5分くらいですから高いことはありません。

「青森正直村」は年内に20店舗を目指しています。目標は青森県内で50店舗です。今は7社から11社に増え、さらに20社に増えています。協同組合に入らせてくれという企業が目白押しです。商品もいろいろな種類ができて人気を呼んでいます。
安心・安全な地元の統一ブランドという信頼も生まれています。