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Home > 国内企業最前線 > 株式会社リコー CSR室 吾妻まり子室長・CSR室 戦略グループ 北條総子さん

草の根支援に向けて、小額でも “出来るだけ多くの団体へ”を実践

Q:社会貢献クラブ・・FreeWillは、具体的にどのような仕組みで運営されているのですか。
吾妻: 会員となった社員は、給与の100円未満の端数、賞与の1,000円未満の端数を献金し、さまざまな社会貢献活動に役立てる仕組みです。社員の献金によって集まった資金と併せて会社も資金を拠出する“マッチングギフト”という仕組みが組みこまれています。

現在は株式会社リコーのほか、グループ会社2社(リコーテクノシステムズ、リコーロジスティクス)計3社の社員が参加し、その数は現在7,000名を超えて、献金額は一人当たり平均約1,600円程度となっています。

寄付先は、社員から広く募集し、会員の代表20名からなる運営委員会の選考を経て決定されます。選定に当たっては、透明性を高めるため運営委員や事務局の社員が手分けをして寄付候補先を訪問し、活動の実態をつかむようにしています。


Q:著名で大規模なNPO団体に寄付するほうが、企業にとって、審査はもちろんその後のやりとりも簡便という考え方もあると思いますが、 “草の根”活動への支援にこだわるからこそ、FreeWillは個別訪問などに時間をかけているわけですね?
北條: FreeWillはこれまでの11年間で約280団体に支援を行ってきました。
当初からFreeWillの特色は“小さな規模で数多くの機関を支援すること”、寄付先も小さなNPOなどが中心ですし、原則として一度寄付した団体には5年間は寄付しません。常に新たな支援団体を見つけて、少しでも多くの団体を支援したいと思っているからです。

各団体への寄付金額も1団体20万円から30万円程度の“小口支援”が主体で、支援内容も折りたたみ椅子などの事務所の備品から始まって活動報告チラシの印刷物作成費などが圧倒的に多いです。

例:FreeWillの支援先(2010年6月訪問先)
「聴覚障害者共同作業所 ろうあ工房つつじ」
久留米市で聴覚障がいを持つ高齢者の方々のための共同作業所
「ペイ・フォワード倶楽部」 
紛争で傷ついた子ども達を支援している「ドイツ国際平和村」の支援を目的に設立されたNPO法人)
「まちづくりの団体エーキューブ」
仙台市で「人と動物の絆」を大切に、市民の方々を対象に動物介在活動や、動物療法、動物防災対策セミナーなどを行っているNPO法人
「21世紀のカンボジアを支援する会」
カンボジアの子ども達のための里親基金、児童擁護施設の運営、学校の校舎や、井戸、遊具の建設などを行っているNPO法人
「神奈川県里親会」
いろいろな理由で家族を離れなければならなくなった子どもたちを受け入れる里親を応援している任意団体
「レインボー国際協会」
インドのコルカタにある児童養護施設「レインボーホーム」への支援を通じて、そこで暮らしている子どもたちの生活および教育支援をしているNPO法人


設立当初から候補先の多くは、社員やそのご家族が活動されている団体など、(単に有名で名前しか知らない団体ではなく)社員自身が身近な実体験から評価して推薦する団体です。

一方で、事務局としては社員からの拠出金だけに、きちんとした本当に意義ある活動を支援する義務があります。その団体の活動内容や社会的な意義、支援金の活用目的を十分に調査し、会員の代表である運営委員会がその調査結果に基づいて審査を行って支援先を決定しています。
手間がかかるかもしれませんが、こうした工程を経ることで、本当に“これまであまり支援の対象になってこなかったが、社会的に意義ある活動”に光を当てたいと考えてきました。


社会貢献クラブFreeWillサイトには支援先情報の頁が設けられている。
随時更新される「訪問レポート」を誰でも閲覧できる。
http://www.ricoh.co.jp/kouken/freewill/


エポックメーキングとなったカンボジアでの校舎寄贈

Q:その一方で、設立8周年を迎えた2007年からは、より深く継続的に支援するテーマを掘り下げる新しい試みも始まったようですね。
吾妻: 当初は会員数も少なかったため、FreeWillを通じて集まった支援の原資もわずかなものでした。ところが8年目を過ぎたあたりから会員数も増え、それなりの資金が集まるようになりました。それまで続けてきた支援活動を一歩推し進め、このあたりでより深く継続的なテーマを掘り下げようということで“FreeWillプロモーション”という新しい試みを始めました。

北條: “FreeWillプロモーション”の特徴は、会員の投票で決まる点です。2007年には「もっとも支援したい活動」について会員にネット投票をお願いしたところ、JHP学校をつくる会が提案した「カンボジアに校舎とトイレを寄贈する」プランに支援が決まりました。

会員有志が現地カンボジアで行われた校舎の寄贈式にも参加し、現地の生徒たちとも交流をしました。支援金額は500万円ですが、素晴らしい学校が誕生し、会員のだれもが感動したというのが正直な実感です。

2007年12月、カンボジアの首都プノンペンから車で約1時間半のカンダール県に建設されたルッセイスロックFreeWill学校の贈呈式典
(写真上/右)

2009年のFreeWill設立10周年には、アルピニストの野口健さんが理事長を務めるセブンサミッツ持続社会機構の「マナスル基金」に寄贈し、ヒマラヤの学校に寮とトイレを贈りました。

アルピニスト・野口 健氏が理事長を務めるNPO法人セブンサミッツ持続社会機構の「マナスル基金」では、ネパール・サマガオン地域の子どもたちに教育支援を行っている
(写真左)