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Home > 識者に聞く > リシュモンジャパン株式会社 金井塚 こずえ

山元:内部監査は行われていますか?
金井塚:現時点で日本においてオーディターの役割を担うようなポジションは、CSRを 考えた場合にはありません。ただきちんととそういう明確なロールをする者がいないというだけであって、本社からある分野について調べなさいという指示が入 れば、当然そのポジジョンに一番近い者が指揮を執って調査をするということは行われます。実際昨年は、社会的責任のガイドラインに従業員に関する内容で、 「健康と安全」という項目があるのですが、そちらについての調査をしなさいという指示のもと、実際に動いたことがありました。特に前期中は一部の部署がオ フィスを移動するという大きなプロジェクトがありまして、そちらのオフィスのファシリティを構築する際にも、従業員の働く環境につき、きちんと安全かつ健 康面を配慮した形で作られるようにと、CSRが正しく意識されていました。

山元:各ローカルでのガイドラインというのはありますか?
金井塚:本社のものをそのまま使用しています。
常にガイドライン、規準というものを念頭に置いて業務に携わるかといったらなかなかそれは難しいので、ガイドラインの役割とは、CSRに 限った話ではなく、先ほど申し上げた人事関係の就業規則であったり、たとえば会計基準であったり、何かの事象を調べる場合や、問題を防ぐ場合などに改めて 立ち返る位置付けであることが一般ではないかと思います。こういうルールがあるのだから、という押しつけのための存在ではなくて、何かあったときの保険で はないですけれども、その存在だけは知っておいてくださいね、というリマインドをどのようにするかが重要だと思います。CSRで言うと、毎月CSRニュースレターというものを作っているんですが、構成の一部として、ガイドラインの内容を抜粋して紹介しています。

山元:CSRニュースレターについて教えてください。
金井塚:そんなにボリュームが多いものではないのですが、掲載情報については、私から働きかけて得るようにしています。そういった働きかけによって、スタッフの方 もニュースレターの存在を認識してくれていますし、担当者がブランドアクティビティを紹介することを拒むこともないんです。もっともインターナルだからと いうことが前提としてあるのかもしれませんが。各ブランドのCEOに私は最終承諾をもらうんですが、是非紹介してくれと非常に好意的な回答をしてもらえるケースが大体ですね。

山元:CSR活動についての国による違いというのはありますか?
金井塚:日常的に感じるものではなくて、改めて考えた場合ですが、ヨーロッパといってもそれぞれの国で文化が異なるので、弊社、リシュモンとしての本社はジュネー ブにありますが、個々のブランドはフランス、ドイツ、イタリア、あとはグループで言えば、イギリスにもあり、それぞれのお国事情ではないですが、異なると は思います。ただ、全般的にEUという括りで考えた場合に、コミットメントに対する実行力というのが、日本よりも意識付けが強いように感じます。

山元:ラグジュアリー企業としてCSRにおける他業種との違いやこだわりというのはありますか?
金井塚:こだわるということではなく、自然とスペシャライズされていると感じるのは、扱っている商品の特性および歴史的背景というところで、文化や芸術面でのサ ポートが非常に多いです。ですので、何かの折に触れては若手アーティストの作品を展示する場を提供するためにブティックを開放してあげたりだとか、あとは 毎年アワードを設けていて、その年に文化芸術面で活躍した方を表彰するといったことを行っているブランドもあります。一番特筆すべきは、その文化芸術面だ と思います。きっかけというか、何らかの形でお役に立てればいいな、ということだと思います。

山元:そこで声を上げるのがカルティエなどのブランドですと、より効果的ではないでしょうか。
金井塚:そう思っていただければありがたいんですけれどね。

山元:不況の昨今における御社のCSRポリシーはなんですか?
金井塚:当然ビジネスにもこの景気の悪さが影響しないはずはなくて、事実、数字にも表れてしまっています。だからといってCSR活動はしなくていいかというとそれはまったく別。もともと利益といった話とは違う別の次元であると思いますし、サポートを必要としている人たちは景気の良し悪しに関係なく存在しているはずです。CSRの 重要性は何ら変わらないと、本社がはっきり言っている以上、それは日本においても同じ理解であります。、活動についてはできる範囲内で、若しくはバジェッ トの制限というのも当然でてきてしまいますけれども、お金をかければいいという訳ではないので、だからこそ社員の参加をより促す方法での模索は当然してい くべきだと考えています。