« CSRマガジントップへ
Home > 識者に聞く > Tuvalu Overview代表 遠藤 秀一
〈ツバル特別寄稿〉
温暖化で海に沈む島
特定非営利活動法人 Tuvalu Overview 代表:遠藤 秀一


南太平洋にある島国「ツバル」。このまま地球温暖化が進み海面が上昇し続けると、島々は確実に海に没し、そこに住む人たちは地球初の環境難民になるといわれている。 9月15日から23日の9日間、特定非営利活動法人Tuvalu Overviewが主催するエコツアーが現地を訪れた。Tuvalu Overviewの代表でもある遠藤秀一さんに本誌の特派員になっていただき、ツバル現地からのレポートをお願いした。


「わぁーきれい」
 フィジーのナウソリ空港を2時間前に離陸した42人乗りのプロペラ機ATR42の機内がにわかに活気づく。小さな窓の先に目的地のフナフチ環礁が見えてきたのだ。乗客の1/3をしめるツバル・エコツアーの日本人参加者たちは、飛行機の小窓にカメラを押しつけ、眼下に見えるフナフチ環礁の美しい島並みの撮影に夢中になりながら、口々につぶやく。「本当にきれいな島だ……」

日本から48時間の長旅

 今回で11回目を迎えるツバル・エコツアー。参加者たちは2009年9月15日にソウル・インチョン空港を経由し、フィジーで一泊の後、9月17日の昼過ぎ、無事にツバルの首都フナフチ環礁のフォンガファレ島に到着した。オーストラリアから参加した2名を含め、20代から70代までの老若男女13名が参加した。このツアーは特定非営利活動法人Tuvalu Overviewが個人旅行で訪れた参加者を、現地でのプログラムのアレンジを行って受け入れする形で非営利で行われている。毎年9月の連休時に1回、ツバルの海面上昇の被害が顕著となる1月〜3月の大潮の季節に1回、計2回の開催を目標にして企画運営してきた。
 到着初日は、日本からの48時間もかかる旅の疲れを考慮して、のんびりと島内を散策したり、酋長さんに挨拶に行ったりして、暑さに体を慣らす。ラグーンに沈む夕日のショーの後は、政府の環境問題担当官を交えての食事会が用意されていた。
 環境局を包括している天然資源環境省大臣で副首相のタバウ・テイイ氏がホテルまで出向いてくれ、丁寧にツバルの現状を聞かせてくれた。ツバル政府は、ツバルで起きている被害や、それに対策を講じるだけの資金を持ち合わせていない。だが、できる範囲でいろいろ工夫を講じている政府内の事情も伝わってくる。


マングローブ600本を植林

2日目は、ボートに乗ってフナフチ環礁を周回する旅に。2艇の小型ボートに分乗した一行は、環礁内南端のフナファーラ地区を目指す。そこにはTuvalu Overviewが2006年から行っているマングローブの植林事業サイトがある。2006年から開始された事業で、フォンガファレ島に自生するマングローブ林から種を採り、フナファーラ地区に植林を続けているのだ。海岸浸食対策としてのマングローブ植林。ボートで移動する参加者たちは、やがて見えるてくるフナファーラのラグーンの美しい色彩に圧倒されたようだ。
 産業がなく工場もない、自動車も数えるくらいしかないツバルの空は高く青く澄みわたり、珊瑚や有孔虫などの生物由来の砂でできたビーチは、どこまでも白く続いている。まさにポリネシアの楽園が目の前に広がっている。ボートから下りてその光景に包まれながら一休みをして、いよいよ植林の開始だ。